One Point Interview 2024

2024.10
相続業務の多くは不動産に関わる

アパート相続は「事業承継」

 相続財産にアパートがあり、相続人がその引き継ぎや処分で頭を悩ましているという例が増えています。アパート経営は事業であり、相続は「事業承継」。引き継ぎは後継者とともに行い、スムーズな手続きのためには遺言も重要だと、行政書士で不動産事業も行う田村氏はアドバイスしています。

株式会社ブルーメンハウス
代表取締役
田村 亜弓

田村亜弓氏

子育て中に入った不動産業界
取引の中の人生ドラマの虜に

―― 「行政書士兼不動産事業者」となった経緯から教えてください。

田村 一人息子が3歳の時、子育てをしながら勤められるというので、土日が休みの不動産会社に入りました。事務の仕事をしながら会社の業務の流れと業績を見ていて、不動産取引の中で起こる、その物件にまつわる人生ドラマや数奇な運命がとても面白くて、いつの間にか不動産の虜になりました。土地の登記簿を見ると所有権の移転がわかりますよね。こういう人からこういう人、会社に移ったとか、短い間に所有者が何人も変わっているとか。なんでかなと考えるといろいろ空想が広り、それが面白くて(笑)。
 勤めた不動産会社はビルの中にあって、ほとんどが法人相手のビジネス。だから、土日は休み。仕入れと再販事業が主で、「安く仕入れて高く売る」という商売。「普通の物件から外れた不動産」をうまく活用・転用し、思いがけずお金を生み出す、“不動産への目利き” “不動産の底力”を利用した営業をしていました。初めは営業を補佐する事務職で、宅建士の資格を取るとお給料が上がるというので取りました(笑)。そのうち営業もするようになり、書類作成も自分でやれるからと、行政書士の勉強もしました。当時は女性を活用しようという職場ではなかったので、行政書士になった時に思い切って辞めて開業しました。今から11年ほど前になります。
 行政書士業では初めから相続関係を業務の中心にしました。遺言起案や遺産分割協議書作成、相続手続、相続に関する相談やコンサルで、後見業務も行います。相続の仕事をしていると、多くが不動産に関わることの処理が必要になります。査定や処分が必要な場合は、不動産会社に依頼することになります。業者資格がなければできないことも多いですから。でも、私自身が不動産会社にいた時から感じていたことですが、不動産業者の中にはお客様の利益を優先しなかったり、グレーなことをする人もいます。それなら、自分がやった方が安心ですし、依頼者にも喜んでもらえるだろうと6年前に会社を設立し、宅地建物取引業を開始しました。売買仲介がメインで、相続物件も取り扱います。
 今、経済的には本業は不動産業なのでしょうが、後見業務などにも関わっていますから、仕事量は行政書士の方が多いですね。

「見える化」「磨き上げ」をともに行い
賃貸の「事業承継」を

―― アパートオーナーに向けて相続でのアドバイスをお願いします。

田村 アパート等の収益物件は相続人の一人が代表して相続しないと不都合が多いですし、相続財産が不動産メインで相続人が多いケースでは、売却になることがよくあります。相続した場合でも、相続人がそれまでの賃貸経営の内容を全く知らなかったり、管理会社に任せきりだったとか。引き継いでも、何をどうすればいいかわからないという方が大勢います。収益不動産は単なる財産ではなく、事業です。つまり、収益不動産の相続とは、賃貸事業の引き継ぎです。土地と建物とオーナーの経営手腕が合わさり財産となりえたので、経営手腕を後継者にも伝え、収益不動産を引き続き財産として承継させなければなりません。ですから私は、「賃貸事業の見える化」「賃貸事業の磨き上げ」「賃貸事業承継」の3つが大切だとお伝えしています。
 「賃貸事業の見える化」では、改めて物件ごとの収支を確認します。もし、あまり利益が出ていないなら、「空室が多い=入居者を惹きつける物件になっていない」「支出に無駄が多い」「税金が多い」など原因を考えることで対策を講じます。不動産賃貸業者=オーナー同士の「学びと実践」に結びついている情報交換会等が存在しますので、参加して情報収集することも必要かもしれません。
 「賃貸事業の磨き上げ」では、「見える化」での分析に基づき「収入を上げること」「支出を減らすこと」「税金を合法的に抑えること」を考え実践します。そして、単に支出を減らすだけでなく、収入を上げるために思い切ったリフォームをすることも要検討です。
 そして「賃貸事業承継」は、承継予定者、つまり相続人にも事業に参加してもらいます。空室の募集や物件のパトロールに同行してもらうことから始め、賃貸事業への関心と好感を高めてもらいます。「見える化」と「磨き上げ」にも参加して愛着をもってもらえれば成功といえます。

賃貸事業承継は余裕を持って
方針を伝える「遺言」も重要

田村 一番重要なのは、賃貸事業の承継を現在のオーナーが「自分の頭と体が動く間に、余裕を持って行う」ということです。対策をしてこないと、承継後に「築古物件で家賃を下げても空室が埋まらない」、「再建築するにも立退料が高額で手が出ない」等の問題が出てきます。
 そのようなことからも、「遺言」が大事だということを認識してほしいですね。遺言書の存在が相続トラブルを回避するということをわかっている方は多いのですが、実際に書く方はまだまだ少ないですね。書かれた遺言書が法的に有効であるためには、一定の決まりがあります。せっかく書いても無効になっては意味がありませんから、行政書士など専門家に依頼した方が安心だと思います。
 遺言したいことは時間の変化で「気が変わる」こともあります。そうしたら書き換えればいいのです。一度書いてそのままにしていて、死後に開封したら相続させようとしている相手が先に亡くなっていた、などということもあります。「この人に全財産を」と書いてあっても、相続人全員に「遺留分」という権利があります。「遺留分以外はすべてこの人に」など専門家に希望や事情を説明し、意思を尊重した内容で作ってもらいましょう。
 相続人が多数で換価分割する場合や、空室が多く修繕費が高かったり、取り壊すにも残存する入居者に立退料が支払えないといった問題等で売却せざる得ないこともあります。その時、遺言で誰が執行するのか、どう分けるのかといった方針がきちんと定められていれば、相続人はスムーズに手続きをすることができます。今後は相続登記の義務化や旧耐震基準物件の資産価値低下等、保有するだけで一層税金や経費がかかることも想定されますから、早く売却できるものは進めたほうが賢明なこともあります。とにかく「遺言書」は、遺言をする方の判断能力がしっかりしている間にしか作成できません。相続開始後に「遺言を書いておいてくれれば」という声を、これまで私もたくさん聞いてきました。オーナーには、収益物件をどう承継するのかをきちんと決めて、お元気なうちに「遺言」をしたためられることをお勧めします。

たむら・あゆみ ブルーメンハウス代表取締役。行政書士。子育て時期に不動産会社に事務職として勤務。10年間の在職中に行政書士の資格を取得。退職後、行政書士事務所を開業。相続案件を多数取り扱う中で、不動産関連の相談も増加。事業者としての登録も必要となり、会社を設立し代表となる。

株式会社ブルーメンハウス
〒222-0003
神奈川県横浜市港北区大曽根1丁目16番14-205号
TEL:045-633-4500
FAX:045-330-5083
E-mail:info@blumenhaus.co.jp

2024.07
相続家族会議を旅先で!

非日常空間で資産承継について
家族と想いを共有する

 相続について親子間で話をするのは、日常生活ではなかなか難しいのではないでしょうか。「親世帯・子世帯と、資産承継について非日常空間の旅先で、話すきっかけを設けてはどうか」と提案をしているコンサルタント堀口知宏氏に伺いました。

みなと相続コンサルタンツ
代表
堀口 知宏

堀口知宏氏

日常から離れ非日常の機会に
家族間のコミュニケーションを深める

―― 堀口さんが提案している「家族旅行で、相続について話す機会を設ける」というのは、どんな旅行なのでしょうか。

堀口 旅行先は日本人に人気のハワイもよいのですが、近郊の温泉地でちょっと高級な旅館で家族でゆっくり過ごすのもよいですね。旅行中のワンシーンの「家族会議」で、相続をテーマに主人公である親御さんから資産を承継する子どもたちに「現状と未来の相続をどのように考えているか」をお伝えするきっかけづくりを組み込んだ旅行です。
 相続について関係者が話し合う機会を持つというのは、日常生活ではなかなか難しいものです。必要性はわかるけれど、そのために改まって集まるというのも何だし……という方も少なくないようです。それならば、スペシャルイベントを企画して、そのついでに話し合うというプランです。
 親御さんと子ども、(できればきょうだい全員とその配偶者)が一堂に会する機会というのはなかなかありません。お子さんもお孫さんも一緒にとなると、かなりの人数です。実家に集まる日常とは異なる空間へ、みんなで旅行に行きましょう、ということですね。

―― 関係者全員となるとかなりの人数で、費用もかかりますね。

堀口 小さな団体旅行ですね。せっかくですから、参加者全 員に喜ばれるよう非日常な空間をプレゼントしてはいかがでしょうか、とご提案します。クルーズ旅行も喜ばれると思います。親御さんの年齢や体力により行き先は海外の場合もあれば国内の近場もあります。車椅子の方でもバリアフリー対応の旅行プランも、専任添乗員がサポートすれば、不自由なことはありません。お孫さんと一緒の旅行であれば、それだけでも親御さんは楽しいし、お子さんは費用を出してもらえれば親御さんに感謝しますし、有効なお金の使い道だと思います。
 相続資産の承継についての考え方(親から子への想い、将来のアパート経営等をどうするかなど)や現在の状況と未来への考えを共有する機会をつくってみる。一度、そういう機会を持てば、その後は相続に関する話し合いは、お互いに身構えなくなります。相続トラブルの原因の多くは、親子間やきょうだい間のコミュニケーション不足ですから、定期的にそういう機会をつくっておきコミュニケーションを深めておきます。親御さんが旅行に行ける元気なうちに、家族みんなで思い出をつくっておきましょう、とご提案しています。

健康寿命や生涯寿命の時間は有限
老後のための節約も大事だが、充実した
今を生きるための有効なお金の使い方

―― 思い出づくりは素敵ですが、何度もでは費用もかかりますね。

堀口 確かにそうですが、人生における大切なイベントの 費用対効果をどう考えるかです。
 健康寿命や生涯寿命の時間は有限です。現世で残すべき財産と、後世に残す必要がない資産(後継に不向き)を色分けし、金融資産に組み換えることができたら「今、豊かに人生を生きる」ための余裕資金を捻出できるかもしれません。
 私自身、ライフプランの中で家族旅行の重要性を強く感じています。また、三世代旅行や、富裕層向けの旅行企画と添乗の経験から、このような旅行の企画をお勧めしています。旅行に限らず、ちょっと豪華な食事会でもよいと思います。私は、元気なうちに家族や大切な人やお仲間との思い出づくりにこそ、お金を有効に使うべきだと考えます。まさに、プライスレスなお金の使い道だと思います。

旅行先で人気のハワイ

旅行先で人気のハワイ

 お子さんに財産を残したいというお気持ちは大切ですし、そのための相続対策も必要です。でもその前にまず、自分たちの楽しみにお金を使いましょう。それと、生前にお金を渡すなら、子世代が一番お金を必要としているときにも渡してあげるべきだとも考えます。多くの子世代は、60代の後半ぐらいから親からの相続資産を承継するわけですが、一番お金が必要なのは子育てや住宅購入がある30代、40代なんですね。
 例えば複数のアパートや賃貸物件を所有している高齢の方で、お子さんたちが賃貸経営を引き継ぐ気がないとわかれば、ご自身の老後のために必要な物件のみを残し、資産の組み換えをする。
 それを生前贈与するか、ご自身とご家族が一緒に楽しめるコトに使う、そういう選択をお考えになってはいかがかと思います。

―― どのような経験からこのような企画を実現しようと思ったのですか。

堀口 私の両親は70代で二人とも要介護4を経て他界したのですが、大きな後悔があります。父が借金をして土地を購入し、複数の土地を相続財産として残してくれました。その土地を両親はどうしたかったのか、相続について真剣に話す場がないまま、要介護状態に陥り来世に旅立ちました。元気なうちにもっと両親と旅行を楽しみたかったですし、どういう想いで土地を運用したかったのか、旅行先で少しでも話ができていたら、将来必ず訪れる相続対策のスタートが切れたはずなのに、それができませんでした。よって慣れない相続手続きや不動産売却には本当に苦労しました。
 相続対策の目的は、家族の大切な資産や想いを円滑に承継することです。私はナビゲーターとして相続や事業承継に関する課題を見える化し、それに関わるさまざまな専門家をつなぎ、取りまとめることができます。相談者の「プライベートコンサルタント」として、私の信念でもある「思い出に満ちた人生づくり」のために、「今、豊かな人生を生きる」ことを、お勧めしています。
 これまでご縁のあるお客様に、私の知識や経験でご恩をお返しし、お役に立ちたい。相続や資産管理のお悩みやお困りごとを伺い、各専門家の方をご紹介する中で「相続家族会議を旅先で!」という、コト消費の代表である旅行体験に相続会議を組み込みたいと考えました。体験したお客様からは、より感謝されることが増えております。
 もしご希望があれば、旅行の企画、添乗、家族会議の同席も含めてトータルでサポートすることも可能です。また、全国の相続専門チームメンバーの協力を仰ぐこともできます。もちろん、旅先案内人として、基本的な旅行の相談や手配アレンジもサポートさせていただきます。
 相続や事業承継にあたり、「旅先で相続家族会議を開催してみたい!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。
ほりぐち・ともひろ 一般社団法人 相続・事業承継コンサルティング協会 相続・事業承継ナビゲーター。相続・旅先案内人。横浜生まれ・横浜育ち、中央大学卒業。小学生二児の父。安田生命保険(現・明治安田生命)を経て、JTBに入社。20年以上富裕層マーケットの旅行企画立案と添乗を行い、独立。賃貸不動産経営も実践し、不動産エージェントとしても活躍中。相続診断士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、総合旅行業務取扱管理者。

みなと相続コンサルタンツ
〒108-0074
東京都港区高輪3-19-22-806
携帯電話:090-2467-8923
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公式LINE:https://lin.ee/xECOn7q

2024.04
リノベのトレンドは性能向上
持ち家感覚の部屋探しに対応を

 最近よく耳にする「リノベーション」というワード。「リフォーム」と一体どう違うのか。そして、賃貸物件におけるリフォーム・リノベーションのポイントについて、リフォーム業界のコンサルタント・梶田氏に伺いました。

カジタプランニングオフィス
代表
梶田 恵臣

梶田恵臣氏

入居者ニーズに合わせて先取りし
持ち家感覚での部屋探しに応える

―― まず、リフォームとリノベーションとの違いから伺います。

梶田 大きく分ければ、古くなった建築物を新しくすることをリフォーム。既存の建物に手を加えて新しくし、さらに新しい価値を加えていくことをリノベーションとしています。リフォームも、部分的な修繕もあれば大規模な改修もありますが、リノベーションは規模が大きい改修ということだけでなく、既存の建物や設備をゼロから考え直し、新しい機能や価値のある建物にするということ。壊れて古くなったから新しくする、という考えではなく、住む人の価値観やライフスタイルに合わせて作り変えていくということですね。そのような考えの違いをより明確にするために、リフォームとリノベーションを使い分けるようになってきています。
 私がお手伝いしているリフォーム会社やガス会社のリフォーム部門では、以前からの単なる修繕や改修ではなく、住む方の思いに寄り添ったリフォーム、変化したライフスタイルに対応したリフォームを行ってきました。それらの会社は、単なる修繕・改修ではないということをお客様にご理解いただくために、「リノベ」という言い方をするようになっています。

―― 本誌の読者であるアパート・マンションオーナーの場合、自宅のリフォーム・リノベーションと所有物件のそれと、両方があると思います。賃貸リノベも流行りのようですが。

梶田 これまで賃貸住宅のリフォームというと、原状回復の延長である修繕や部分改修が主流でした。しかし最近は、古い賃貸物件を工事で一新し、機能性や付加価値の高い新しい物件に再生するリノベーションが盛んに行われるようになってきました。リフォーム業者の中には、こうした賃貸リノベ専用のプランを提案しているところもありますし、賃貸リノベ専門部署や専門会社も出てきています。背景には、いうまでもなく空室の増加があります。新築物件以外は入居者が集まりにくいという状況の中で、単に部屋を部分的に新しく修繕しただけでは入居者は入らない。それならば、入居者ニーズに合った部屋、ニーズを先取りした新しい物件に、まさにリノベしてしまおうというふうに流れが変わってきました。
 具体的な事例としては、人気のないバス・トイレ・洗面が一緒の3点ユニットをやめてバス・トイレ別にする。そのためのスペースが取れない場合は、浴槽はやめてシャワールームにするなど、最近の若い人は、シャワーがあれば浴槽は要らないという人も多いので、そのような物件の方が人気のようです。
 キッチンと居室の仕切りをなくして広いワンルームにする、キッチンを対面型にする、押入れではなくクローゼットにして、あえて扉をつけない「見せる収納」にするなど、今どきの入居者にとって魅力のあるプランがたくさん提案され、実際に施工されています。エアコンやウォシュレット、システムキッチンなど、持ち家では当たり前になっている設備は時間差で賃貸でも採用されますが、間取りやデザインも同じです。持ち家の新築戸建てやマンションでのトレンドが、賃貸物件入居者の部屋選びにすぐに影響するというわけです。

―― 梶田さんは宅建士でもあり不動産に関する知見もありますから、賃貸リノベは空室対策でおススメとお考えですか。

梶田 単なる修繕だけでは、築後年数が経った集合賃貸の空室をうめるのは難しいと思います。一方で、個々の賃貸物件が選ばれる理由は間取りやデザイン、設備だけでなく、立地などさまざまな要因がありますから、リノベさえすれば空室がうまるとは言えません。例えば、高齢者向けの賃貸の需要はますます高まり、バリアフリーのリノベは必要ですが、それだけでは安心な住まいとは言えません。見守りサービスをつけるなど、ソフト面の対策も検討が必要ですからね。

リノベのトレンドを知る
やはり業者選びが重要

―― 持ち家の戸建てやマンションのリノベーションのトレンドはどのようなことですか。

梶田 最近のリフォーム、リノベーションのキーワードは「性能向上」です。中古住宅での間取りの変更、内装や外壁などの刷新、設備の更新や改修に加えて、断熱性能や耐震性能の向上をはかるリノベーションのトレンドが来ています。酷暑や自然災害の多発で、温暖化などの地球環境の変化を身近に感じ、環境問題を意識した、安心・安全で快適な住まいを求める人が増えています。
 「性能向上リノベ」で行うことは、具体的には「耐震」を筆頭に、「断熱」「遮熱」による暑さ・寒さ対策、そして「換気」。それらによる健康・省エネの実現です。省エネでは「耐久性・設備更新」でより長く住み続けられる住まいにしていくこと。
「耐震」はいうまでもありませんが、省エネ設備機器、太陽光や蓄電池といった創エネシステムの導入もリノベに合わせて行います。さらに、家族構成・ライフスタイルに合わせた住み心地のよい「間取り」の提案。「バリアフリー」は事実上標準とされていると考えるべきですし、「防音」「防犯」「防災」を考慮した設計・設備もニーズがあります。これらを前面に出したリノベーションプランを提案しているリフォーム会社も複数あります。
 一軒の家を解体すれば約35トンの廃棄物が出て、さらに新築すれば約1.5トンのごみが出るといわれています。脱スクラップ&ビルドのリノベーションであればその量は激減しますし、性能向上リノベーションにより、その後も環境に配慮した、しかも経済的な暮らしが実現するわけです。

―― 「性能向上」リノベは賃貸物件でも行われるようになるということでしょうか。本誌『ポケット倶楽部』の読者が取り組むとなると、どのようなところから始め、どんな業者を選べばいいでしょうか。

梶田 性能向上リノベは、まずはオーナー様のご自宅のリフォームの際にお考えいただければと思います。その上で、ご自身の所有物件のリノベーションをお考えの際に性能向上の観点を加味するか、環境意識が高い入居者をターゲットとした物件への再生をするか、ご検討いただければと思います。「冬場は健康維持のために室温を18度以上に保ちましょう」ということが、一般的な認識になってきました。そのような傾向から、賃貸住宅でも比較的取り入れやすい窓リノベで断熱性を向上させると、入居者様へのアピールにつながります。窓リノベは断熱性を高めるだけではなく、幹線道路などに面した所有物件では音の問題の解決にも効果的です。『ポケット倶楽部』の読者様はLPガス事業者様と付き合いの深い方々と伺いました。であれば、まずは省エネや創エネについて、ガス事業者へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
 リフォーム業界にはさまざまな業者がいますから、業者選びが大切です。トラブルを起こす訪問販売業者も昔から少なくありません。入居者交換のたびに従来型の原状回復をするだけであれば、安い業者を探せばいいかもしれません。けれども、競争力のある物件にするためのリノベであれば、業者選びは慎重にしなければなりません。実績があり、それを見せてもらえる業者を選ぶべきです。地元で長く商売をしているガス事業者は“逃げない”ですから、その会社に依頼をしたり、優良業者を紹介してもらうこともお勧めします。

かじた・えみ リノベ事業推進プランナー、インテリアコーディネーター、宅地建物取引士。大手住宅設備メーカー勤務のほか、インテリアコーディネーターとしても現場経験を積み、2006年に独立。複数企業のリフォーム事業立ち上げにコンサルタントとして支援するとともに、現場営業に同行し営業のOJT、5Sの推進、リノベ後の顧客インタビューなども行う。

カジタプランニングオフィス
〒222-0033
神奈川県横浜市港北区新横浜3丁目7-18 日総第18ビル732
TEL:050-5305-6662
E-mail:contact@kajitare.com

2024.01
地域の“争続”をゼロに
ワンストップで対応

 相続ではまったく面識がない相続人が現れるということもしばしばあります。未知の相手との交渉事は、専門家に任せるのが得策。さまざまな相続案件を、関連するさまざまな専門家と解決してきている進藤氏にお話を伺いました。

司法書士法人やまびこグループ
行政書士法人やまびこ
代表社員 行政書士
進藤 誠

進藤誠氏

面識がない相続人が登場
手間とカネの比較を提示する

―― 進藤さんの事務所では「“争続”を滅亡させる」と宣言していますね。

進藤 行政書士の仕事を始めた頃、個別相談中に、目の前で兄弟の縁が切れたのを目の当たりにしたことがあります。そのとき、ただの「手続代行業」から脱却しないと、いつまでもこのような場面を見続けなければならないと思いま した。
 私たちは士業はサービス業だと考えています。「ご相談者様の感情に寄り添うこと」「専門語は使わないこと」「先送りにするリスクを知ってもらうこと」を基本に、相続の問題解決と、「争続ゼロをめざす」 取り組みを行っています。

―― 相続で、きょうだいが争うということは、よく聞きますね。

進藤 きょうだいばかりでなく、甥や姪との間でもあります。最近の例では、一度も会ったことがない甥と揉めごとになったという例もあります。
 80代の方が生涯独身だった弟さんの看取りをされました。急死だったようで、しかも最近の暮らしの様子はあまりわからず、後始末も大変だったようです。預金や土地、家の始末も必要ですが、それらを進めるには相続人であることの確定をしなければなりません。それでご相談があったのですが、調べていくと相談者以外にも、相続人がいることがわかりました。若い頃に家を出ていった一番上の兄さんがいて、その方はすでに亡くなっているのですが、お子さんがいる。相談者や亡くなった方の甥にあたります。お兄さんとも何十年も会っていないので、ましてやその子供など、まったく見ず知らずの人。それでも、相続人にあたるわけです。早速、連絡を取りましたが、これは厄介だ、トラブルになると直感しました。

―― 最初からトラブルになるとわかるものですか。

進藤 経験からなのですが、これまで接点がなかった人の相続人になったという連絡を差し上げたときに、多くの方は、まず亡くなった方はどんな方で、どうして亡くなったのか、その方の身寄りはどんな方なのかを聞かれます。しかしときどき、そのようなことよりも相続財産はいくらもらえるのかということばかり聞く方がいます。関心がそこにしかない方の場合は、揉めることが多い。今回も電話でそんな感じを受けました。
 亡くなった方の預金は分けることができますが、処分しにくい土地などもありました。私どもとしては土地は看取りをされた相談者が地元にいるので、その方の名義にしてはどうかと提案したのですが、権利分は完全に折半したいというのが、その甥の方の主張でした。そこで、土地まですべて分割するとなると時間がかかるということをお伝えしました。土地は無価値で、処分にはかえって費用がかかることさえある。時間と手間に対して、手取りがどうなるかを説明し、判断してもらい、最終的にはこちらの方針通りとなりました。

相談者の“感情”に寄り添い
専門家のネットワークも駆使

―― 土地の方はどうなりましたか。

進藤 土地の一つは、いわゆる無接道で価値がない。売るのが大変で持っていても税金がかかるだけのものでした。
 不動産業者の中には、こういう面倒なものを専門に扱う業者もいます。将来の開発を見越して周辺を一括で買うなど、無価値の土地に価値を生ませるノウハウがある業者がいるんですね。私の事務所のネットワークで、こうした業者を探して買ってもらいました。看取りをされた相談者は、相応の相続分を受け取ることができるべきだと考えていましたから、その点では満足していただけたと思います。

―― 土地の処分など、相続問題ではさまざまな専門家が必要ですね。

やまびこグループ 進藤 私たちの事務所では、年間300件を超える相続案件を手掛けています。その案件のどれも、1人の専門家だけで解決できることはほとんどありません。相続問題の解決には、金融、不動産、税務、法務など多岐にわたる分野の専門知識が必要で、専門資格が必要なこともあります。また、事前の相続対策であれば、不動産はもちろん、保険なども関係してきます。行政書士の私、そして一緒に仕事をしている司法書士の兄が担当する分野は法律面ですが、当然、法律面だけでは全ては解決できません。
 予期せぬ相続を迎えてしまったとしても、「あの専門家に任せておけば大丈夫」という守り刀になれればと思っています。事情も悩みも違うお客様それぞれに最適な問題解決策をご提案し、実行・支援させていただく。そのために、【争続断固拒否! 地元四国中央市から争う続を滅亡させ隊】というミッションに共感してくれている各専門家とアライアンスを組んでいます。そのことでさまざまな問題の解決を、ワンストップで、トータルでサービスできるようにする体制を整え、地域の皆様のお役に立ちたいと思っています。

しんどう・まこと 行政書士。行政書士法人やまびこ代表社員。宅地建物取引士・相続アドバイザー・相続事業承継コンサルタント・断熱アドバイザー・ファイナンシャルプランナーなど各種資格を保有。兄・裕介氏が代表社員である司法書士法人やまびこなどとグループ会社を形成し、関連業界の専門家とのネットワークで、相続や事業承継の問題解決を行っている。

やまびこグループ
司法書士・行政書士法人やまびこ

〒799-0113 愛媛県四国中央市妻鳥町1206-1
TEL.0896-58-1246
https://office-shindo.net/