One Point Interview 2024

2024.04
リノベのトレンドは性能向上
持ち家感覚の部屋探しに対応を

 最近よく耳にする「リノベーション」というワード。「リフォーム」と一体どう違うのか。そして、賃貸物件におけるリフォーム・リノベーションのポイントについて、リフォーム業界のコンサルタント・梶田氏に伺いました。

カジタプランニングオフィス
代表
梶田 恵臣

梶田恵臣氏

入居者ニーズに合わせて先取りし
持ち家感覚での部屋探しに応える

―― まず、リフォームとリノベーションとの違いから伺います。

梶田 大きく分ければ、古くなった建築物を新しくすることをリフォーム。既存の建物に手を加えて新しくし、さらに新しい価値を加えていくことをリノベーションとしています。リフォームも、部分的な修繕もあれば大規模な改修もありますが、リノベーションは規模が大きい改修ということだけでなく、既存の建物や設備をゼロから考え直し、新しい機能や価値のある建物にするということ。壊れて古くなったから新しくする、という考えではなく、住む人の価値観やライフスタイルに合わせて作り変えていくということですね。そのような考えの違いをより明確にするために、リフォームとリノベーションを使い分けるようになってきています。
 私がお手伝いしているリフォーム会社やガス会社のリフォーム部門では、以前からの単なる修繕や改修ではなく、住む方の思いに寄り添ったリフォーム、変化したライフスタイルに対応したリフォームを行ってきました。それらの会社は、単なる修繕・改修ではないということをお客様にご理解いただくために、「リノベ」という言い方をするようになっています。

―― 本誌の読者であるアパート・マンションオーナーの場合、自宅のリフォーム・リノベーションと所有物件のそれと、両方があると思います。賃貸リノベも流行りのようですが。

梶田 これまで賃貸住宅のリフォームというと、原状回復の延長である修繕や部分改修が主流でした。しかし最近は、古い賃貸物件を工事で一新し、機能性や付加価値の高い新しい物件に再生するリノベーションが盛んに行われるようになってきました。リフォーム業者の中には、こうした賃貸リノベ専用のプランを提案しているところもありますし、賃貸リノベ専門部署や専門会社も出てきています。背景には、いうまでもなく空室の増加があります。新築物件以外は入居者が集まりにくいという状況の中で、単に部屋を部分的に新しく修繕しただけでは入居者は入らない。それならば、入居者ニーズに合った部屋、ニーズを先取りした新しい物件に、まさにリノベしてしまおうというふうに流れが変わってきました。
 具体的な事例としては、人気のないバス・トイレ・洗面が一緒の3点ユニットをやめてバス・トイレ別にする。そのためのスペースが取れない場合は、浴槽はやめてシャワールームにするなど、最近の若い人は、シャワーがあれば浴槽は要らないという人も多いので、そのような物件の方が人気のようです。
 キッチンと居室の仕切りをなくして広いワンルームにする、キッチンを対面型にする、押入れではなくクローゼットにして、あえて扉をつけない「見せる収納」にするなど、今どきの入居者にとって魅力のあるプランがたくさん提案され、実際に施工されています。エアコンやウォシュレット、システムキッチンなど、持ち家では当たり前になっている設備は時間差で賃貸でも採用されますが、間取りやデザインも同じです。持ち家の新築戸建てやマンションでのトレンドが、賃貸物件入居者の部屋選びにすぐに影響するというわけです。

―― 梶田さんは宅建士でもあり不動産に関する知見もありますから、賃貸リノベは空室対策でおススメとお考えですか。

梶田 単なる修繕だけでは、築後年数が経った集合賃貸の空室をうめるのは難しいと思います。一方で、個々の賃貸物件が選ばれる理由は間取りやデザイン、設備だけでなく、立地などさまざまな要因がありますから、リノベさえすれば空室がうまるとは言えません。例えば、高齢者向けの賃貸の需要はますます高まり、バリアフリーのリノベは必要ですが、それだけでは安心な住まいとは言えません。見守りサービスをつけるなど、ソフト面の対策も検討が必要ですからね。

リノベのトレンドを知る
やはり業者選びが重要

―― 持ち家の戸建てやマンションのリノベーションのトレンドはどのようなことですか。

梶田 最近のリフォーム、リノベーションのキーワードは「性能向上」です。中古住宅での間取りの変更、内装や外壁などの刷新、設備の更新や改修に加えて、断熱性能や耐震性能の向上をはかるリノベーションのトレンドが来ています。酷暑や自然災害の多発で、温暖化などの地球環境の変化を身近に感じ、環境問題を意識した、安心・安全で快適な住まいを求める人が増えています。
 「性能向上リノベ」で行うことは、具体的には「耐震」を筆頭に、「断熱」「遮熱」による暑さ・寒さ対策、そして「換気」。それらによる健康・省エネの実現です。省エネでは「耐久性・設備更新」でより長く住み続けられる住まいにしていくこと。
「耐震」はいうまでもありませんが、省エネ設備機器、太陽光や蓄電池といった創エネシステムの導入もリノベに合わせて行います。さらに、家族構成・ライフスタイルに合わせた住み心地のよい「間取り」の提案。「バリアフリー」は事実上標準とされていると考えるべきですし、「防音」「防犯」「防災」を考慮した設計・設備もニーズがあります。これらを前面に出したリノベーションプランを提案しているリフォーム会社も複数あります。
 一軒の家を解体すれば約35トンの廃棄物が出て、さらに新築すれば約1.5トンのごみが出るといわれています。脱スクラップ&ビルドのリノベーションであればその量は激減しますし、性能向上リノベーションにより、その後も環境に配慮した、しかも経済的な暮らしが実現するわけです。

―― 「性能向上」リノベは賃貸物件でも行われるようになるということでしょうか。本誌『ポケット倶楽部』の読者が取り組むとなると、どのようなところから始め、どんな業者を選べばいいでしょうか。

梶田 性能向上リノベは、まずはオーナー様のご自宅のリフォームの際にお考えいただければと思います。その上で、ご自身の所有物件のリノベーションをお考えの際に性能向上の観点を加味するか、環境意識が高い入居者をターゲットとした物件への再生をするか、ご検討いただければと思います。「冬場は健康維持のために室温を18度以上に保ちましょう」ということが、一般的な認識になってきました。そのような傾向から、賃貸住宅でも比較的取り入れやすい窓リノベで断熱性を向上させると、入居者様へのアピールにつながります。窓リノベは断熱性を高めるだけではなく、幹線道路などに面した所有物件では音の問題の解決にも効果的です。『ポケット倶楽部』の読者様はLPガス事業者様と付き合いの深い方々と伺いました。であれば、まずは省エネや創エネについて、ガス事業者へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
 リフォーム業界にはさまざまな業者がいますから、業者選びが大切です。トラブルを起こす訪問販売業者も昔から少なくありません。入居者交換のたびに従来型の原状回復をするだけであれば、安い業者を探せばいいかもしれません。けれども、競争力のある物件にするためのリノベであれば、業者選びは慎重にしなければなりません。実績があり、それを見せてもらえる業者を選ぶべきです。地元で長く商売をしているガス事業者は“逃げない”ですから、その会社に依頼をしたり、優良業者を紹介してもらうこともお勧めします。

かじた・えみ リノベ事業推進プランナー、インテリアコーディネーター、宅地建物取引士。大手住宅設備メーカー勤務のほか、インテリアコーディネーターとしても現場経験を積み、2006年に独立。複数企業のリフォーム事業立ち上げにコンサルタントとして支援するとともに、現場営業に同行し営業のOJT、5Sの推進、リノベ後の顧客インタビューなども行う。

カジタプランニングオフィス
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E-mail:contact@kajitare.com

2024.01
地域の“争続”をゼロに
ワンストップで対応

 相続ではまったく面識がない相続人が現れるということもしばしばあります。未知の相手との交渉事は、専門家に任せるのが得策。さまざまな相続案件を、関連するさまざまな専門家と解決してきている進藤氏にお話を伺いました。

司法書士法人やまびこグループ
行政書士法人やまびこ
代表社員 行政書士
進藤 誠

進藤誠氏

面識がない相続人が登場
手間とカネの比較を提示する

―― 進藤さんの事務所では「“争続”を滅亡させる」と宣言していますね。

進藤 行政書士の仕事を始めた頃、個別相談中に、目の前で兄弟の縁が切れたのを目の当たりにしたことがあります。そのとき、ただの「手続代行業」から脱却しないと、いつまでもこのような場面を見続けなければならないと思いま した。
 私たちは士業はサービス業だと考えています。「ご相談者様の感情に寄り添うこと」「専門語は使わないこと」「先送りにするリスクを知ってもらうこと」を基本に、相続の問題解決と、「争続ゼロをめざす」 取り組みを行っています。

―― 相続で、きょうだいが争うということは、よく聞きますね。

進藤 きょうだいばかりでなく、甥や姪との間でもあります。最近の例では、一度も会ったことがない甥と揉めごとになったという例もあります。
 80代の方が生涯独身だった弟さんの看取りをされました。急死だったようで、しかも最近の暮らしの様子はあまりわからず、後始末も大変だったようです。預金や土地、家の始末も必要ですが、それらを進めるには相続人であることの確定をしなければなりません。それでご相談があったのですが、調べていくと相談者以外にも、相続人がいることがわかりました。若い頃に家を出ていった一番上の兄さんがいて、その方はすでに亡くなっているのですが、お子さんがいる。相談者や亡くなった方の甥にあたります。お兄さんとも何十年も会っていないので、ましてやその子供など、まったく見ず知らずの人。それでも、相続人にあたるわけです。早速、連絡を取りましたが、これは厄介だ、トラブルになると直感しました。

―― 最初からトラブルになるとわかるものですか。

進藤 経験からなのですが、これまで接点がなかった人の相続人になったという連絡を差し上げたときに、多くの方は、まず亡くなった方はどんな方で、どうして亡くなったのか、その方の身寄りはどんな方なのかを聞かれます。しかしときどき、そのようなことよりも相続財産はいくらもらえるのかということばかり聞く方がいます。関心がそこにしかない方の場合は、揉めることが多い。今回も電話でそんな感じを受けました。
 亡くなった方の預金は分けることができますが、処分しにくい土地などもありました。私どもとしては土地は看取りをされた相談者が地元にいるので、その方の名義にしてはどうかと提案したのですが、権利分は完全に折半したいというのが、その甥の方の主張でした。そこで、土地まですべて分割するとなると時間がかかるということをお伝えしました。土地は無価値で、処分にはかえって費用がかかることさえある。時間と手間に対して、手取りがどうなるかを説明し、判断してもらい、最終的にはこちらの方針通りとなりました。

相談者の“感情”に寄り添い
専門家のネットワークも駆使

―― 土地の方はどうなりましたか。

進藤 土地の一つは、いわゆる無接道で価値がない。売るのが大変で持っていても税金がかかるだけのものでした。
 不動産業者の中には、こういう面倒なものを専門に扱う業者もいます。将来の開発を見越して周辺を一括で買うなど、無価値の土地に価値を生ませるノウハウがある業者がいるんですね。私の事務所のネットワークで、こうした業者を探して買ってもらいました。看取りをされた相談者は、相応の相続分を受け取ることができるべきだと考えていましたから、その点では満足していただけたと思います。

―― 土地の処分など、相続問題ではさまざまな専門家が必要ですね。

やまびこグループ 進藤 私たちの事務所では、年間300件を超える相続案件を手掛けています。その案件のどれも、1人の専門家だけで解決できることはほとんどありません。相続問題の解決には、金融、不動産、税務、法務など多岐にわたる分野の専門知識が必要で、専門資格が必要なこともあります。また、事前の相続対策であれば、不動産はもちろん、保険なども関係してきます。行政書士の私、そして一緒に仕事をしている司法書士の兄が担当する分野は法律面ですが、当然、法律面だけでは全ては解決できません。
 予期せぬ相続を迎えてしまったとしても、「あの専門家に任せておけば大丈夫」という守り刀になれればと思っています。事情も悩みも違うお客様それぞれに最適な問題解決策をご提案し、実行・支援させていただく。そのために、【争続断固拒否! 地元四国中央市から争う続を滅亡させ隊】というミッションに共感してくれている各専門家とアライアンスを組んでいます。そのことでさまざまな問題の解決を、ワンストップで、トータルでサービスできるようにする体制を整え、地域の皆様のお役に立ちたいと思っています。

しんどう・まこと 行政書士。行政書士法人やまびこ代表社員。宅地建物取引士・相続アドバイザー・相続事業承継コンサルタント・断熱アドバイザー・ファイナンシャルプランナーなど各種資格を保有。兄・裕介氏が代表社員である司法書士法人やまびこなどとグループ会社を形成し、関連業界の専門家とのネットワークで、相続や事業承継の問題解決を行っている。

やまびこグループ
司法書士・行政書士法人やまびこ

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