One Point Interview 2026

2026.01
地域貢献と収益の両立

空き家再生で新たな賃貸経営を

 全国で増え続ける空き家を再生し、賃貸住宅として活用する事業を展開する株式会社ヤモリ。独自のクラウドシステムとデータ活用により、これまで手付かずだった中古不動産市場に新たな可能性を切り開いている同社藤澤正太郎社長に、アパートオーナーが取り組める空き家活用ビジネスについて伺いました。

株式会社ヤモリ
代表取締役
藤澤 正太郎

橋本一郎氏

個人では難しい中古物件市場に新たな仕組み

―― まず、貴社・ヤモリの空き家再生事業の概要を教えてください。

藤澤 当社は2019年の創業以来、空き家をはじめとする未活用の不動産を活性化する事業に取り組んでいます。現在、全国で900万戸もの空き家がありますが、なかなか流通しません。その理由は、ヒト、モノ、カネがないからです。中古住宅を取り扱って再生しようという事業者は個人オーナーか買取再販業者に限られ、大手プレイヤーが入ってきていない。また物件情報が整っておらず、金融機関も耐用年数を超えた中古物件への融資に慎重です。
 そこで私たちは3つの事業を展開しています。1つ目は個人オーナーを育成するプラットフォーム事業、2つ目が空き家再生賃貸事業、そして3つ目が入居者向けの見守りIoT事業です。創業以来、不動産取得からリフォーム、管理・運営まですべて一括でできるクラウドシステムを開発し、そこに集めたデータやオーナー情報を活用して、AIも組み合わせながら不動産の再生事業を推進しています。
 なかでも「ヤモリの家庭教師」というサービスでは、不動産投資初心者の方に対して、物件探しから購入、運営、トラブル対応まで個別にサポートしています。月額6,900円で専門家に相談できる体制を整えており、これまで3,000名ほどの有料会員をサポートしてきました。会員の物件購入金額は累計130億円以上に達し、平均総事業費の利回りは19%と高い水準を実現しています。このように、知識がない方でも安心して始められる仕組みをつくっています。
 当社のミッションは「不動産の民主化」です。不動産所有・賃貸経営をより多くの人に開かれたものにすることを目指しています。これまで中古不動産は情報の非対称性が大きく、一部の専門家だけが収益を上げられる世界でした。しかし、システムとデータを活用することで、個人の方でも適切な判断ができる環境を整えています。知識やノウハウを身につけていただき、長期的な視点で資産形成できる。それが私たちの目指す姿です。

地域に密着した空き家活用で安定収益

―― 貴社が進める空き家再生賃貸のスキームはどのようなものでしょう。

藤澤 昨年から本格的に始めた空き家再生賃貸事業では、月15~20軒ほどの物件を購入し、空き家を再生して賃貸物件として貸し出しています。すでに200軒ほどを保有しており、関東圏だけでなく北海道、青森、新潟、富山、関西、九州にも展開しています。
 購入している物件の平均利回りは総事業費ベースで15%ほど。7、8年で初期費用が回収できる計算です。築40年を超えるような物件をリフォームして機能面を整え、人が住める状態にして賃貸に出しています。入居率は非常に高く、リフォーム済の物件で90%を超えています。
 また、北海道の第三セクター、東海、北陸、九州のガス会社など各地域のパートナーと組んで事業を拡大しています。地域金融機関から長期融資を受け、現地の会社と提携してリフォームを行い、入居者に貸し出すという流れです。当社がシステムやデータを使って空き家の発掘から選定、リフォームの手配、施工管理、入居付け、入居後の管理まで一括して行っています。

空き家活用は地域の価値向上につながる

―― 一般投資家が空き家活用ビジネスに取り組むメリットは何でしょうか。

藤澤 最大のメリットは、新築と比べて初期費用を大幅に抑えながら、高い利回りを実現できることです。たとえば仙台の物件では、80㎡ある戸建てを9.9万円で貸し出しています。新築なら14~15万円しますが、既存物件を活用すれば賃料を抑えることができ、結果として競争力が生まれます。
 また、戸建賃貸の供給数は増えていません。空き家を持っている方も、それを貸家にしようという発想がなかなかないし、そのままでは貸せない。70代の方が200~300万円を出してリフォームし、賃貸業を始めるかといえば、インセンティブが働きません。私たちが狙っているのは、そこの供給と需要のギャップです。
 戸建賃貸には確実に需要があります。人口は減っていますが、賃貸世帯数はずっと伸び続けています。住宅価格も建築費も金利も上がっており、住宅を買いたくても買えない層、買わない層が増えています。これまで賃貸を選ぶ人はアパートやマンションが主流でしたが、ファミリー向けの戸建賃貸を求める声は確実にあるのです。
 さらに重要なのは、空き家活用が地域の価値向上につながることです。空き家が増えていくということは、地域の価値が下がってしまいます。放置すればするほど周辺に悪影響が出ます。しかし、空き家を再生して人が住めば、地域の景観保持や治安維持、社会的結束の強化が図れます。地域全体で見れば、大きな貢献になります。
 当社では、全国に70~80名ほどの業務委託パートナーがいます。実は彼らの多くは、最初は個人投資家向けサービスの有料ユーザーだった方々です。3、4軒買っていくと、会社を辞めて本格的に取り組む方も出てきます。そういった方々が、各エリアで内見や現地調査をして、レポートをシステムに入れてくれるため、どのエリアでも対応できる体制になっています。
 私たちが大切にしているのは、短期的な利益ではなく、長期的な視点で地域と向き合うことです。空き家を再生して終わりではありません。その後もしっかりと管理し、入居者に安心して住んでいただき、地域に根づいた住まいをつくっていく。そうすることで、オーナーにとっても安定した収益が続き、地域にとっても価値が維持される。この循環をつくることが、本当の意味での不動産の活性化だと考えています。
 アパートオーナーの皆さまも、お持ちの物件管理のノウハウや地域ネットワークを活かして、空き家再生賃貸に取り組むことができます。当社のシステムを活用すれば、物件選定から収支シミュレーション、リフォーム業者の手配まで効率的に進められます。単に部屋を貸すだけでなく、地域に貢献しながら安定収益を得られる。この両立こそ、これからの時代に求められる賃貸経営のあり方だと確信しています。

ふじさわ・しょうたろう 2011年慶應義塾大学卒業、三菱商事入社。インフラ事業の海外案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在後、ニューヨーク本社の不動産ユニコーン企業であるKnotelのJapan GMを務める。2019年ヤモリ創業。

株式会社ヤモリ
2019年11月設立。本社所在地・東京都渋谷区神宮前5丁目21-4。不動産オーナー向けクラウドサービス「大家のヤモリ」、不動産管理会社向けクラウドサービス「管理会社のヤモリ」、個人投資家向けサポートサービス「ヤモリの家庭教師」を展開。中古戸建・空き家の再生賃貸事業、ファンド事業など、不動産取得からリフォーム、管理・運営まで一括でできるシステムを基盤に、データやAIを活用した不動産再生事業を全国で推進。2024年に10億円の資金調達を実施。
https://www.yamori.co.jp/