One Point Interview 2021-2018
2021.10
トラブルの法的解決は専門家に
大切なのは事前予防
司法書士は法律の専門家としての国家資格です。不動産の登記などでお世話になったオーナー様も多いはず。弁護士があまり扱わない少額の裁判などで代理人も務められるなど、その業務は広範です。賃貸オーナーのアパート経営や相続、トラブル解決などに、司法書士はどのように関与し、またどのように資格者を活用すればよいのかを伺いました。
司法書士 魚本晶子事務所
所長 魚本 晶子 氏

身近な法律のプロとして認知
―― まずは司法書士になられた経緯など、魚本さんのプロ
フィールから伺います。
魚本 大学は法学部に行きましたが、別に司法試験をめざす学生ではありませんでした。就職したのは旅行会社です。男女雇用機会均等法が施行された頃で、張り切って就職しましたが、当時はまだ、企業で女性が活躍できる範囲は限られていました。組織に属さず、自分でやっていける資格はないかというのが動機です。資格を取って司法書士事務所に勤め、その後、共同事務所を経て、いまの事務所を立ち上げ20年以上になります。
―― 司法書士は法律の専門家といいますが、弁護士との
違いはどういう点ですか。
魚本 司法書士の主な仕事は、不動産登記、商業登記、遺言、成年後見、供託といったことです。また、裁判所に提出する訴状など法的書類の作成なども行います。
以前は、書類作成までが司法書士、裁判は弁護士さんという区分けでしたが、2002年の司法制度改革で、法務省から「認定司法書士」と認められた司法書士は、簡易裁判所での代理人も行えるようになっています。
簡易裁判所が扱う範囲ですので訴額が140万円までの民事訴訟、訴え提起前の和解、支払督促、証拠保全、民事保全、民事調停、少額訴訟債権執行、裁判外の和解、仲裁、筆界特定といったことです。
弁護士さんがあまり扱わない小さな法的トラブルが多いですが、その分、身近な法律のプロとして認知されるようになってきました。「弁護士さんに頼むのはちょっと気が引けるから」と、まず司法書士に聞いてみる方も増えています。
土地取引や相続などでオーナー接点が多い
―― 本誌の読者であるアパート・マンションオーナーとの
接点はどのようなところにありますか。
魚本 不動産を所有したり、投資で売買している方であれば、登記手続などで司法書士に仕事を依頼したことがある方は多いのではないでしょうか。私の事務所のお客様でも賃貸経営をされている方は多く、そういった方の登記、遺言や相続手続きなどを数多く手掛けています。
相続案件は、多くの場合、税理士さんからのご紹介でお手伝いしますし、賃貸住宅フェアなどに相談員として参加を求められ、その関係から仕事をさせていただくこともあります。家賃滞納や入居者間トラブルなどで、代理人として裁判や和解に持ち込むなどといったこともありますし、簡易裁判所では扱えない範囲となれば、弁護士に依頼しそのお手伝いをします。
専門家選択は能力と相性で
―― 賃貸オーナーから依頼される仕事を通じて、オーナー
にアドバイスしたいことはありますか。
魚本 家賃滞納や立ち退き要求、さまざまな入居者間トラブルの解決は、当事者間だけではなかなか解決できないことが多いものです。しかし、裁判をするとお金も時間もかかります。そこで、しかるべき第三者が関与し、裁判以外での和解の道を探ることが得策となるケースもあります。
その方法として、裁判外紛争解決手続、ADR(Alternative Dispute Resolution)というものがあります。裁判所での調停のほか、司法書士会でも調停を行うことができます。入居者トラブルなどの解決は、まずこちらから考えてみるのもよいかと思います。私も、東京司法書士会調停センターの調停人の名簿に登録しています。司法書士は全国にいますから、気軽に相談してみてください。
また、これは賃貸オーナーに限りませんが、相続の対策や手続きではさまざまな分野の専門知識が必要です。司法書士はもちろん、税理士さんだけ、弁護士さんだけで解決・処理できるということはほとんどありません。最初に相談を受けた専門家、例えば税理士さんは、法律の解釈や手続き、あるいは不動産や保険など、それぞれの専門家の判断を踏まえて対策や処理を行うわけです。
司法書士や弁護士さんが相続の相談を受ければ、当然、税理士さんに調査や判断を求めます。依頼される側で考えたときに大切なのは、その専門が依頼する案件についてどれだけ専門家のネットワークを持っているかということです。
そして、ネットワークを持っているといっても、単に有資格者が揃っているというだけでは心配です。トラブル解決の多くは、そこで生じている感情的な問題を解決することが大事です。また、依頼者にとって重大な問題を任せるには、専門家の能力はもちろんですが、依頼者との相性といったものが案外重要です。
相続など複数の専門家がかかわらなければならない案件で、窓口として相談を受けた場合は、依頼者との相性も考えつつ人選すべきです。私はそのようにしています。
―― 相性を見るとなると、依頼者のことをよく理解しない
となりませんね。
魚本 その通りです。司法書士の仕事も、機械的に書類を作り手続きをすれば終わり、というものではないと思います。司法書士の場合、登記手続きの多い不動産会社などは別として、毎月の顧問契約をするということはほとんどありません。手続きをして報酬をいただいたら終わりという仕事なのですが、それでも「先代の相続対策をやってもらったので次も頼む」とご連絡をいただくお客様がいらっしゃいます。これは、仕事をお引き受けするうえで、お客様を理解しようと務めた結果だと考えています。
社会人としてのスタートは旅行会社でしたが、実は当時の私の憧れの職業は、ホテルの「コンシェルジュ」でした。旅先の知らない街での時間を、旅人が快適に過ごせるためのお手伝いをする仕事です。そして今も私は、「コンシェルジュ」をめざしています。法的お手伝いでの「コンシェルジュ」です。行き先がわからない問題の解決を求めるご相談者、お客様の悩みに耳を傾け、理解し、寄り添い、解決に向けてとことんやり抜くことを心がけたいと思っています。
司法書士 魚本晶子事務所
東京都新宿区新宿一丁目15番12号千寿ビル6F
TEL /03-5360-4077
Mail/post@uomoto.net
HP/https://uomoto.net
2021.07
トラブルの法的解決は専門家に
大切なのは事前予防
物件の入居者間や近隣とのトラブル、立退きといった問題では、裁判など法律的な解決が必要な場合が多くあります。しかし、いきなり裁判というわけにもいかず、またどの時点から弁護士に依頼すればよいかわからないというオーナーも多いのでは。賃貸住宅をめぐるトラブルの法的解決を数多く手掛ける野尻昌宏弁護士に、弁護士に依頼する際のポイントを伺いました。
松山・野尻法律事務所
弁護士 野尻 昌宏 氏

争いでは契約書の内容が問われる
―― 賃貸住宅に関わるトラブルで、裁判など法的解決が求められるものとしてはどのようなものがありますか?
野尻 集合賃貸住宅で最も多いトラブルは家賃滞納ですね。そのほかにも、他の入居者に対する騒音・悪臭等の迷惑行為や、居室の目的外使用など、さまざまなトラブルがあります。多くの場合、困った入居者に対して「立退きを求められるか」が大きな問題となります。
家賃滞納の場合、もちろん滞納家賃を支払ってもらいたいのですが、特に居住用アパートの場合、滞納家賃の金額は数十万円程度というケースが大半。裁判をしても、裁判費用の方が高くなってしまうため、滞納家賃の支払いのみを求めて裁判になるというケースは多くはありません。
むしろ、「こんな人には早く出て行って欲しい」ということで、家賃未払を理由に賃貸借契約を解除して明渡しを求めるようなケースが裁判になります。もちろん、滞納家賃の支払いも居室の明渡しとともに求めますが、もともとお金がなくて家賃を滞納するような人が相手になりますので、滞納家賃については「少しでも回収できたら良い」と考えるオーナーの方が多いですね。
オーナーとしては、裁判が長引いて明渡しが遅くなるよりも、早めに明け渡してもらって新しい賃借人に貸して収入を得た方が有益ですから、滞納家賃については、「早めに居室を明け渡すのであれば減額もしくは免除する」姿勢で話し合い、和解による早期解決の条件として使われることが多くなります。
立退きは簡単にはさせられない
―― 立退きをさせるというのも、なかなか大変なようですね。
野尻 困った入居者に居室の明渡しを求めるためには、賃貸借契約を解除しなければなりません。しかし、賃貸借契約の解除は、例えば入居者が長期間にわたり家賃を滞納していて、何度も支払いを求めても払わないなど、明らかな契約違反行為があれば問題なく認められますが、明確に契約違反かはっきりしないようなケースでは、賃貸借契約の解除がそもそも認められないという場合も考えられます。
例えば、集合住宅の1室を賃借人が仕事の事務所としても利用しているようなケースを想定しましょう。事務所として部屋を使用されると、一般的にはコピー機などの重い機械によって床が痛むのが早くなりますし、「日中、大人数の人が訪れてくることがあり、落ち着かない」などの苦情が他の入居者から出てくることもあります。
しかし、契約書に「賃借人は、居室を居住用としてのみ利用し、事務所等として使用してはならない」など、明確に事務所使用を禁止する条項がなければ、事務所としての使用が契約違反になるとは直ちにはいえなくなってしまいます。
仮に契約書に「居住用物件である」ことが記載されていたとしても、住居兼事務所として使用されていると、やはり明白な契約違反とはいえない可能性が出てきてしまうのです。
このような場合に賃貸借契約を解除して出て行ってもらうには、契約書に「事務所としての利用は禁止する」という内容が明確に記載されていることが重要になります。その上で、事務所としての使用をやめるよう文書での通知を入居者に対して複数回行い、それでも入居者が事務所使用をやめない場合に、初めて賃貸借契約を解除することができることになります。
―― トラブル対応を弁護士に依頼するタイミングや費用を教えてください。
野尻 建物賃貸借契約のような継続的契約では、単純に「契約違反がある」というだけでは契約解除は認められず、契約違反の内容や程度から、契約当事者間の「信頼関係が破壊された」と認められることが必要になります。具体的には、入居者の契約違反があったとしても、賃貸人からそれを注意して是正することを何回か行ってもなお改善されないというような事情を証拠によって残しておくことが必要になります。
そのため、例えば「騒音がひどい入居者がいるから何度も訪問して注意したが、半年経っても変わらないから弁護士に依頼して直ぐに出て行ってもらおう」と思っても、弁護士は改めて注意文書で騒音の改善を求めることから始めますので、結局、時間がかかってしまいます。
困った入居者に対して賃貸借契約の解除と最終的な退去まで見据えて考えるのであれば、早めに弁護士に相談して、準備を進めていくことをお勧めします。
費用面では、一般的には代理人として弁護士名義で文書を発送してもらう段階から、相談料を超える弁護士費用が発生することが多いです。当初の段階で弁護士費用が発生することが気になる場合は、例えば、弁護士のアドバイスにしたがって注意文書はご自身で作成して内容証明郵便で送るというような方法をとっても良いと思います。いずれにせよ、専門家への相談は早いに越したことはありません。
オーナーは「事業者」。契約は自身で確認
―― 入居者トラブル以外に、賃貸オーナーが留意すべき法律や契約の問題はどのようなことがありますか。
野尻 集合住宅のオーナーになると、入居者との賃貸借契
約以外にも、さまざまな関係者と法律関係を持つことがあります。その一つに、LPガス供給業者との間で締結する設備契約書があります。設備契約書には、ガス設備の所有権がLPガス供給業者にあることと、ガス供給契約が解除される場合にはその設備の残存価格でオーナーが買い取る旨が定められるのが一般的です。
LPガス事業者を切り替える場合、通常は、この設備買取代金相当額を新事業者が負担し、旧事業者に直接支払います。しかし、法律的には、設備買取代金の支払い義務は、設備契約書を締結しているオーナーが負っています。金額について新事業者と旧事業者との間で話し合いがまとまらず、設備代金の支払いがなされないなどの状況が続くと、オーナーが旧事業者から設備代金を請求され、場合によっては裁判まで起こされてしまうというケースもあります。
また、ガス代が安くなるという話で切替に応じたのに、新事業者がガス代の値上げを行ってしまい、結局、ガス代が以前よりも高くなってしまったというような話もあります。
賃貸アパートのオーナーは「事業者」となりますので、LPガス事業者との間の契約に、消費者契約法などの保護は及びません。「甘い話」にすぐに乗ってしまうのではなく、きちんと契約書の内容を確認することが重要です。
相手が入居者のときも、事業者の場合も、トラブルに対する最も有効な対処法は、できる限りの「予防」をすることです。先ほどお話した「契約書をきちんと確認する」ことも、重要なトラブル予防方法の一つです。さまざまなトラブルが生じた場合に適切に対応できるようにするためにも、契約書は管理会社や相手業者任せにせず、内容をオーナー自身が締結時にきちんと確認しておくことが重要です。
松山・野尻法律事務所
TEL /03-5510-7227(代)
Mail/matsuyama-nojiri@ta3.so-net.ne.jp
HP/https://matsuyama-nojiri.tokyo/
2021.04
生活スタイルにあった
無理のない節税対策を講じていく
相続税の増税により、その節税対策は一部の資産家だけではなくなっています。アパート・マンションオーナーや中小企業主などから多くの税務相談を受けている税理士・田尻重暁氏に、相続税等での節税対策の基本について伺いました。
税理士法人 田尻会計
副所長 田尻 重暁 氏

下町の中小企業主の相続・事業承継を支援
―― 田尻先生の事務所は事業承継の案件を多数扱っていると伺っています。
田尻 私の事務所は、東京スカイツリーがある墨田区にあります。父親が現役で所長を務める、今年で43年目の事務所で、私自身も事業承継の当事者でもあります。事業承継は自身の問題でもあるわけですから、「自分もできているかな」と考えながら、顧問先や銀行等からの依頼案件にお答えさせていただいています。
少し前に『下町ロケット』というドラマがありました。あれは大田区が舞台だったかと思いますが、大田区、そして墨田区は東京の中でも町工場の多い地域で、中小企業、零細企業がたくさんあるところです。
ただ事業者数でいうと1970年あたりが一番のピークだったようで、今ではその頃に比べて3分の1ほどになってしまっているということです。だんだんと承継する方がいなくなり、廃業するという会社も多くなっているからです。
墨田区では行政をあげて、地域の経済団体、商工会議所をはじめ、いろいろなところが後継者の育成や事業承継に関するサポートを行っています。そのため、さまざまな自治体が墨田区の取り組みを視察にきたり、交流をしており、先進的な取り組みをしている地域でもあります。私も、商工会議所の東京地域、城東地域、いわゆる下町の足立区、墨田区、葛飾区、江戸川区などの事業承継の相談員をしています。
中小企業、小規模零細企業は大企業とは違いますから、規模に応じた事業承継の形があります。またそれぞれの企業にはそれぞれの事情や、経営者の考え方もあります。それら数多くの事例から、その会社に最も適していると思われる事業承継のアドバイスをするのが、私の仕事です。
相続税大増税時代。節税対策は必須となった
―― 中小企業主には事業をやめ、マンション経営に変わったという方も多いと聞きます。
田尻 事業をやめたり縮小したりして、商店や事業所、あるいは自宅を賃貸用物件にして安定収入を目指した方も少なくありません。でも、2015年からの相続税の大増税で、いろいろ対策を講じないと税負担が大変だという方が増えています。
すでに多くの方がご承知かと思いますが、簡単におさらいします。増税前の基礎控除は「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」でしたが、「3,000万円+法定相続人の数×600万円」に引き下げられました。仮に妻と子ども2人が相続すると、増税前では基礎控除が8,000万円もありましたが、増税後は4,800万円になります。
以前は相続税対策などというと、一部のお金持ちだけの心配のように言われましたが、今では都内で土地建物を所有していれば、たいていの方が相続税の納税対象になってしまうようになったのです。実際、改正前に相続税申告の必要のある人は4.4%だったのに対して、基礎控除引き下げ後、課税割合は8.3%に倍増しています。
また、もう一つ見落とせないのは、税率構造の見直しも行われたということです。法定相続分における取得分が2億円超3億円以下の場合は、相続税の税率が40%から45%へ、3億円超6億円以下は以前と同じ50%ですが、6億円超えだと55%となりました。もっとも、このぐらいの資産をお持ちの方は、相続が生じる以前から税理士などがその対策をしているでしょう。問題は、対策をしなければ相続税がかかってしまうけれど、何らかの対策を講じていれば負担がなくなるという範囲の方々ですね。
―― 相続税対策の基本はどのようなことでしょうか。
田尻 相続対策のポイントは大きく3つあります。1つは「節税対策」。税制の特例などを活用し相続税そのものを軽減することです。2つ目は、「納税資金対策」です。相続税は現金で納めますから、相続財産のうち、不動産や自社株の割合が高い場合は要注意です。
そして3つ目は、俗にいう「『争続』対策」です。遺言書の作成などによりトラブルを防ぎます。ここでは、家族構成や相続財産の内容に注意が必要です。
相続対策の成否のポイントは、「被相続人」、つまり財産を渡す方が、相続対策にどれだけ主体的に関わってくれるかだと私は考えます。ですから、相続対策をはじめる場合は、まず「財産の棚卸し」からスタートします。
賃貸経営の法人化メリットが大きい人とは
―― 中小企業主の中には自身のアパート経営を会社の新たな事業に加えたり、個人のアパート経営者でも法人化をする人がいます。
田尻 アパート経営で法人化するメリットはいくつかあります。ざっと挙げますと、外部信用力が向上する、家族へ給料を支給することができる、家族役員に退職金を支給することができる、欠損金が10年繰り越しできる、保険料や福利厚生費が会社経費となる、社会保険への加入で保険料が軽減できる……などなどです。
一方で、法人化のデメリットは法人住民税均等割は毎年必要、経理・申告に手間と費用がかかる、法人のお金は個人と違い事業に関係する支出に使途が限られる……といったことが挙げられます。個人所得税が高い場合、不動産法人化による節税メリットを享受できるケースが多くあります。
実際、相続対策でよく行われるのは、土地・建物が個人所有の物件の建物だけを子どもなど相続人が出資した不動産法人に売却する方法です。譲渡する不動産の取引価格について、鑑定評価を受ける等合理的な説明ができるようにする必要がありますが、建物を帳簿価額で譲渡できれば、不動産管理会社へ登録免許税、不動産取得税はかかりますが、オーナー個人に譲渡所得課税はありません。そして、法人は土地の所有者である個人に地代を経費として払い続けます。
法人化はオーナー個人の所得税対策として有効です。個人所得税の最高税率は住民税含んで55%ですが、法人税の実効税率は30%前後です。高所得者ほど、その恩恵は大きくなります。また、会社に移転した所得は、本人へ地代及び給与、子供等へ給与として支給し、所得を分散させることにより法人・個人のトータルの税額も減少します。
そして、オーナー個人の相続税対策では、「土地の無償返還に関する届出書」を提出し、不動産管理会社が個人に「通常の地代」を支払うことで、土地の相続税評価額が80%に減額されます。「通常の地代」とは、その土地の固定資産税の2~3倍程度の地代が目安と考えられます。
ただし、これらはあくまでも理屈として考えられることです。個別の案件では、しっかりと実情を調べたうえで、その方やご家族のために必要な節税対策をご提案しています。
相続税に限らず、節税はさまざまな角度から検討する必要があります。大切なことは、これらを考慮に入れながら、生活スタイルにあった無理のない対策を講じていくことです。
税理士法人 田尻会計
TEL /03-3618-4403(代)
メール/tajiri-shigeto@tkcnf.or.jp
ホームページ/https://www.tajiri-kaikei.com/
2021.01
依頼者が抱える個別の事情に対応した
“頼れるエージェント”をめざす

相続に関わるトラブルは、遺産の獲り合い=争続だけではありません。相続準備が不十分なまま相続人が認知症となってしまった場合や、被相続人が障がいをお持ち、または引きこもりといった社会生活でのハンディを持っている場合など、当事者それぞれの事情によりさまざまな問題が生じることがあります。近年増え続けるこうした相続問題の解決に多くの実績を持つ、相続・事業承継コンサルタントの河井直也氏にお話を伺いました。
株式会社アレルゴ
代表取締役 河井 直也 氏
賃貸経営だけでなく生活全般をサポート
―― 河井さんが相続・事業承継のコンサルタントとして独立された経緯からお伺いします。
河井 建築士として入社した不動産会社で後に営業職に配属され、そのあと複数の店舗の営業統括を任されるようになりました。たくさんの資産家や事業主の不動産の運用などのお手伝いをしていると、必ずと言っていいほど相続や事業承継のご相談が出てきます。
一般に不動産事業者は、不動産のビジネスでキャッシュポイントになるところでは一生懸命やりますが、ひとたび自らの守備範囲の外と判断すると、「税理士さんを紹介します」とか、「保険会社に話をさせます」というように、外部の専門家に丸投げしてしまうことが往々にしてあります。組織に属する者として仕方がないことなのかも知れませんが、私自身もそのような経験を積み重ねるうちに、本当の意味でのお客様の問題解決のサポートをしなければいけないと強く感じ、資産承継専門のコンサルタントとして独立しました。
日本の家計資産の約7割が不動産で、その6割は60歳以上の世代が所有していると言われています。つまり、日本の家計資産の約4割が、近く相続を迎えるシルバー世代の不動産ということになります。また、今後10年で日本国内の中小企業の約1/3が廃業を余儀なくされ、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると言われています。
このことからもわかる通り、資産承継問題の解決こそが今の日本社会、日本経済における喫緊の課題であり、個人、法人共にその資産に不動産が多く含まれている以上、我々不動産事業者はその問題解決に尽力する義務があると考えています。
とは言え、不動産だけですべて解決できる訳ではありませんから、私自身も税金や保険などのさまざまな関連分野の勉強をし、独立後はそれぞれの分野の信頼できる専門家の皆さんとのネットワークづくりも行ってまいりました。
―― 具体的にはどのような問題解決をされるのですか。
河井 たとえば、勤めているときにこんな案件がありました。ご主人を亡くされ息子さんを1人で育てられている女性が、道路拡張で都内の自宅を売ることになりました。手にしたお金で代替のマンションを購入したいと私の元を訪ねられたのですが、私が気になったのは息子様が障がいをお持ちであったこと。
たとえマンションに住み替えたとしても、いずれその女性も歳をとるわけですから、そうなったときに息子さんが暮らしていく収入を確保しなければならないと考えた私は、埼玉でアパートの1棟買いをするよう提案しました。買ったアパートの1室に親子で住んで、家賃収入を得るというものです。
ご本人は猛反対されましたが、一つひとつご説明してご理解いただき、その結果、購入し移り住んだアパートの収益で、さらに1棟の収益物件と、都内に自宅マンションを購入するところまでになりました。
独立後にこの方とはコンサル契約をさせていただき、賃貸事業の法人化、遺言や家族信託、任意後見等、その女性に万一のことがあっても息子さんが安心して生活できる仕組みづくり等をお手伝いしています。
ここで言う万一の場合とは、急に亡くなることだけではありません。認知症になったり、寝たきりや意識がない状態でさまざまな判断が必要とされる場合、さらには息子様の生活資金を毀損する恐れのある延命治療を行うか否かといった重大な判断を、障がいを持つ息子様に代わりご本人が元気なうちに決めておく。また、ご本人が亡くなられた後も、息子さんの収入源である賃貸経営や生活を第三者がサポートし続けられる体制を整えることがこのコンサルティング契約の内容です。
この方の事例は障がいを持つお子様の親御様だけでなく、引きこもりのお子様を抱える大家様にも参考にしていただけると考えております。近年大きな社会問題となっている引きこもり問題は、当事者と親世代の高齢化から「8050問題」とも呼ばれていますが、こうした事情を抱えている方々はとても増えています。
コンサルタント契約で長期間サポート
―― 賃貸経営のサポートから法人化、遺言、任意後見といった相続やライフプランニングまで全体をみるわけですね。
河井 実はこうした事情を抱えていたり心配をお持ちの方は実に多いのですが、一方でどこに相談すれば良いかわからず困っている方も多いわけです。全体をサポートするためには、先ほど申し上げたように税金や生命保険などさまざまな分野も絡んでくるため、不動産や保険といった自らのキャッシュポイントに限ったミクロの視点でのアプローチでは、本当の意味での解決にはなりません。そこで私は資産額に応じて月に1~5万円のコンサルティング料をいただくことで、自らのキャッシュポイントにとらわれず、お客様ご本人にとって最適な対策を一緒に実現していくことを目標としております。
私は定期的にセミナーを開催し、ご希望の方には無料で個別コンサルをさせていただいているのですが、限られた情報の中でも可能な限り深いところまで掘り下げることで、多くの方に満足していただいており、8割以上の方はこの無料コンサルだけで終了となります。
一方で無料コンサルでは対応しきれない、または長期にわたり対策が必要と思われる方とはコンサルティング契約を交わし、前述のコンサルティング料をいただきながら継続的なお手伝いを行っております。
相続対策ではさまざまな専門知識が必要です。しかし、たとえば税の専門家である税理士の中でも相続税の手続きに詳しい先生はわずかというのが実情です。司法書士などの他の資格者や保険会社、不動産会社の担当者も同じで、専門分野に加えて相続のことも熟知している人はごく一握りだと言えます。さらに、個々のご家庭に特別な事情があれば、その解決をサポートするための知識やネットワークも必要です。被相続人の方が障がいをお持ちであるとか、頼れる親族がいないという場合、信頼できる後見人も必要になります。相続にお悩みの方を取り巻く現状、そしてお気持ちを包括的に理解でき、なおかつ信頼できる人を探して依頼するというのは大変です。
それを年間数十万円で依頼できるなら全体としては安いものだ、そう判断される方が私のクライアントの皆さんです。
―― 1回の手続きでの報酬を払うのではなく、コンサルタント契約で長い期間サポートするということですね。
河井 相続対策というのは長い期間でやらねばなりません。また、依頼者の個別の事情によっては、依頼者が亡くなられた後も被相続人のサポートが必要な場合もあります。また、税法などは頻繁に変わりますから、その時々で対策の見直しが必要です。
つい最近も贈与税の見直しといった議論が出ていますが、もしも贈与税に関する法律が変われば、これまでの不動産、生命保険、生前贈与といった相続対策の3本柱は崩れてしまいますから、当然見直しが必要です。そのような変化に対応し、いつもそばにいて対策を一緒に考える「頼れるエージェント」になりたいと私は思っています。
もっとも、お客様との長いお付き合いで友人あるいは身内のようになってしまい、ビジネスとの境目があいまいになってしまうことが、いまの私の悩みでもありますが(笑)。

自社セミナールームでのセミナーのほか、
大手企業主催セミナーの講師も務める。
豊富なコンテンツのオンラインセミナーも好評。
株式会社アレルゴ
TEL /042-444-0006(代)
メール/info@arergo.com
ホームページ/http://www.arergo.com
2020.10
相続対策は“時間”で変化する
準備済みでも常に見直しを
「すでに相続対策は済んだ」と考えていても、自身や家族、あるいは社会環境の変化により、その対策の効果が減じたり、なくなったりすることがある……そう警鐘を鳴らす三並新悟氏は、新法や保険商品を踏まえ、常に“対策の見直し”が必要だと語っています。
プルデンシャル生命保険株式会社
エクゼクティブ・ライフプランナー 三並 新悟 氏

新法を知らず無駄にリスクを負うことも
―― せっかくの相続対策が、実際の相続で効果を発揮しないこともあると伺いました。
三並 「うちは顧問税理士に依頼して税金の試算も終わっているし、知り合いの司法書士に相談して公正証書遺言も作ったよ」という方や、「昔から管理をお願いしている不動産業者さんの勧めで、自宅の土地の一部に賃貸アパートも建て終わったところ。何だか土地の有効活用と相続対策になるという話で、おかげさまで満室だよ」という方のお話に、「さすがですね! よかったですね」で終わらせたいところですが、さてどうでしょうかということですね。
長年相続の相談を受けて思うのですが、相続対策は時間とともに変化するという視点を持つべきだと思います。相続財産の評価は変動しています。現預金は使えば減りますし、貯まれば増えます。土地の路線価や建物の固定資産税評価ももちろん変わります。不動産評価に大きなインパクトを与える小規模宅地の評価減のルールは幾度となく見直されています。80%の評価減のルールが突然なくなったら焦りますよね。「これでよし!」と思って作った遺言書に書かれている財産内容は、ずっと同じでしょうか。たとえば、長男には不動産を、次男には現預金をと書かれた遺言書が出てきたけれど、あるはずだった現預金が介護費用や施設入居費等で無くなっていたらもめないでしょうか。
―― そう考えると確かに心配ですね。過去の準備が実際に台無しになってしまうということがあるのですか。
三並 こういう例があります。大都市郊外のある地主さんは、馴染みの不動産屋さんの勧めで500㎡の自宅の一部(300㎡)に賃貸アパートを建築しました。確かに貸家建付地の評価減や賃貸建物の評価減の効果も出せますが、平成30年から新設された「地積規模の大きな宅地の評価」に該当する土地であることを知らなかったのです。何もしなくても大きな評価減を使える可能性があったたわけですが、アパートローンの借り入れと、バス便の決して有利とは言えない場所での、賃貸経営リスクを負ってしまいました。
評価や法律の変化に対応しよう
―― 専門家にきちんと相談しないと失敗するということですね。
三並 そうです。しかし、その時点では専門家が関わって行った対策であっても、評価方法や法律などが変化すれば「逆の相続対策」になってしまう可能性もあります。
一人暮らしの母Bさんは某信託銀行の勧めで平成26年1月に公正証書遺言を作成しました。内容は「横浜の自宅6,200万円(築38年。取得費不明)は都内在住の長女に相続させる」「金融資産3,500万円は関西在住の長男に相続させる」といったものでした。その後28年4月にお亡くなりになり、29年1月に遺言執行による不動産・金融資産の相続手続き終了後、長女は3月にBさんの旧居宅を売却しました。
このケースですが、相続に詳しい方だとピンとくるかと思いますが、公正証書遺言を作成した時にはなかった「空き家特例」が有効に使える可能性があったケースだったのです。自宅をいったん姉弟の共有にして売却すれば、それぞれ3,000万円の特別控除が使える可能性がありました。この特例の詳細説明は省きますが、ざっと言いますと、6,200万円から310万円を引いて6,000万円以下となりますので、1,000万円以上もの譲渡税を払わなくてすむ対処もあったのです。
このように、相続対策では時間で変化するということを知っておかねばなりません。ですから私は、相談者やご家族の状況の変化はもちろん、さまざまな環境変化に応じて、的確な情報提供を継続し、相談者と伴走し続けることを大切にしたいと思っております。
たとえば、令和2年4月から「配偶者居住権」という権利が新しくできました。この権利は配偶者の死亡によって消滅し、所有権を持つ子が税負担なく、その土地建物全体の所有者になります。つまり、結果として二次相続対策として機能するわけです。これまでになかった考え方です。ですから私は、すでに遺言書の準備を終えた方も、いま一度チェックしてみることをお勧めしています。
評価や法律の変化に常に目配せし、それぞれの専門家の判断をまとめ、整理した上で最適な対策をすることが相続コンサルにおいて重要だと考えます。
セカンド・オピニオンとしての相談も
―― 三並さんの相続に関する相談は無料だと伺いました。なぜ、無料なのですか。
三並 私は所属する生命保険会社の規程により、会社以外から報酬を受け取れない立場です。しかしながら、相続・事業承継と生命保険の親和性は非常に高く、非課税枠の活用や、納税資金対策、分割対策、介護や認知症対策等々さまざまな局面で効果を出せる可能性があります。
ところが、国税庁統計年報平成30年度版によると、相続財産の中で 「生命保険金等」を残した人は26.7%、さらに相続財産に占める生命保険金の割合はたったの4.3%しかないのです。つまり、世の中の多くの方は生命保険の使い方を知らない。
だから、ご相談いただいた方へ保険会社の社員として何かしらのご提案ができる可能性が高いわけで、その結果として無料相談が成り立つということなのです。もちろん、効果が出ない場合は保険利用のご提案はしませんし、加入を迫ったりすることは絶対にありませんので、どうぞご安心ください。
最近は民事信託を相続に活かすケースも増えてきましたが、たとえば生命保険信託の活用という新しい考え方をご提供できる場面もあります。これなどは、私の立場だからこそ、より効果的な方法を立案できます。すでに対策に取り掛かっている方でも、セカンド・オピニオンとしてのご相談も承ります。Web面談にも対応していますので、遠隔地からのご相談でも大丈夫です。私のホームページやメール、お電話で「ポケット倶楽部見ました」と、まずはお気軽にご連絡ください。
プルデンシャル生命保険株式会社 多摩支社
神奈川県川崎市麻生区上麻生1-5-2
小田急新百合ヶ丘ビル6F
TEL /044-952-1351(代)
メール/shingo.minami@prudential.co.jp
ホームページ/https://mylp.prudential.co.jp
/lp/page/shingo.minami
2020.07
“トータルソリューション”を実現する
パートナーでありたい
アパート・マンションオーナーの相続対策では、所有物件をどうするかが大きな問題です。また、そもそも相続対策で賃貸経営をはじめたという方も少なくありません。したがって、相続対策の相談相手に、不動産に関する知識や業界情報に精通した方がいれば心強いものです。今回は、不動産業界に精通したコンサルタントのお一人に登場していただきました。
A&Aプランニング合同会社
代表社員 新井 厚至 氏

キーワードは「遺産分割」「節税」「納税資金」
―― 大手不動産会社におられた新井さんが、相続・事業承継のコンサルタントに転じた経緯を教えてください。
新井 転じたというより、もともと不動産会社に40年、定年まで勤めました。その間、宅地や住宅の開発・販売、不動産に関する調査・研究などに関わりました。住宅・オフィス・商業施設・ホテル等の複合開発では、その計画推進から賃貸・運営、設備・警備・清掃などの管理業務まで一切を経験しました。定年後の現在も、関係のハウスメーカーで不動産コンサルティングに関する社員研修の講師を続けています。
相続や事業承継に関しては、会社が設定してくれたセカンドキャリアのための研修がきっかけで、興味を持ったファイナンシャル・プランナー資格の一分野として掘り下げて勉強しました。日本社会は、高齢化に伴い相続や事業承継に関するコンサルティングのニーズがさらに高まっていくだろうと考えましたから。勉強の成果として、仕事関係や知人の相談に乗りアドバイスをしていましたが、会社員を卒業すると同時に、コンサルタント事務所を開設して独立しました。
相続対策のキーワードは「遺産分割」「節税」「納税資金」の3つです。具体的な手段としては、民法や相続税法の理解のもと、「生前贈与」「不動産」「生命保険」の活用が3本柱です。効果的な相続対策においては、これらの手段を複数組み合わせて活用します。私は不動産については当然、知識も現場経験もありました。不動産の仕事で、クライアントの土地活用や相続対策をサポートしてきたことが独立にもつながったわけです。
また、生前贈与についても勉強してきましたが、生命保険については業界が違ったこともあり、もう少し深く学ぶべきだと考えました。そこでこの分野に知見がある方々が多い団体の勉強会に参加し、知識と人脈を広げました。現在は、保険会社の社員、弁護士、税理士、司法書士といったプロフェッショナルと協力して、依頼者に最適な相続対策を提案し、実行支援までコンサルティングしています。
入り口で迷子になっている人を支援
―― 「最適な相続対策」とは、どのような対策ですか。
新井 依頼者それぞれの方の個別の事情で、相続対策は異なります。「生前贈与」「不動産」「生命保険」が3本柱だとしても、そのどれをどう使うか、全体を眺めて多面的に判断する必要があります。しかし、多くの人にとって相続は初めて経験することで、誰に相談したら良いのかわからないというのが実情です。具体的な検討に入る前に、入り口の段階で迷子になっていると言えます。やっと相談できても、相談された人が、相談者にとって最適な方策を提案し、実行の手助けまでできているかというと、どうもおぼつかない状況も見受けられます。相続は一つの手段だけでは十分な解決策にはたどりつけません。税金のことしか理解がなかったり、不動産でしか解決策を提案できなかったりすれば、相談者にとっての最適な相続対策とはなりません。
相続対策では、相続税の「節税」に目が向きがちです。しかし、例えば、不動産の相続対策で、立地や需要動向を無視した賃貸住宅建設計画では、相続税の節税はできても、資産価値が下がったり、稼働率の低下や借入金返済の滞りなどの将来の不安要因を作ってしまうこともあります。
私は相続対策では「もめない、減らさない、安心・幸せ」を重視しています。そしてコンサルティングでは常に「全体最適」、トータルソリューションを目指しています。
最近手がけた例でも、半年前に発生した相続による、相続税の納税資金がなく、延納について教えてほしいとの相談がご兄弟からありました。詳しくお話を伺うと、相続税の特例措置等を上手に使えば、申告は必要ですが非課税になる方策があるということが分かりました。申告期限の直前でギリギリセーフでしたが、広い視野で全体を眺めて多面的に知恵を出せばいろいろな方法が見つかるものです。
この方の場合は、一年後に改めて資産の活用のご依頼をいただき、相続した古い賃貸兼用の自宅を指名競争入札で短期に高値で売却し、同時並行で新しい賃貸物件と自宅を購入することができました。節税だけでなく、ご家族にとっての今後の生活を含めたトータルソリューションも実現できたわけです。
法人化も有効な対策の一つ
―― 節税と収益アップは、アパート・マンションオーナーの誰もが求めることですね。節税のために法人化をするオーナーもいるようですが。
新井 はい、賃貸不動産のオーナーの相続対策では、法人化は有効な対策の一つです。
例えば、ご主人が賃貸不動産をお持ちで、給与・年金も含めた課税所得が1,800万円を超えると、超えた部分の所得税+住民税の税率は50%です。不動産所得に対する事業税5%が乗ると55%になってしまいます。対策として、お子様が不動産所有会社を設立し賃貸不動産の建物部分だけでもご主人から買い取れば、賃料収入はすべて会社に入ります。お子様や奥様に役員としての給与を払えば、会社の経費になるとともに、所得の分散ができます。①ご主人の所得税・相続税が減る、②賃貸不動産の管理が法人に移るので、ご主人の認知症対策にもなる、③所得が次世代に移転できる等のメリットがあります。
建物の売却代金はご主人に入りますが、子供や孫への生前贈与で減らせば相続税の削減につながります。贈与された子や孫が、そのお金で貯蓄性の生命保険に入れば家族の将来も安心です。もちろん、現在の家族の年齢・収入・健康状態・相続の方針・これからのライフプラン等を確認し、検討した上で総合的に判断します。
私のモットーは「豊かなライフプラン、幸せ相続・事業承継」です。依頼者の相続対策のパートナーとして、現状の分析から解決策の提案、そして実践フォローまでを総合的に提供し続けたいと考えています。
東京大学経済学部卒業後、三井不動産株式会社入社。宅地・住宅の開発・販売、不動産に関する調査・研究、大規模複合開発の計画推進や運営・管理等に携わる。2012年、A&Aプランニングを設立し代表に。
中小企業診断士、不動産鑑定士補、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級、ファイナンシャル・プランナー(CFP)など専門資格を多数保有。相続・事業承継のコンサルタントとして、コンサルティング、講演などで活躍中。
A&Aプランニング合同会社
TEL /044-987-1938
メール/a.a.plan2012@gmail.com
ホームページ/https://aa-plan.com
2020.04
不動産投資でも大切な“セカンドオピニオン”の考え
相続対策でよく耳にする「借金をすれば税金が減らせる」は、果たして本当でしょうか。世間では「節税のための不動産投資で大きな負債を負ってしまった」という話もあります。「安易に考えず先々のことをしっかり考えた投資を」と呼びかける不動産投資コンサルタントの八木剛氏にお話を伺いました。
株式会社RIG
代表取締役 八木 剛 氏

財産を減らしてしまう節税は無意味
―― 「借金をすれば税金が減らせる」と安易に考えるべきではないという話を聞きました。どのような点に注意すべきでしょうか。
八木 税金対策を不動産の活用で行うのは、個人の相続よりも法人の事業承継の方が向いていると言えます。不動産は株や現金などと違い、相続時に分けるのが難しいことと、価格サイクルの周期が15年程度なので高く売れる時期とそうでない時期があるためです。
「何に注意すべきか」と言われれば、節税をすることでトータルの財産を減らしてしまっては意味がない、ということをまず頭に入れてほしいですね。土地や建物の評価減で相続税や贈与税を下げたり、場合によってはゼロにすることもありますが、5億円の相続税を払わずに済んだけれど、不動産価値は10億円下がって結局5億円損した、なんて話は実はよくあるんです。
借金をすれば税金が減るからという安易な考えでの投資はもちろんダメですし、相続や事業承継をした後の、5年先、10年先のこともしっかり考えて対処しなければなりません。例えば、地方の物件は相続対策に不向きですが、都市部の物件は相続対策に向いています。ですから、相続を受けた地方の物件をどうしても売りたくないのであれば、その地方物件を担保に入れて、都市部の物件を買うことで相続税対策が可能になります。
一代で不動産などの資産を築いた方は不動産投資についての経験や知識がそれなりにおありですが、引き継ぐ側にはこうした知識がない方も少なくありません。私たちはそんな方に不動産投資に必要な知識を不動産経営塾を通じて学んでもらっています。節税などの情報は世の中に溢れていますし、金融機関や不動産会社などもさまざまに情報提供というか営業をしています。私もいろいろな相続セミナーに呼ばれますが、知識があまりない方々に、ハウスメーカーがアパート投資を推奨し、証券会社が株をお勧めするなどといったシーンを見るにつけ、大丈夫かなと心配になることがあります。
―― 八木さんはそのような方々にどのようなコンサルをされていますか。
八木 当社は相続や事業承継の支援がメインではありません。不動産投資のコンサルティングにあたって、その投資目的にあった方法をお手伝いします。一般的な顧問契約と同じです。
相続を目的に不動産投資を使いたいとお話があれば、トータルで損をしない方法をお教えします。相続対策では保険の活用など借入等リスクを負わない方法もあります。でも、億単位の節税であれば、やはり不動産を活用する方法が効果があります。都市部で5億円の物件を買えば相続税評価は7割減り、3億5,000万円を圧縮することもできます。
でも、ただ物件を買えばいいというものではありません。当社のクライアントの最近の例では、相続目的で借り入れて不動産投資をしてもらいましたが、その物件が値上がりし、すぐに転売して1億円儲けてもらいました。相続対策であってもキャピタルゲインを取りに行く。私は本来、不動産投資はそうあるべきと考えています。儲けた上で、さらに相続対策のための次の投資をしてもらいました。当社のこうしたクライアントは、当社主催の不動産経営塾の会員など固定的な方々です。不動産投資について一緒に勉強しパートナーとしてお付き合いしながら、不動産投資を拡大したり、専門のパートナー税理士法人とともに税金対策をしていきます。
―― 不動産投資では専門的な勉強が必要ということですね。
八木 どんな業界でも専門があります。例えば衣料業界でも、子供服専門業者もいれば、ウインタースポーツ用品専門の会社もある。子供服の業者がスキーウェアを詳しく説明できるかというと、なかなかそうなりません。不動産投資だって同じです。不動産仲介業者やハウスメーカーの担当者は決して不動産投資の専門家ではありません。でも、ハウスメーカーに不動産投資を委ねてしまう人は実に多いですね。
ハウスメーカーは建物を建てることがビジネスです。悪意がなくても、投資の着地点は建てるところにもってきます。20年先も新築時と同じ家賃がとれて、同じ建物価値があるかのような投資回収計画を出してくるところも少なくありません。新興ハウスメーカーが勧めるアパート投資で失敗したという話が最近よく報じられますが、それならブランドイメージの高い大手メーカーが安心かというと、そうも言えません。大手に依頼する人は資産家が多いので、失敗しても破産はしない。だから顕在化しないだけです。
不動産投資では不動産の知識のほか、金融、法律や税務など広範な知識が必要です。それをすべて専門家なみに習得するのは容易ではありません。でもまず基本を勉強することで、いろいろな視点、複数の専門分野があることはわかります。そうなれば、一分野の専門家でしかないハウスメーカーや金融機関の言うことを鵜呑みにすることもなくなります。相続や事業承継対策で不動産投資の提案があったとき、我々のような不動産投資を専門とする者の意見も聞いてみることをぜひお勧めしたい。セカンドオピニオンという考え方は、不動産投資においても大切なことなのです。
株式会社RIG
本社 大阪市中央区南本町4丁目2番21号
TEL 06-6258-3737
東京支社 東京都中央区京橋2丁目5番2号
TEL 03-6228-7900
URL https://reig.co.jp/
2020.01
当事者の信頼関係を維持するためにも
関係者への丁寧な説明が大切
分けにくい不動産を兄弟姉妹等がトラブルなく引き継ぐには、当事者相互の信頼関係はもちろんですが、相続財産の評価とその処理についての丁寧な説明も大切です。保険会社に勤務し顧客のライフプランニングを行い、相続・事業承継のコンサルタントとしても活躍する井出氏に、土地や賃貸物件を所有する資産家の相続対策のポイントを伺いました。
相続・事業承継コンサルタント / ソニー生命保険株式会社
エグゼクティブライフプランナー 井出 裕之 氏

相続コンサルはネットワークが大切
―― 井出さんの相続や事業承継のコンサルティングはどのような形でされているのですか。
井出 保険商品の販売をする私は、数年前に個人向けの営業から法人向け主体の営業に変わりました。企業経営者のライフプランニングでは相続や事業承継のことが重要です。また、以前からの個人のお客様でも、賃貸マンションなど不動産経営をされている方がたくさんいらっしゃいます。その方々の資産はどう引き継ぎをしていけばいいのか、そこに的確なアドバイスや情報提供ができなければならないと考え、相続対策の勉強を始めました。その成果をお客様に提供したり、セミナーをご案内する中で、具体的な相談案件が持ち込まれ、相続や事業承継対策のお手伝いをしています。「井出の保険契約にはコンサルも入ってる」「コンサルしてくれるから井出に相談してみたらどうだ」、そう言っていただけるようになりたいと思って活動しています。
―― 具体的なコンサル内容はどのようなことですか。
井出 日本では相続財産の多くは不動産です。不動産や税務などはそれぞれの専門家がいるわけですから、私はそういう人をパートナーやブレーンにして任せます。不動産に限らず、相続のコンサルタントはすべてを自分で処理するのではなく、まず、どんな専門家が必要なのかわかることが大切なのだ、と考えています。私はブレーンとなる専門家をたくさん持っていますが、私の仕事は、自分自身のこうしたネットワークを拡げ、お客様にとって最適なパートナーを探してくることにあるのだと思っています。そのお客様にとって何が一番大切で、どういう専門家が必要なのかを私が理解し、その専門家に丸投げをせず、お客様の代理者としてしっかり寄り添って依頼し、進捗をお客様に報告します。その全体が私のコンサルです。
親しい間柄でも丁寧な説明が大切
―― マンションやアパートなど、賃貸経営者の相続対策では、どのようなことを行いますか。
井出 具体的な例でお話しましょう。お子様の学資保険など私の以前からの保険のお客様より、相続対策についてご相談を受けました。東京郊外の住宅地にいくつかの土地を所有され、賃貸マンションも経営されている方です。その方のお父様は、さらにその先代からの相続時に借入れをしマンションを建てて相続を乗り切られました。そのお父様がお元気なうちに、相続について整理をしておくべきですということを申し上げましたが、その方も、またお父様にもご理解していただき具体的に着手しました。
まず、土地の評価や賃貸経営での収支バランスなど、それぞれ専門家に依頼して調べてもらいました。するといくつかの問題点が浮かび上がってきました。例えば、賃貸マンションの経営は、借入金の返済に追われ下手をすると月次では持ち出しになりかねないことなどです。これは、お父様がお子さんたちに借金を残したくないというお気持ちから返済を最優先に考えた結果です。お子さんたちにとってはありがたいことですが、それで苦しくなっては元も子もありません。早速、金融機関に対して金利の引き下げを交渉し、借入期間の延長によるキャッシュフローの改善をしました。新規借入と借入期間の延長は相続財産の圧縮にもなります。そのほか、生前贈与や保険の加入、小規模企業共済への加入などによる節税、納税資金の確保など、賃貸経営
をされていることを踏まえた対策を行い、現在も継続して行っています。
また、親族で土地を分有し、人に貸している土地がありました。これが代替わり後にトラブルになったり、売却の支障にならないように分有解消を行いました。分有していたごご親族とは皆さん大変仲が良く、ご理解がある方々でしたが、それでもとにかく丁寧にしっかりとご説明することが大切ですと申し上げたところ、当事者の皆さんが何度も話し合う場を持たれました。これは素晴らしいことでした。親しい間柄でも丁寧な説明が大切であるということ、それが相続対策で最も大切なポイントだと私は思います。
ソニー生命保険株式会社
新宿ライフプランナーセンター第12支社
東京都渋谷区代々木2-1-5 JR南新宿ビル17F
TEL 03-5358-1712 FAX 03-5358-1742
◎認知症による資産凍結を事前対策
井出氏は認知症による資産凍結についての情報提供や事前対策も扱い、認知症を恐れている方、親の認知を心配されているお子様世代からの相談も多数受けています。