アパート・マンション オーナーのための税金Q&A   監修:高宮 惇(税理士)

高宮 惇(たかみや・じゅん)氏

慶応大学商学部在学中から税理士をめざし資格取得。文京学院大学大学院修了。内野正昭税理士事務所を経て2018年7月、父と高宮惇税理事務所を開設(東京都葛飾区)。法人、個人の税務顧問を行う。1984年、東京都生まれ。

2021.01
新型コロナ禍での賃料減額

Q:新型コロナ禍でテナントの賃料減額に応じましたが……。

A:「合理的な理由」があれば、差額分は「寄附金」にはなりません。

賃料の増額・減額…「経済事情の変動」など6要素から判断

 不動産の賃貸借者契約における賃料も、「契約自由の原則」(民法)により、当事者の合意により自由に設定することができます。また、「公平の原則」(民法等)から賃料が不相応に高額となったときは賃借人が減額を、不相応に低額となったときは賃貸人が増額を請求できることになっています。

 不相応かどうかは、租税負担などの増減、経済事情の変動、近傍との比較など6つの要素から判断されます。

 新型コロナ禍による賃料減額は、「経済的事情の変動」が主たる要素となると思われますが、不動産の賃貸借契約は継続的な法律関係であるので、裁判所から「一時的な事情」と判断されれば不適当とされ、景気低迷が続いて「一時的ではない事情」と判断されれば考慮される可能性があります。

賃新型コロナ禍での「合理的な理由」…「復旧支援」など3条件

 そうした一般論のもと、今般の新型コロナ禍では、オーナーと業績が悪化したテナントとの間で、下段のような「合理的な理由」に基づいて賃料の減額が合意された場合、「減額した分の差額」は法人税法上の「寄附金」としては扱われません(国税庁「新型コロナ感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」〈2020年4月30日更新〉)。「損金」として処理できるわけです。

 この取り扱いは、取引先等に対しすでに生じた債権の免除など、賃料の減免を行う場合も同様に取り扱われます。

 ほか、テナント以外の居住用物件や駐車場などの賃貸借契約でも同様となります。

消費税等の経過措置…「正当な理由」に基づくなら継続

 また、賃料の減額を行った場合の消費税率等の経過措置(旧税率8%)ですが、まず、資産の貸し付けに係る消費税率等の経過措置(旧税率8%)の適用を受けている賃料を、2019年4月1日以後に変更した場合、変更後に行われる資産の貸し付けには経過措置は適用されませんが、その賃料の変更が「正当な理由に基づくもの」であれば適用されます。

 また、政府の要請を踏まえ、新型コロナ禍の影響を受けた賃借人を支援するために当該賃料を減額することが明らかな場合は、「正当な理由に基づくもの」として、引き続き適用されます(国税庁「同」〈5月15日追加〉)。

 いずれの場合も、変更契約書や覚書などで、新型コロナ禍の影響を受けた賃借人の支援のために減額する旨を明らかにしておいてください。

賃貸物件のオーナーが減額を行った場合(国税庁資料)
賃料の減額が、たとえば次の条件を満たすものであれば、実質的には取引先等との取引条件の変更と考えられ、減額した分の差額は、寄附金として取り扱われることはない。

  • 取引先等で、新型コロナに関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと。または、困難となるおそれが明らかであること。
  • 賃料の減額が、営業継続や雇用確保など取引先等の復旧支援を目的としたものであり、そのことが書面などで確認できること。
  • 賃料の減額が、取引先等で被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間)内に行われたものであること。

2020.10
空き家特例

Q:母から住居と土地を相続し、それを売却するとき、どう節税できますか

A:“空き家特例”を利用します。共有にすれば、さらに節税できます。

譲渡所得から最高3,000万円まで控除

 亡くなった親(被相続人)が居住していた家屋、またはその敷地などを相続や遺贈で取得し、2023年末までの間に売却したとき、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。これを、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」(空き家特例)といいます。空き家を少なくする狙いから2016年度に設けられた措置です。

 相続した土地等を、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに譲渡した場合、相続税額の一部を取得費に加算して譲渡所得を計算できる特例(相続税の取得費特例)があり、特例の利用に当たってはこれとの選択適用となります。

 空き家特例は兄弟などと共有した場合、それぞれ3,000万円を限度として、それぞれが譲渡所得の全額について特例が受けられるので有利です。譲渡利益が3,000万円以下であれば、所得税、住民税はありません。

 一方で、相続で財産を取得した人の相続税額が3,000万円を超える場合、取得費特例のほうが有利になるときもありますので、税理士など専門家に相談するようお勧めします。

空き家特例の対象 …居住用家屋とその敷地等

 空き家特例の対象となる「居住用家屋」と、その居住用家屋の「敷地等」は、相続開始の直前まで被相続人が居住していた家屋で、①1981年5月31日以前に建築されたこと、②区分所有建物登記がされていないこと、③相続開始の直前に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと…の3要件全てに当てはまるものです。

 この居住用家屋には、要介護認定などを受けて老人ホームに入所するなどした“従前居住用家屋”も該当します。居住用家屋の敷地に、たとえば母屋と離れなどがある場合、母屋の床面積の占める割合を乗じて計算した面積の土地となります。

特例を受けるための適用要件…売った人は相続した者であることなど

 特例を受けるための適用要件は細かに設定されていますが、ポイントは次の通りとなります。

  1. 売った人が、相続または遺贈により被相続人の居住用家屋、その敷地等を取得したこと。
  2. 次のいずれかの売却をしたこと。
    ・ 居住用家屋を売るか、居住用家屋とともにその敷地等を売ること。*居住用家屋、その敷地等は相続時から譲渡時まで事業用、貸付け用、居住用に供されていたことがないこと。
    ・ 相続・遺贈により取得した居住用家屋の全部の取壊し等をした後に、その敷地等を売ること。
  3. 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  4. 売却代金が1億円以下であること。
  5. 売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費特例や収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。
  6. 同一の被相続人から相続・遺贈により取得した居住用家屋、その敷地等に、この特例の適用を受けていないこと。
  7. 親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないこと。

【参考】居住用財産を譲渡したときの特例
 居住用財産を譲渡した場合、これらのほか次のような特例もあります。

  • 長期譲渡所得の課税の特例
  • 特定の居住用財産の買換特例
  • 居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除
  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000 万円の特別控除の特例

2020.07
賃貸物件の土地と建物の相続

Q:賃貸アパートの土地と物件を相続するときに注意することは?

A:土地、家屋ともに評価額が抑えられ、その分相続税も少なくなりますが、空室が多いと目減りします。

土地の評価…賃貸割合100%なら“20%前後”の評価減

 土地に賃貸用の家屋を建設すると、その土地は「貸家建付地」として評価され、他人が使用できない「自用地」と比較して、評価額が低くなります。他人の土地を借りる権利「借地権」と、借家人がその家屋に継続的に居住できる権利「借家権」の割合に応じて減額できる仕組み(税制)がとられているためです。

貸家建付地=宅地の自用地としての価格×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
* 宅地の自用地としての価格:(すぐに活かせる)更地の評価額です。
* 借地権割合:地域によって異なりますが、多くは60~70%となっています。
* 借家権割合:一律「30%」の評価減となります。
* 賃貸割合:家屋の各独立部分の合計床面積のうち、課税時期に賃貸されている各独立部分の合計床面積の割合。

 上記の計算式に基づいて、たとえば借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、「0.60×0.30×1.00」で18%の評価減となります。借地権割合が70%であれば、21%の評価減となり、それぞれ節税になります。

 賃貸割合における評価減は、空室を除く、現に賃貸されている居室に対して適用されます。

家屋の評価…固定資産税は建築費の6~7割ほど、都合5割ほどへ低減

 家屋は、その物件の固定資産税評価額をもとに評価されます。固定資産税評価額はもともと建築費総額よりかなり低く設定されます。さらに、賃貸家屋は借家権割合を減額できるので、金銭資産よりも低く評価されます。

貸家(家屋)=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
* 家屋:固定資産税評価額はもともと建築費総額の6~7割と低くなっています。
* 借家権割合:一律「30%」の評価減となっています。

 建築費用総額を100とした場合、建物そのものの固定資産税評価額は60~70に抑えられているうえ、たとえば借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、「0.30×1.00」とさらに30%の評価減となります。固定資産評価額を建築費総額の3割減と見た場合、都合5割ほどへ低減されることになります。

留意事項…賃貸割合を反映、賃貸経営は“長期的視点”が大切

 賃貸割合は、課税時期(相続では被相続人の死亡日)に現に賃貸していることが要件となりますが、継続的に賃貸されていた家屋であり、“一時的に空室となったに過ぎないとき”は、「賃貸中」と判断されます。

 これには、①各独立部分は課税時期前も継続的に賃貸されてきた、②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていない、③空室の期間が課税時期の前後の1カ月程度であるなど一時的な期間である、④課税時期後の賃貸が一時的なものではない、といった4条件を満していることが必要です。

 また、被相続人の賃貸用敷地は、「小規模宅地の特例」で200㎡までは評価額の50%を減額できます(平成30年4月1日以後開始の相続については、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した宅地等は適用対象外。ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で行っている場合は、例外があります)。

 相続面から見ればこのように大きな節税メリットがあるのですが、投資面から見ると、一般には償還期間の長い、大きな借入れをします。相続ではそうした債務も受け継ぐことになりますので、賃貸物件の建設や運営は長期的な視点から検討することが大切であると言えます。

2020.04
2020年度税制改正

Q:2020年度税制改正であった賃貸関係の見直しは?

A:空き地の利活用に向け、“アメとムチ”の施策が進められています。

2020年度税制改正…賃貸関係では「空き地の利活用」「優遇措置の期限延長」など

 2020年度税制改正は、全体として、日本経済の持続的成長と、老後の資産形成を後押しする内容となっていますが、賃貸関係では空き地の利活用の促進、優遇措置の期限延長などが盛り込まれています。

「低未利用地」の譲渡所得…特別控除制度(100万円)を創設

 まず、空き地の利活用の促進に向け、5年超保有している土地を、上物を含め譲渡価格が500万円以下の「低未利用地」の譲渡所得には、100万円を特別控除できる“アメ施策”が創設されました(一定の日から令和4年12月31日の譲渡まで)。

 たとえば、土地の売却価格が500万円、取得費が150万円の場合、譲渡所得は350万円となります。これまで5年超保有していた土地なら長期譲渡所得として税額20.315%(所得税・復興所得税15.315%、住民税5%)が課せられ、税額は71万1,025円でした。

 今回の税制改正では譲渡価格から100万円を特別控除できるため、課税所得は250万円、それに対する20.315%課税となりますので、納税額は50万7,875円へ減ります。

「所有者不明土地」への新施策…登記終えるまで、相続人申告を義務付け

 一方、「所有者不明土地」等については、土地・家屋の登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間、現に所有している相続人等に対し、市町村の条例に基づいて氏名・住所など必要な事項を申告するよう義務付ける“ムチ施策”が取られました(令和2年4月1日以後の条例施行日以後)。

 所有者不明土地は、相続登記が行われないことなどによって発生。これが一方では“税金逃れ”、他方では都市計画づくりへの大きな“阻害要因”となっています。

 今回の改正で、税金逃れを回避する狙いから、相続登記がされるまでの間、氏名・住所などを自治体に申告するよう義務付けられます。と同時に、自治体が調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、使用者を所有者とみなして固定資産税が課されることになります(令和3年分以後)。 ほか、優遇税制措置などは次の通り見直されました。

個人所得課税

NISA制度の見直し・延長
  • つみたてNISAを5年延長する(令和24 年まで20 年の積立期間を確保)。
  • 一般NISAは、1階で積立投資を行っている場合には2階で別枠の非課税投資を可能とする2階建ての制度に見直したうえで、5年延長する。
  • ジュニアNISAは、延長せずに令和5年末で終了する。
国外居住親族に係る扶養控除等の見直し
  • 令和5年分以後の所得税については、留学生や障害者、送金関係書類において38万円以上の送金等が確認できる者を除く30歳以上70歳未満の成人は、扶養控除の対象にしない(個人住民税についても同様)。
私的年金等に関する公平な税制
  • 私的年金等について、以下の見直しが行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。
  1. DC(企業型・個人型)等の加入可能要件の見直しと受給開始時期等の選択肢の拡大
  2. 中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲の拡大
  3. 企業型DC 加入者のiDeCo 加入の要件緩和

消費課税

消費税の申告期限の延長
  • 法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人について、届け出により消費税の申告期限を1月延長する特例を創設する(令和3年3月31日以後に終了する事業年度末日の属する期間から)。

自宅、賃貸物件の売却にかかる税金  2020.01

Q:自宅と、所有賃貸物件を売却したときとの、税金はどう違いますか?

A:賃貸物件は譲渡損を給与などと損益通算ができません。

課税の仕組みは同じですが…

 賃貸用のアパート・マンションの売却、マイホームの売却ともに、譲渡所得への課税の仕組みは同じですが、アパート・マンションの譲渡損は給与など他の所得との損益通算が認められていません。一方、マイホームには譲渡益がでたときは特別控除、譲渡損がでたときは損益通算や繰越控除などの特例が活用できます。
 したがって、マイホームに比べアパート・マンションの売却は、譲渡損が生じないよう留意する必要があります。

同じ扱いとなる部分…譲渡所得税と住民税が課せられる

 賃貸用のアパートやマンション(事業用不動産)を売却したときも、マイホーム(居住用不動産)を売却したときと同様に、譲渡所得に対して、分離課税として譲渡所得税と住民税が課せられます。
 そして、事業用不動産、居住用不動産ともに、物件の所有期間が譲渡の年の1月1日現在で5年以下のときは短期譲渡所得、5年超は長期譲渡所得となり、それぞれ税率が定められています。所得税、住民税ともに、短期譲渡所得が高率となります。

注意を要する部分・異なる部分…譲渡費用には「居住者への立ち退き費」も含みます

事業用不動産の建物取得費・譲渡費用

 建物取得費は、建物の購入代金から減価償却費相当額を差し引いた「残存価額」になります。また譲渡費用には、居住者への立ち退き費用が含まれます。

事業用不動産の譲渡損

 最も注意を要する点は、譲渡損があった場合、給与など他の所得との損益の通算ができないことです。ただし、同一年における、他の不動産(土地、建物)の譲渡益とは通算できます。

マイホームの譲渡益・譲渡損

 マイホームを売って譲渡益がある場合は、特別控除などの特例があります(3,000万円の特別控除、軽減税率、買い換え 〈交換〉)。売った年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるマイホームの譲渡損が生じた場合は、損益通算や繰越控除ができる特例があります(新たにマイホームを買い換える場合、新たにマイホームに買い換えない場合)。

譲渡価額

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)=課税譲渡所得金額

譲渡価額
取得費 売った土地や建物を買い入れたときの「購入代金」(建物は減価償却費相当額を控除する)や、「仲介手数料」などの合計額。
実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合や不明の場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できる。
譲渡費用 「仲介手数料」「測量費」など土地や建物を売るために直接要した費用、貸家の売却に際して支払った「立退料」、建物を取壊して土地を売ったときの「取壊し費用」など。
特別控除 収用などのとき:最高5,000万円
マイホームと土地を売ったとき:最高3,000万円
課税譲渡所得金額

●税額=譲渡所得金額×税率
●税率(*)

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 30% 9%

*このほか、復興特別所得税が加算されます。
*資料出典:すべて国税庁ホームページより

2世帯住宅の賃貸活用

2019.10

Q:空き地に2世帯住宅を建て、1世帯を賃貸したいと思っています。税法上などでどんなメリットがありますか?

A:一般住宅に比べ、資金面や税制面でメリットがあります。

「安定した入居」が大前提

 所有者(オーナー)と賃借人(入居者)が同じ物件に住む「賃貸併用住宅」は、月々の家賃収入がより安定的に得られるほか、建設するとき、毎年の納税、そして相続時の納税時に、一般住宅に比べて資金面や税制面でのメリットが得られます。
 ただし、経営をうまく成り立たせるには、何よりもまず「入居が長期的に安定し、空室リスクがない」ことが大前提となります。また、賃貸併用住宅は一般住宅に比べて建設コストが嵩む一方で、入居者は少ないので、利回りはアパート・マンションに比べて低い傾向にあります。立地条件、近隣の賃貸動向を見極めつつ検討するようお勧めします。

建設・納税・相続それぞれのメリット

建設するとき…ほぼ「住宅ローン」が利用できる

  賃貸併用住宅を建設するときのメリットは、建設資金を借り入れる際、審査が厳しいアパートローンではなく、一般の「住宅ローン」が利用できます。これは、建築面積のうち、オーナー住居部分が51%以上を占めている場合に可能です。

納税するとき…「小規模宅地特例」を有利に活用できる

 市町村が、毎年1月1日時点における土地や建物の所有者に課税する「固定資産税」と「都市計画税」を軽減できます。
 自宅や賃貸住宅の敷地に対する課税額を軽減する「小規模宅地等の特例」で、同じ敷地内に2世帯が住んでいると見なされるので節税できます。
 この特例は、1戸あたり200㎡以下の部分(小規模住宅用地)について、固定資産税を課税標準の6分の1まで、都市計画税を3分の1まで軽減する措置ですが、2世帯(所有者、賃借人)が住めば、2倍の400㎡まで拡大されます。
 また、賃貸で利益が出たとき課税される「所得税」も、賃貸部分の建築費や設備費は、減価償却費を計上できます。ほか賃貸部分のローンの利息、固定資産税、損害保険料も経費として計上できるので、確定申告をすることで節税できます。

相続するとき…賃貸部分の評価額が抑えられる

 賃貸併用住宅を相続する場合、賃貸部分の敷地(貸家建付地)と建物(貸家)は、自宅の敷地・建物より相続税の評価額を低く抑えることができます。自用の評価額と比べて、貸家建付地が約20%減、貸家は約30%減となるので、大きく節税できます。
 また、相続人が住んでいた土地を、その配偶者や同居している子どもが相続するときは、特例(小規模宅地等の特例)により、特定居住用宅地として、敷地面積の330㎡までは80%の評価減が受けられます。しかし、子どもが同居していないときは、原則として対象外になります(*)が、賃貸併用住宅は、賃貸部分の敷地(貸付事業用宅地)は200㎡まで50%の減額が受けられます。

(*) 細かな条件が設定されているうえ、たびたび見直されているので、最新情報を確認するようにしてください。

小規模宅地等の軽減措置
固定資産税の軽減
小規模住宅用地 ~ 200㎡以下 1/6に軽減
一般住宅用地 200㎡超~ 1/3に軽減
都市計画税の軽減
小規模住宅用地 ~ 200㎡以下 1/3に軽減
一般住宅用地 200㎡超~ 2/3に軽減
相続時の各限度面積と減額割合
特定居住用宅地 ~ 330㎡ 80%
貸付事業用宅地 ~ 200㎡ 50%
特定事業用宅地 ~ 400㎡ 80%

※回答は相談内容に対する一般的な考え方を述べています。

消費税率の引き上げ

2019.07 

Q  消費税率が引き上げられると、賃貸経営ではどんな影響を受けますか?

A  補修、リノベも負担増! 次世代住宅ポイントなどを上手に活用しよう

増税の影響は……

 収入面について見ると、非課税対象、課税対象とも変更はありません。居住用の賃料などは非課税なので変わりませんが、事務所や店舗などの賃料は新しい税率で徴収することになります。
 支出面では、ほとんどが増税対象なので、広く影響を受けることになります。飲食料品も酒類は増税対象ですし、外食のほかコンビニなどでの飲食も増税対象なので、慣れるまでは戸惑うかもしれません。
 賃貸経営で影響が最も大きいのは、住宅の建設、購入、補修・リニューアル、リノベーションといった投資。金額が大きいので、負担も大きく増えます。建築請負工事やリニューアル工事への適用には、指定日(6カ月前。2019年10月1日増税では2019年4月1日)より前に契約すれば、増税にならない特例(経過措置)が設けられていましたが、過ぎていれば恩恵は受けられません。

賃貸物件ではすでに“駆け込み”も
 国が消費税率を引き上げるのは、増税で少子高齢化対策を拡充するとともに、財政健全化に取り組むためです。引き上げとなると、引き上げ前に駆け込み需要が発生し、引き上げ後はその反動減に見舞われるので、日本経済は変動します。
 今回(2019年10月、8%を10%に引き上げ予定)、住宅分野では、賃貸物件を中心に駆け込みが見られています。

どんな対策がある?

 こういった影響を少なくするには、どう対策すればよいでしょうか。  たとえば1億円の賃貸物件を建てた場合、消費税が8%から10%になれば、消費税額は一括支払いでも1,000万円へと200万円も増え、借入れ・返済にすると、期間30年、金利2%のとき270万円にも膨らみます。
 そこで住宅関連では、「住宅ローン減税」「すまい給付金」「次世代住宅ポイント」といった3大支援がとられています。住宅の取得では住宅ローン減税、リフォームでは新世代住宅ポイントなどを上手に活用するようお勧めします。

住宅ローン減税
 控除期間を3年間延長(10年→13年)し、3年間で最大、消費税率引き上げ分にあたる建物購入価格の2%を追加減税。対象者は消費税率10%が適用される新築・中古住宅の取得で、2020年12月末までに入居した方。

すまい給付金
 収入に応じ、最大50万円の現金給付。対象者は消費税率10%が適用される新築・中古住宅の取得で、2021年12月末までに入居した方。

次世代住宅ポイント
 対象となる新築やリフォームに対し、商品と交換可能なポイントを発行(新築で最大35万円相当、リフォームで最大30万円相当)。対象者は消費税率10%が適用される新築住宅の取得(貸家を除く)、リフォーム(貸家を含む)で、2020年3月末までに契約の締結等をした方。

参考:自由民主党税務調査会資料



個人事業税と節税

2019.04 

Q  相続税を節税するために、生前贈与を上手に活用したいのですが、どのような方法がありますか。

A  「贈与」とは個人から財産をもらうこと

 贈与税は個人から財産をもらったときにかかる税金です。自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取ったときなどにもかかります。祖父母や両親などの贈与側(贈与者)は、贈与先(受贈者)を孫や子などだけでなく、ほかの誰でも選べます。贈与と認めてもらうには、贈与者と受贈者との間で贈与契約書をつくっておく必要があります。受贈者が相続人の場合、相続開始の前3年以内の生前贈与は、基礎控除額を含めて相続財産に加算されます。
 贈与の税率は相続税より多くなりがちですが、基礎控除や非課税制度を上手に活用することで節税ができます。国も、国民資産の有効活用に向け、贈与制度の利用を促しています。

「贈与税」の仕組みを理解しよう

 下表にあるように、贈与への課税は、誰にでも贈与できて、基礎控除がそれぞれ年110万円の「暦年課税」か、相続時の特別控除額が年2,500万円(最大)の「相続時精算課税」を選べます。
 暦年課税なら、年110万円以下であれば申告や納税も不要。超過分は、「贈与者→受贈者」の違いによって、「祖父母・父母→20歳以上の子や孫」なら特例税率、「兄弟間、夫婦間など」なら一般税率が適用となり、課税価格帯別に税率と控除額が設けられています。
 これに対し、相続時精算課税は特別控除額は大きいのですが、それを超える残額には一律20%が課税されるほか、支払いを免れた分は遺産に加算され、まとめて相続税が課税されます。
 また、一度相続時精算課税を選択すると、その後の贈与については全てこの制度が適用され、暦年課税へ変更することができなくなりますので注意が必要です。

どう上手に活用するか、例を挙げると…

 こうした仕組みをどう活用するか、その上手な方法を例としていくつか挙げれば、次のようになります。

  • 複数の人たちに数年間にわたって、できればそれぞれ基礎控除額の範囲内で生前贈与する(相続開始の前3年以内は回避する)。
  • 相続人とならない、たとえば孫に生前贈与する(贈与者が亡くなる直前でも相続財産に加算されない)
  • 贈与税の特例措置を活用する(主なものとしては、表に載せた「住宅取得資金贈与」「夫婦間贈与(婚姻期間20年以上)」「教育資金贈与」「結婚・子育て資金贈与」があります)。


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個人事業税と節税

2019.01 

Q  賃貸物件を個人事業主として経営する場合、どれぐらいの規模から事業税を課されますか。どうすれば節税できますか。

A  アパート・マンションは10戸以上から課税、税率5%

 個人事業主にかかる税金としては、一般的な所得税、住民税、消費税、それに事業税があります。事業税は、個人事業主は個人事業税、法人は法人事業税として徴収されます。
 個人事業税は地方税(都道府県)の一つで、賃貸物件を経営していれば「不動産貸付業」、貸駐車場を経営していれば「駐車場業」に該当し、税額は5%となります。
 住宅の規模については、戸建ては10棟以上、戸建て以外(アパート・マンション)は10室以上から課税対象になります。この軒数・室数には空室なども含まれ、共有物件は持分にかかわりなく全体の貸付状況から判断され、持分に応じて計算されます。信託物件も貸付件数に含まれます。
 貸駐車場は、屋根付きや立体式は収納可能台数を問わず事業として認定され、いわゆる青空駐車場は10台以上などが対象となります。

3つの控除制度、青色申告が有利

 課税対象となるのは、1年間(前年の1月1日から12月31日まで)の事業から生じた「事業所得または(及び)不動産所得」で、課税額は事業の総収入金額から必要経費、各種控除額などを控除して計算されます。
 具体的には、「事業専従者給与控除」「繰越控除等」「事業主控除」という3つの控除制度があります。所定の帳簿書類を備えている青色申告者(納税申告用紙が青色)は、控除についても白色申告者に比べて有利と言えます。
 毎年3月15日までに申告し、8月31日、11月30日までにそれぞれ分納します。

●事業専従者給与控除
 配偶者など生計を一にしている親族がその事業に専従している場合に、一定額が必要経費として控除されます。控除額は、青色申告の場合は支払った給与の額、白色申告の場合は配偶者が86万円、その他の親族が1人あたり50万円が限度額です。

●繰越控除等
 損失となった場合、青色申告者は赤字を3年間繰り越せます。災害による損失に限り、白色申告者も、3年間繰り越すことができます(被災事業用資産の損失の繰越控除)。
 ほか、機械・装置・車両などの事業用資産(土地・家屋等を除く)を譲渡して損失となる場合、その損失額を所得から控除でき、青色申告者は控除しきれない部分を3年間繰り越せます。これらの控除を受けるには申告が必要です。

●事業主控除
 青色申告、白色申告問わず、年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)が差し引けます。この個人事業税には所得税の青色申告特別控除は適用されませんので注意しましょう。

これらを計算式にすると次のようになります。

(事業所得または(及び)不動産所得①+所得税の事業専従者給与(控除)額-個人の事業税の事業専従者給与(控除)額②+青色申告特別控除額③-各種控除額④)×税率=税額

節税…減免措置をしっかりチェックしましょう

 個人事業主の節税ポイントは、まず「青色申告をする」、次いで「経費をきちんと入れる」の2つです。
 個人事業税については、繰越控除等で紹介した措置のほか、次のような場合には税額の減免措置が受けられるので、該当するものはないか忘れずにチェックし、手続きをすれば節税につながります。

●税額の減免措置
□災害等により損害を受けたとき
□生活保護法により生活扶助を受けているとき
□高額な医療費の支出があったとき
□納税者または扶養親族等が障害者であるとき
□中小企業者向け省エネ促進税制(東京都などの場合)



駐車場にかかる税金(道路があるとき)

2018.10 

Q  賃貸住宅用地と駐車場用地が接していなくても、軽減措置の対象となる場合がありますか。

A  「物理的・有機的に一体」なら適用されます

 駐車場にかかる税金については、本誌「ファミリー向け賃貸を考えるときの基礎知識号」で、消費税、固定資産税と都市計画税、また相続税評価などにわたって基礎知識を紹介しましたが、賃貸オーナーと見られる読者から、次のようなお問い合わせがありました。
 「住宅用地と駐車場用地が分筆登記されているときは、小規模住宅用地やそれ以外の住宅用地に適用される軽減はありません。ただし、分筆していても利用実態がほとんど入居者であるといったケースであれば、『固定資産税の住宅用地等申告書』を提出し、一体として利用していることが認められれば、軽減措置の対象となりますとのことですが、住宅用地(アパート底地)と駐車場用地とは接していないが、両者間は公衆用道路(当方所有権持分登記あります)を介して接している場合は軽減措置対象とならないのでしょうか?」



公衆用道路を介していれば、原則的に軽減措置なし

 お問い合わせのようなケースについては、実態を見てみないことには正確な判別は難しいのですが、いただいた情報から考えると下記のようになると思われます。
 まず、アパート用地(貸家建付地)と駐車場用地の間に公衆用道路がある場合は、「隣接」の要件を満たさないため、原則的には駐車場用地は「自用地評価(軽減措置なし)」となります。
 ただし、その公衆用道路がアパート居住者専用私道である場合には、アパート用地と私道、駐車場を一体として「貸家建付地(軽減対象)」とできる可能性があります。一方で、私道ではあっても、不特定の者の往来が可能な利用状況にある場合には、一体扱いにはなりません(軽減なし)。

アパート用地・私道・駐車場の“一体利用”の考え方

 また、一体利用と認められた場合でも、当該駐車場の一部を月極や時間貸などでアパート居住者以外に賃貸している場合や、自家用車の駐車場として使っている場合も軽減対象になりません。
 では、駐車場の利用者を賃貸入居者とそれ以外の利用者に区分し、賃貸入居者に係る部分を貸家建付地、賃貸入居者に係る部分を自用地とし、それぞれの区分面積に応じて按分したらどうか。これに対し、税務当局の考え方は「賃貸入居者専用の駐車場としての“一体性”という観点から見て合理性がなく、認められない」としています。
 つまり、アパート用地と私道、駐車場が物理的・有機的に「一体である」と認められる場合にのみ、軽減措置の対象になるわけです。

●住宅用地の固定資産税及び都市計画税特例措置
(東京都主税局HPより)

・住宅用地については、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられています。
・住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税及び都市計画税に応じて下表のとおり算出されます。




個人事業主の事業承継

2018.7 

Q  父が行っている賃貸住宅の経営を子が承継するとき、どのような手続きが必要ですか。また、どのような節税法がありますか。

A  個人事業主の事業承継はシンプルです

 自営業など個人事業主の事業承継は、いたってシンプルです。譲渡者がいったん廃業し、譲受者が引き継いで開業する形となるので、譲渡者は「廃業届書」、譲受者は「開業届書」を、事業を行う場所の住所を管轄する税務署(所轄税務所)に提出します。譲渡が有償(売買)のときは、譲渡者が所得税を納める義務が生じます。
 譲渡者が消費税の課税事業者であった場合は「事業廃止届出書」、所得税の青色申告をしていた場合は「青色申告のとりやめ届出書」も提出します。「前々年の売上高が1,000万円を超えている」か、「前年の1月から6月までの売上高が1,000万円を超えている」と課税事業者に該当します。
 予定納税を行っているときは、譲受者の納税額が少なくなる場合が多いので、余分に払わなくてすむよう「予定納税額の減額申請書」も提出します。
 また、譲受者が青色申告を継続する場合は「青色申告承認申請書」を提出します。青色事業専従者がいるときには、同時に「青色事業専従者給与に関する届け出書」、従業員を雇用しているときは「雇用契約書類」などを提出します。
 青色事業専従者とは、事業を手伝っており、給与を経費として扱える配偶者その他の親族で、①青色申告者と生計をともにしている、②その年の12月末で15歳以上である、③その年を通じて6カ月以上従事している…の3要件を全て満たしていることが必要です。

譲渡が無償なら贈与税の対象となる

 では、屋号があり、それを引き継ぎたいときはどうするか。「開業届出書」に同じ屋号を記載すれば継続されます(同じ市内に同じ屋号が商号登記されているときは、法務局で名義変更することになります)。また、当然のことですが、手続きが完了すれば、仕入先・取引先など関係先に代表者変更のごあいさつをします。
 形式的には以上の手続きを終えれば事業承継が完了しますが、譲渡者が保有していた土地や不動産、預貯金、売掛金、設備機器などの「資産」と、買掛金、未払金、借入金などの「債務」の譲渡が無償なら、税法上は「贈与」と見なされ、譲受者に課税されます。
 贈与税は、預貯金などの現金以外は贈与時の時価で課税されます。納税額はその年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産価額から基礎控除額(110万円)を差し引き、その残りの金額に応じた税率を乗じて算出されます。
 融資やローンで新たに賃貸住宅を建設するなど、事前に“負の資産”を増やし負担付贈与とすることで贈与税は節税できます。また、法人化(いわゆる“法人成り”)で節税となる場合もありますが、それらはこのコーナーですでに取り上げて回答していますので、ご確認ください。

事業承継税制は非上場株式などが対象

 国では事業承継を円滑化する狙いから、贈与税・相続税の納税を猶予・免除する「事業承継税制」を設けており、2018年度税制改正では適用要件の緩和が行われました。
 ただ、この制度は非上場株式などを対象としたものであるうえ、手続きが煩雑。今回の行われた10年間限定の特例措置がどう利用拡大につながるか注目されています。

贈与税の速算表(特例贈与財産用*、特例税率)

*祖父母や父母などの直系卑属から20歳以上の子や孫に贈与する場合。

現金を不動産に替えて節税

2018.4 

Q  駐車場だった評価額7,000万円の土地が1億円で売却できました。ところが、このまま現金で持っていると、今まで以上の相続税がかかると知らされ、困っています。

A  相続税の課税の仕組みを知りましょう

 現金等

 相続税は、借入金や葬儀費用を除いた「正味の遺産額」から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を差し引いた「課税遺産総額」に課されるわけですが、現金・預金などはそっくりその金額が正味の遺産額に組み入れられます。

 土地

 それに対し、土地は宅地や田、畑などの地目ごとに評価されます。評価は路線価が定められているときは路線価に基づいて行い(路線価方式)、路線価が定められていないときは固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算します(倍率方式)。
 路線価は、その土地が道路に面する標準的な宅地の価格(千円/㎡)で、国税庁が毎年7月に公表しています。固定資産税評価額は市区役所や町村役場で確認でき、倍率は路線価図に記載されている倍率評価表からチェックできます。
 土地には、「公示価格」「相続税路線価」「固定資産評価額」、それに実際の「取引価格」があるので、“1物4価”と言われたりします。公示価格を100としたとき、相続税路線価は80、固定資産税評価額は70ほどとなり、大きく下がります。

 家屋

 また、家屋は実際の建築費ではなく、固定資産評価額で評価されます(同額)。家屋の固定資産評価額は建築費を100としたとき、50~70程度、さらに半額以下になることも多いようです。

 賃貸なら、さらに調整(減額)

 さらに注意したいのは、土地、家屋とも、賃借されていれば、その権利関係に応じてさらに調整(減額)されることです。つまり、現金(や預金、株式)で持っているより土地や家屋に替え、さらにそれらを賃貸すれば評価額が抑えられ、その結果として納めるべき相続税が節税できるのです。
 たとえば、賃貸住宅を建築すれば、固定資産評価額50、貸家評価率70%のとき、借り入れなしでも、建築費の40%以下に収まります。

 相談事例における節税効果

 相談事例の場合、駐車場が1億円で売却できたということなので、仲介料や譲渡税(取得費不明と仮定)などを差し引いた手元現金は7,700万円ほどになるでしょうか。それをもとに、節税の流れを具体的に見ていくと次のようになります。
 手元現金をそっくり投入し、自宅敷地の半分をつかって賃貸住宅を建設した場合、諸費用(700万円と仮定)を除いて、実際に投入できる建築費は7,000万円ほど。すると、固定資産評価額は建築費の50%となるので、建設費用の半額、3,500万円になります。
 そして、新築した賃貸住宅の貸家権割合を一般的な30%、賃貸割合を100%としたとき、財産評価額は手元現金の約30%、2,450万円へと抑えられます。
 一方、土地は「自用地」から「貸家建付地」へと替わるので、面積400㎡、路線価10万円、借地権60%としたとき、評価額は自用地(4,000万円)より720万円が減額され、節税できることになります。
 なお、ここに記載した内容は税制上の仕組みを紹介したもので、自用地への賃貸住宅の建設は、市場性を見極めつつ、経営的な視点からも検討して判断されるようお勧めします。

土地・建物の評価方法

■土地
 ●路線価方式 
  路線価(千円/㎡、毎年改定)×面積(㎡)×補正率=評価額

 ●倍率方式 
  固定資産税評価額(3年ごと改定)×地域ごとに定められた倍率(毎年改定)=評価額

■建物
 ●固定資産税評価額(3年ごと改訂)×1.0=評価額

貸家建付地の価額

 ●自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

相続時の節税

2018.1 

Q  いま所有している古い家屋と広めの土地を相続するとき、どのような節税対策が考えられますか。

A  土地活用から見て3つの方法があります

 古い家を処分し、新たに自宅を新築・購入することになると思われますが、その際、土地をどう活用するかで、節税額は違ってきます。
 土地の活用方法としては大きく、第1案:全部売却する→新たに土地と新居を購入する、第2案:一部だけ売却する→残った土地に新居を建設する、第3案:全部残す→自宅と賃貸の併用住宅を建設する、といった3案が考えられます。

3方法の考え方とポイント

 第1案は、土地の売却代金で新たに土地と自宅、あるいは収益物件を購入できます。借入れなしでできるメリットがありますが、先祖からの土地を手放し、転居しなければいけない寂しさがともないます。
 第2案は、一部土地の売却代金で自宅は新築できるので、借入れはなし。でも、土地が狭くなるうえ、賃借住宅など収益物件の建設はできません。
 第3案は、いまある土地が残せ、収益物件となる賃貸住宅が建設できます。建設にかかった借入れ分は賃料収入から支払っていくので、当面困りません。ただし、賃貸経営で安定収益を維持することが前提となります。また、自宅と賃貸の併用住宅とするので、自宅分の借入返済は賃貸分から返済を補填することになります。
 広めの土地をそのまま相続すれば、自用地を特定居住用宅地等として相続税の特例措置(減額割合80%)が受けられるのは330㎡までです(平成27年1月以降相続分より適用)。そこで、賃貸部分を貸家建付地(*)として評価額を下げるわけです(建築面積の増加により、評価額そのものは増加)。そのうえで、自宅・賃貸住宅の併用住宅を建設し、その建設費用は銀行融資を受けることにして、節税をするわけです。

 土地相続か・売却かで、節税効果に違い

 「大事な先祖代々の土地なので」土地を全部売却して別の地への引っ越しはしない」という前提条件なら、第3案が有利になります。
 一方、第1案で、新しく買い替える土地の選択を「都心等の地価の高い土地」にすれば、従来よりも全体の面積を330㎡以内に収められる可能性が高まり、結果として80%評価減額を受けられる割合も高まるので、第3案よりも相続税の節税効果が高くなる可能性があります。また、建物代金を銀行から借り入れて自宅を新築すれば、建物の固定資産税評価額(=相続税評価額)は一般的に建築代金の50%程度といわれていますので、売却代金を現預金で残すよりもその分の節税効果があります。
 ただ、第1案では、従来の土地売却に係る譲渡所得税や新しく取得する土地の不動産取得税、登記料などの追加的な出費が発生するデメリットもありますので、土地を全部手放すかどうかなどの判断と、それにともなう節税対策を総合的に考え合わせて検討されるようお勧めします。

*貸家建付地の価額(国税庁資料)

◆次の算式1により評価します。
(算式1)
貸家建付地の価額=(自用地とした場合の価額)-(自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
  • 「借地権割合」と「借家権割合」は、地域により異なるので、路線価図や評価倍率表により確認します。
  • 「賃貸割合」は、貸家の各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分)がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて次の算式2で計算した割合をいいます。

(算式2)
賃貸割合=Aのうち課税時期に賃貸されている各独立部分床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積合計(A)
  • 算式2における「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井・床)等で他の部分と完全に遮断されている部分。たとえば、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。

消費税

2017.10 

Q  賃貸経営における消費税の取り扱いについて教えてください。

A  自身が納税義務者か、取引内容が課税対象か…で判断

 消費税は、国内で消費されるものやサービスに対し、広く薄く負担を求める税金です。2017年10月現在の税額は、消費税(国税)が6.3%、地方消費税(地方税)が1.7%、計8.0%です。
 アパート・マンションのオーナー(個人事業者)の場合、消費税の納税義務があるか・ないかは、その個人事業者の課税売上高が1,000万円以下であるかどうか(*1)と、その取引が課税対象であるかどうか(*2)で判断されます。

*1:課税売上高
 その年の前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務はありません。このため、事業開始年と翌年は消費税の納税義務はありません。ただし、相続などで事業を承継した場合や、課税事業者を選択した場合はこの限りではありません。
 平成25年以降は、前々年の課税売上高が1,000万円以下でも、その年の前年1月1日~6月30日の課税売上高と給与等支払額のいずれもが1,000万円を超える場合は納税義務者とする税制改正が行われています。

*2:非課税取引
 非課税は、課税になじまなかったり、政策的な配慮からとられている措置で、アパート・マンション経営関連では住宅の貸し付け、土地の譲渡・貸し付け、有価証券等の譲渡などが対象になっています。住宅の貸し付けは、契約により“人の居住用に供することが明らかなもの”に限られます。1カ月未満の貸し付けは非課税取引には当たりません。
 土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。ただし、1カ月未満の貸し付けや駐車場など施設の利用にともなって土地が使用される場合は非課税取引にはなりません。

居住用契約なら家賃収入は非課税、事務所なら課税対象

 アパート・マンション経営関連の非課税取引を具体的に挙げると、住宅用家屋の家賃収入や土地の貸し付け、借地権底地の地代収入などがあります。家賃収入には礼金や更新料、また共益費収入も含まれます。ほか、賃借人への返還義務がある敷金や保証金も課税対象外となります。
 一方、貸店舗・貸事務所、貸倉庫、貸別荘などの収入や、駐車場収入、貸看板広告収入は課税対象になります。
 住宅用の家屋であっても、契約により事務所として貸し付けているときは、非課税とはなりません。居住用として貸し付けたのに、入居者が勝手に事務所として使用したときは、当初契約の変更がなければ居住用として判断され、非課税となります。
 住宅と店舗との併用住宅は、居住部分は非課税、店舗など事業用部分は課税対象となります。居住用として利用しつつ、一定時間はネットなどを利用して仕事場としても使用する、いわゆるSOHOも、契約が居住用であれば非課税となります。

課税売上が95%以上なら、課税仕入れの税額全額を控除

 消費税の納税額は、「課税売上等の収入に含まれる消費税」-「経費等の支出に含まれる消費税」、つまり“預かった消費税”から“支払った消費税”を差し引いた金額ということになります。
 その年の「課税売上と非課税売上の合計額」に占める「課税売上」の割合が95%以上の場合は、「課税売上に含まれる消費税」合計額から「支出に含まれる消費税」(課税仕入れ等の税額)全額を控除できます(課税売上が5億円を超える場合を除く)。



賃貸経営での節税

2017.07 

Q  賃貸経営で節税するポイントを教えてください。

A 節税には3つの方法があります

 賃貸物件を運営するうえでは、「健全経営」という視点から、投資に応じた収益をあげることと、その収益を適法に節税することが、“同等に重要”であると言われています。と言うのは、節税によって納税額がかなり違ってくるうえ、申告・納税は毎年続けていくことになるので、中長期的には大きな差額が生じることになるからです。
 したがって、オーナー自身が節税の意識と基礎知識を持ち、税理士などのアドバイスを受けつつ、所有物件の節税の仕組みをつくり徹底していくことが大切であると言えます。
 そうした意味で、ぜひ知っておいていただきたい基礎知識を紹介すると、一般に3つの方法があります。第1は不動産所得を減らすこと、第2は控除額を増やすこと、そして第3は税率を下げることです。

不動産所得を減らす(必要経費を増やす)

 個人事業主は、交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費などの支出のうち、家事関連費以外の業務上かかったと認められる必要経費【1】を計上することで、課税所得金額は減ってきます。青色申告者の場合はやや異なりますが、必要経費には他にも修繕費や消耗品費、研修費、旅費交通費、広告宣伝費、外注工賃、利息、事業税なども考えられますので、忘れずに計上しましょう。
 「業務上かかったと認められる」割合については、たとえば車の減価償却や維持管理費の場合、走行記録があれば容易です。一方、そうした証明ができないときは、業態・規模・使用頻度等から按分計算し、会社通勤に使用の場合は週休2日分程度を必要経費と判断されることが多いようです。
 経費が多くなると、その分税負担は減少しますが、一方で所得(利益)も減少するため、銀行などの融資機関の評価は慎重になります。そのうえ、“過度の節税”は税務調査の指摘で修正申告や更正処分となり、本税や加算税等の追徴課税を受けかねないので、事前に税理士などからアドバイスを受けるようにしたいものです。

【1-1】賃貸経営で計上できる主な管理費(必要経費)
1:管理費(管理会社への支払い)
2:修繕積立金(同、経費化には一定の条件あり)
3:賃貸管理代行手数料(同)
4:損害保険料(火災・地震)
5:減価償却費
6:修繕費(修繕・リフォーム・設備機器入れ替え)
7:税金(固定資産税、不動産取得税、個人事業税、登記費用等)
8:ローン返済(返済額のうち利息部分、ローン保証料)
9:税理士手数料
10:その他経費(研修費、旅費交通費、広告宣伝費、通信費、新聞図書費、消耗品費)

【1-2】必要経費を算入する場合の注意事項〈国税庁資料〉
①個人の業務には一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費)がある。このうち、必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限られる。
②必要経費に「なるもの」と「ならないもの」(略)

控除額を増やす

 個人の課税所得金額は、家賃収入などの「不動産所得」と「給与所得」等の合計所得から、各種「所得控除額」を差し引いた金額となります。控除額が増えれば自ずと課税所得金額は減り、それに応じて納税額も減ることになります。所得控除には現在、社会保険料控除、医療費控除、扶養控除など14種類【2】があります。
 最近では、ふるさと納税や個人型確定拠出年金等が注目されています。

【2】所得控除項目
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦(夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除

税率を下げる

 個人事業を法人化したり、配偶者を役員などにすることで、不動産所得が分散され、税率が下がります【3】。ただし、法人化にあたっては売却側に譲渡所得税や登記変更費用、法人側に不動産取得税も発生するので、メリットを得るには、課税所得がおおむね1,000万円を超える場合といわれています。

【3】所得税の速算表(東京税理士会資料)
求める税額=A×B−C

駐車場にかかる税金

2017.04 

Q  アパート入居者向けの駐車場と、入居者以外にも貸す駐車場経営とでは、税金はどう変わりますか。

A 入居者向けが消費税、固定資産税とも有利

 空き室が増えたり、若者の車離れが進む中、空き地を有効利用したいとお考えのオーナーは多いかと思われます。税金面ではどう違うのでしょうか。
 まず、消費税ですが、アパート入居者向けの駐車場で、駐車場料を賃料または共益費として収受する場合、車の有無にかかわらず「1戸に1台の駐車場があるとき」は非課税となります。入居者全戸分の駐車場がないなど、それ以外のときは、駐車場料金を合理的に区分して課税されます。入居者以外に貸すときも、これに準じて課税されることになります。
 次に、固定資産税と都市計画税です。アパート・マンション用地の場合は、小規模住宅用地(世帯数×200㎡までの部分)については、固定資産税の課税標準が1/6、都市計画税も1/3に軽減されます。それ以外の住宅用地については固定資産税が1/3、都市計画税は2/3となります。駐車場がアパート・マンション用地と一体であるときも、上記のような固定資産税の軽減措置の対象となります。
 一方、住宅用地と駐車場用地が分筆登記されているときは、こうした軽減はありません。ただし、分筆していても利用実態がほとんど入居者であるといったケースであれば、「固定資産税の住宅用地等申告書」を提出し、一体として利用していることが認められれば、軽減措置の対象となります。
 土地の所有者が、自らの土地を貸駐車場として利用している場合に、その土地を自用地としての価額で評価するのは、国税庁によれば、貸駐車場は車の保管を引き受けることを目的とした契約であり、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係になるからとされています。
 逆に、車庫などの施設を駐車場利用者の費用でつくることを認めるような契約の場合は、土地の賃貸借になると考えられ、その土地の自用地としての価額から賃借権の価額を控除した金額によって評価されることになります。

相続税でも節税効果がある

 相続税評価においては、駐車場がアパートと一体で、諸条件を満たす場合には、自らが所有する土地に建築した家屋(アパート・マンション)を貸し付けている場合の土地、つまり貸家建付地としての評価減が受けられるケースがあります。しかし、駐車場を経営するとなれば、この軽減措置は受けられず、更地と同じ評価となります。また、アパート・マンションの建設にともなう借入金は、全額が相続財産から控除(債務控除)されます。
 小規模住宅用地の特例である貸付事業用宅地等の適用も受けられます(限度面積:200㎡、減額割合:50%)が、実際の相続時には、有利判定をすると、軽減割合の大きい居住用宅地(限度面積:330㎡、減額割合:80%)にあてる場合が多いようです。
 空き地の有効利用を考える場合、収益性とともに、税制面も考慮されることをお勧めします。

相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
(小規模宅地等の特例、相続の開始のあった日が平成27年1月1日以降の場合)

※貸付事業:不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び事業と称するに至らない不動産の貸付け、その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいう。
※一定の法人:相続開始の直前に、被相続人及び被相続人の親族等が、法人の発行済株式の総数または出資の総額の50%超を有している場合の法人。
※特例の適用を選択する宅地等に応じて、限度面積を判定する。

賃貸オーナーの交際費

2017.01 

Q  賃貸住宅のオーナーには、どのような交際費が認められるのでしょうか。

A 法人の交際費…全額が「損金不算入」

 「交際費等」とは、交際費、接待費、機密費その他の費用を言います。法人が、その得意先、仕入先、その他事業に関係のある者などに対して接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出する費用が該当します。
 交際費等の額は、原則として、その全額が「損金不算入」とされますが、期末の資本金または出資金の額が1億円以下である等の法人※(中小法人等)については、一定の限度額まで「損金算入」が認められています。
※資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社を除く。

 平成26年度税制改正で、中小法人はイメージ図(国税庁資料)のように、①「接待飲食費の額の50%相当額の損金算入」と、②「定額控除限度額までの損金算入(年800万円上限)」のいずれかを選択適用できることとされました(その他の大法人等については①のみ適用)。
 ただし、①もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用、②飲食等のために要する費用であって、参加者1人あたり5,000円以下の費用、③カレンダーや手帳などの贈与費用など「その他費用」は交際費から除かれます。
 うち、飲食費用については、飲食等の年月日、参加した得意先・仕入先などの氏名や名称と関係、参加した者の数などが必要となります(名称や所在地が不明のときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)。また、その他費用には、手ぬぐいなどこれらに類する物品を贈与する通常費用、会議での茶菓・弁当などが含まれます。

賃借オーナーの交際費とは…家事費等は除かれる

 相談事例は、こうした交際費を法人でなく、個人が支出した場合についての税務上の取扱いですが、いわゆる家事費や家事関連費は必要経費には認められません。対象となるのは、「収益を得るために直接要した費用」や「業務遂行上必要と認められる費用」で、具体的には次のような場合です。
 賃借物件の落成式での飲食費用、不動産管理会社へのお中元、お歳暮等の贈答費用などで、法人同様に支出が明らかで、相手方・支出額、接待理由から見てもっぱら事業の遂行上必要と認められる場合に限り、必要経費に算入できます。損金算入限度額の制限はありません。
 不動産所得の収入金額から差し引ける必要経費は、交際費以外にもその収入を得るために直接要した費用と、その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用となります。
 具体的には、賃貸物件の固定資産税や事業税などの租税公課(個人所得税・住民税は×)、修繕費(資本的支出を除く)、損害保険料(掛け捨て、当年分)、不動産会社への管理手数料、共有部分の電気代や水道代、入居者募集の広告宣伝費などです。減価償却費や繰延資産償却費なども該当します。
 これらに該当しても、家事費・家事関連費は除かれます。

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税務調査の事前対策

2016.10 

Q  税務調査で慌てないための、事前対策を教えてください。

A “税理士不在”を避けるのが最大のポイント

 毎年行っている税務申告が正しいか、税務署が事業者(納税義務者)を直接訪問してチェックするのが税務調査です。頻度は3年おきとか、10年に1回とか大きく違うのですが、多額の不正がある、不審な点が多い、申告内容に大きな変動があるなど、不正が疑われる事業者への訪問頻度が多い傾向にあります。統計的には法人の6%が受け、うち7割が誤りを指摘され、さらにその3割ほどで悪質な不正が見つかるようです。
 申告内容に間違いがなく、不正がなければいっこうに恐れることはないのですが、ケアレスミスはありがちですし、事前準備や当日対応に手間暇を取られますので、敬遠されるお気持ちはよく理解できます。
 事前対策の大きなポイントは、事前通知に対し、まず税理士に連絡するよう事前調整を行い、“税理士不在”の税務調査にならないようにすることです。
 調査官は署内で行う準備調査(過去5年間の申告書が対象)で、追徴の可能性が高い箇所、いわゆる“異常係数”部分をピックアップしておき、税務調査ではその箇所を重点的・優先的に調べます。
 異常係数は、前期と当期や標準値との比較、帳簿と領収証の整合といった証憑突合せ、帳簿や明細表の整合(計算突合せ)、各帳簿同士の整合(帳簿突合せ)でチェックし、ケアレスミスや不正がないかチェックされます。

税務調査の手続き、国税通則法で法定化

 税務調査の手続きは、従来からの運用を踏まえて平成23年度税制改正で見直され、国税通則法に法定化されました(平成25年1月からの税務調査に適用)。
 これにより、それまで各個別税法で規定され、地域によって運用の違いも見受けられた税務調査の手続きを統一し、①事前通知から、②身分証明書の提示等、③質問事項への回答と帳簿書類の提示または提出、④帳簿書類の預りと返還、⑤(必要があるときの)取引先への調査、⑥調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨、⑦更生または決定、⑧処分理由の記載、⑨更正または決定すべきと認められない場合の通知、そして⑩再調査まで、10段階の流れが明確化されました。
 ②~⑤で申告内容に誤りがないことが確認されれば、⑨へと飛び、終了となります。

申告内容を精査し“異常係数”を事前チェック

 税務調査は、通常10日から2週間前に、電話で事業者に直接通知があります(事前通知)。事前通知をすると正確な事実の把握が難しくなる、適正な調査に支障を及ぼすと想定される場合は、いきなり調査官が来訪する無予告調査になります。
 事前対策の大きなポイントは、事前通知に対し、まず税理士に連絡するよう事前調整を行い、“税理士不在”の税務調査にならないようにすることです。
 調査官は署内で行う準備調査(過去5年間の申告書が対象)で、追徴の可能性が高い箇所、いわゆる“異常係数”部分をピックアップしておき、税務調査ではその箇所を重点的・優先的に調べます。
 異常係数は、前期と当期や標準値との比較、帳簿と領収証の整合といった証憑突合せ、帳簿や明細表の整合(計算突合せ)、各帳簿同士の整合(帳簿突合せ)でチェックし、ケアレスミスや不正がないかチェックされます。

基本事項については侮らずに準備を

 このため、事業者側としては事前通知から税務調査までの間、そうした懸念のある箇所について重点的に再確認して備えることが大きな事前対策となります。
 税理士と意見交換などしつつ、特に申告書と総勘定元帳、伝票・請求書・領収書類の整理、また印紙貼付契約書・証憑類の確認、さらに給与台帳・源泉徴収簿、各帳簿類の整理などを実施。事務所内も求められた証憑類がすぐに提示・提出できるよう、管理状態を確認し整理整頓しておくことが大切です。
 指摘が目立つ事項をピックアップすると、表「指摘の多い事項と事前・事後対策」の通りとなっています。こうした部分は基本事項とはいえ、侮らず綿密に準備を進めておくようお勧めします。

自主的に修正なら「修正申告」、処分なら不服申し立てができる「更生」

 税務調査の結果、問題がなければいわゆる「申告是認」の通知があり、終了します。ケアレスミスや不正が見つかった場合は、指摘を受けた誤りについて税務署から処分を受ける「更生」か、指摘を受けた誤りについて納得して(自主的に)申告内容を修正する「修正申告」が求められます。
 更生については、納得がゆかない場合、不服申し立てができます。

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不動産共有の解消

2016.07 

Q 私と弟で賃貸アパートを共有しています。次世代にスムーズに引き渡せるよう解消したいのですが。

A 共有は、世代交代(親→子→孫)の中で権利関係・税金が複雑化


 共有とは、一つの物を複数の人が所有する形態を言い、各人は共有持分権を持ちます。
 共有物の処分は、自己の持分は他の共有者の同意がなくてもできますが、他の共有者の持分を無断で処分はできません。共有物の売却・物理的変更には共有者全員の同意を必要とします。共有物の賃貸借契約の解除には、判例上共有者持分価格の過半数の同意を必要とします。共有物の固定資産税は共有者が連帯納付義務を負い、管理費用などは持分に応じて負担します。
 共有は、先代の資産を相続するときなどによく取られる方法ですが、権利関係が複雑になるうえ、毎年の所得税の確定申告も面倒になり、これらから不仲になることもあります。
 共有関係を協議で解消するには、共有物を物理的に分割する「現物分割」、売却して代金を分ける「換価分割」、共有者の一人が他の共有者の持分を全部取得する代わりに他の共有者に対価を支払う「代償分割」、現物分割の過不足分を価格で賠償調整する「価額賠償方式」などがあります。
 共有している別物件があれば「共有持分の交換」ができますし、「共有持分の贈与」もあり得ます。

解消方法…代償分割、共有持分の交換、共有持分の贈与など

 これらを税金面から見たメリット、デメリットを挙げると、次のようになります。
 賃貸アパートを残したい相談者にとって現実的な共有解消は、「代償分割」でしょう。譲渡した者には譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は給与所得など他の所得とは分離して課税する分離課税になっており、税率は不動産の所有期間が5年超(譲渡年の1月1日時点)の長期譲渡所得なら15%(住民税5%)、5年以下の短期譲渡所得なら30%(同9%)となります。また、平成25~49年までは、復興特別所得税(所得税額の2.1%)もかかります。
 譲渡金額が時価より著しく低い場合は、売主に譲渡所得税、買主に贈与税がかかることもあります。
 「共有持分の交換」は、同種資産内で認められている特例(固定資産の交換の特例)で、譲渡資産と取得資産との時価差額が、高い方の20%以内であるなどの条件を満たせば、課税上譲渡がなかったものと見なされます。交換で相手方から金銭などの交換差金を受け取ったときは、その交換差金が譲渡所得として所得税の課税対象になります。
 「共有持分の贈与」では、贈与を受けた者は贈与税の申告・納付が必要となります。各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には贈与税はかかりません。ただし、例えば10年間にわたり毎年100万円ずつ贈与を受ける約束があるといった場合には、約束年に定期金の権利の贈与を受けたとして贈与税がかかるので、申告が必要です。
 贈与方法が相続時精算課税なら、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要になります。

現物分割は不満が出やすく、換価分割なら物件を売却

 「現物分割」を、賃貸アパートを残して行うなら、普通はその土地を分割することになります。もとの共有持分比率と分割後の不動産価格比が同じになる場合、譲渡はなかったことになります。
 ただし、分割して利用できるような広い土地であるか。また、分割すると評価額はどうしても低くなるし、土地の位置や形状、また利便、日照などの違いによって価格差が生じ、トラブル化することもあります。不整形地や角地の場合は特になりやすいと言えます。価格差が生じたときには、その差額分に贈与税がかかることもあります。
 「換価分割」では、共有者も同時に持分を売却して、代金を分けることになりますが、相談者の場合は自らが買い取らないと、賃貸アパートを次世代に引き渡せなくなります。

    ●固定資産の交換の特例
  • 譲渡資産と取得資産は、いずれも固定資産であること。
  • 譲渡資産と取得資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること(借地権は土地、建物に附属する設備・構築物は建物の種類に含まれる)。
  • 譲渡資産は、1年以上所有していたものであること。
  • 取得資産は、交換相手が1年以上所有しており、かつ交換のために取得したものでないこと。
  • 交取得資産を、譲渡資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。


  • 譲渡資産の時価と取得資産の時価との差額が、いずれか高い方の価額の20%以内であること。


宅地の評価

2016.04 

Q 所有している宅地の財産分与に先立ち、適正な価値を知っておきたいのですが……。

A 不動産には「5つの価格」があります


 不動産には、「5つの価格がある」とされます。実際の売買価格である実勢価格、いわゆる“時価”のほか、公示価格、基準地価、路線価、それに固定資産税評価額があり、路線価は公示価格の8割、固定資産税評価額は7割ほどとなっています(表「不動産の5つの価格」参照)。

●不動産の5つの価格


評価方法は宅地の種類ごとに決められています

 財産分与が目的ということであれば、評価額は都心部なら宅地に面する路線に付された路線価をもとに試算し(路線価×地積)、路線価が定められていない地域なら固定資産税評価額をもとに試算します(固定資産税評価額×評価倍率)。これは自らが所有し使用している「自用地」の場合です。
 ほか、宅地を貸している「貸宅地」(底地)、建物を貸している「貸家建付地」、さらに建物所有やその賃貸を目的にした「借地権」があり、評価方法は表「宅地の評価方法」の通りとなっています。路線価、評価倍率(国税庁公表)は、当該宅地の数値を利用するようにします。

●宅地の評価方法


実際には宅地の現況に応じて補正されます

 路線価で自用地の評価を試算するときには、当該宅地の道路との面し方や形状などにより、細かな補正値が示されています(国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」)。
 また、道路との接し方についても、同じ地積の整形地であっても、一方路線→+側方路線→+裏面路線→3方路線と、その利便性に応じて評価額は向上します。
 例えば、一方だけ路線に接している自用整形地と、一方に加え側方も路線に接している自用整形地を試算すると次のようになり、後者の評価は高くなります(普通住居地区、一方500C、側方300C、敷地面積400㎡〈20m×20m〉のとき)。

一方路線
(50万円×1.00)×400㎡=2億円

一方路線+側方路線
{(50万円×1.00)+(30万円×1.00×0.03※)}
×400㎡=2億360万円
※側方路線影響加算率:普通住宅「0.03」を適用

 ほか、宅地の形状が、間口が狭いとか、奥行きが長いとか、不整形であるとかによっても評価額は異なり、ともに整形地より下がります。


実勢価格の入手方法はいろいろあります

 こうした宅地評価を直近の実勢価格で知りたいときは、容易に入手できる前記の「5つの価格」のほか、国土交通省が提供する「不動産価格指数」(住宅:http://tochi.mlit.go.jp/kakaku/shisuu)、指定流通機構が提供する「取引動向情報」(例えば東日本地域:http://www.reins.or.jp/trend/mw/index.html)などが参考になります。
 より詳しく正確に知りたいときは、費用が発生しますが、不動産鑑定士に依頼する方法があります。



賃貸を法人化するメリットとデメリット

2016.01 

Q いま私が個人としてやっている賃貸経営を、法人化したときのメリットとデメリットを教えてください。

A 課税所得がおおむね1,000万円万円を超える場合は検討を


 個人と法人とでは課税所得額に対する税率が違いますので、一つの考え方としてその差額を見て節税となるかを判断することになりますが、課税所得がおおむね1,000万円を超える場合は検討してみるようお勧めします。
 個人業主に対する所得税率は【表1】の通りで、これに住民税(10%)が加算されますので、課税所得が1,000万円の場合の税額は、「課税所得1,000万円×(税率33%+住民税10%*)+復興特別所得税2.1%)-控除153.6万円」で求めることができます(297.4万円)。

*実際には、住民税にはほか一律0.4万円が加算されます。
 これに対し、例えば親族で「不動産所有会社」を設立し、そこに賃貸物件を売却して経営する仕組みとした場合はどうでしょう。賃料収入を給与としてオーナーやその親族に経費として支払うことで、課税所得金額の引き下げを図ります。
 まず、税金面です。法人に対する税率は【表2】の通りで、ほか住民税、事業税などを合わせた実効税率は34.33%*(中小、東京都の場合)となるので、課税所得1000万円の場合の税額は、「課税所得1,000万円×実効税率34.33%-控除96万円」で求めることができます(247.3万円)。
*所得金額400万円以下…21.42%、400~800万円以下…23.20%、800万円超…34.33%。

 単純に税率のみで比較した場合でも、課税所得1,000万円で既に、税額は個人だと297.4万円に対し、法人なら247.3万円となり、法人の税額が個人を下回ります。仮に、法人から給与を支給し、法人の所得を800万円以下に抑えられると、法人の実効税率は下がりますので、税差額はさらに大きくなります。
 会社員として給与も得ながら賃貸経営を手がけているような場合は、不動産所得と給与所得を合計した所得金額に所得税率が適用されますので、節税面から考えれば所得を分散させる法人化が圧倒的に有利ということになります。



ほか、給与所得控除、欠損繰り越し、減価償却などでも有利

 法人化のメリットはほかにも、いろいろあります。給与所得控除を活かせば、事業主を含め1人あたり最低65万円×従業員分を所得(賃料収入)から控除できます。ただし、給与支払い分については、当然に個人所得税や住民税がかかってきます。
 また、欠損金が出たとき、青色申告を適用している中小法人はその全額を9年間(平成29年度以降発生分は10年間)も繰り越せますが、個人の場合は青色申告を適用し、不動産所得の欠損を給与などその他の所得と合算してもなお欠損となるときの繰り越しは3年止まりとなります。
 あと、減価償却面では、個人の場合はその発生額の全額を経費として計上しますが、法人の場合は、利益が多いに越したことはないものの、減価償却費の計上は法人の任意であり、利益調整が可能であることもメリットの一つと言えます。
 一方で、個人保有の不動産を法人に移行する場合、移行段階で不動産に係る様々な税金や費用が発生します。
 主なものとして、個人所有の不動産を個人から法人に売却することによって生じる利益に対する譲渡所得税や不動産の登記変更に係る費用の他、不動産を取得する法人側では不動産取得税もかかります。これらは法人化により発生する追加的コストであり、デメリットの一つと言えます。


法人化の目安、実際には大きなかい離があります

 以上、法人化のメリット・デメリットを紹介してきましたが、法人化を検討するうえで、法人・個人の納税額比較は一つの検討材料ではあります。
 しかし、実際に法人化を実行される場合には、現在の不動産の相場や個人の所得状況や賃料の動向、追加的コストを含めた様々な要因を総合的に検討する必要があります。
 また、法人化に踏み切るのは、「賃料収入が900万円~1,000万円を超えるようなとき」という勧めと、実際には「2,000万円を超えるようになったオーナーが多い」とされる“かい離”は、そうした損得分析に資産、相続など個別事情などによる振れ幅を反映していると見ることができます。






相続税の試算方法

2015.10 

Q 父が亡くなり、母と子ども2人が 相続します。財産は土地・建物で、 評価額は計8,000万円。ほか債務と葬式費用 が1,200万円あります。相続税の試算方法は?

A 相続方法が「法定相続」、このケースでは母が1/2、子どもが1/2(各人1/4ずつ)となる場合について試 算してみましょう。


 試算にあたっては、まず正味財産とも言うべき課税価格総額とその分配(相続割合)を確定します。次に、その課税価格 総額から基礎控除分を除いて課税遺産総額を試算。それを各法定相続人(各人)が法定相続分に従って分配したものとみなして、各人の課税遺産相続総額に応じた税率(「速算表」参照)をかけて各人の相続税額を算出。それらを合計して相続税総額を先に試算します。
 各人が納付すべき相続税額は、実際の分配額(各人課税価格割合)に応じた負担とするため、相続税総額に各人課税価格割合を乗じて各人の相続税額を算出します。そのうえで、実際の納付にあたっては、忘れず特例措置(小規模宅地等、配偶者控除)を検討します。


1 課税価格の試算とその分配

 課税価格を試算して、その分配を決めます。課税価格は相続財産(8,000万円)から、債務と葬式費用(計1,200万円)を除 いた分(6,800万円)となります。
 この課税価格を法定相続にしたがって分配した結果、母〈妻〉が3,800万円、子どもが各1,500万円を取得したケースを想定。




2 課税遺産総額の試算

 相続税の基礎控除(平成27年1月以降)は、次の通りとなっていますので、課税遺産総額はその基礎控除分を除いた分(2,000万円)となります。

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人数

【基礎控除額】
→4,800万円=3,000万円+600万円×3人

【課税遺産相続額=課税価格-基礎控除額】
→2,000万円=6,800万円-4,800万円



3 相続税総額の試算

 課税遺産総額を各人別にして、法定相続分に応じた相続税 額を試算。それを合計して相続税総額を試算します。

【課税遺産総額=母〈妻〉分(1/2)+子分(1/4)+子分(1/4)】
→2,000万円=1,000万円+500万円+500万円

【相続税額=「速算表」を参照して算出。】
→ 母〈妻〉=1,000万円以下…税率10%

 課税遺産1,000万円×税率10%=100万円
→ 子ども=1,000万円以下…税率10%

 課税遺産500万円×税率10%=各50万円
→ よって、相続税総額は200万円(母〈妻〉100万円+子ども50
万円×2人)


4 各人が納付すべき相続税額の試算

 課税価格の合計額に占める各人分の実際の取得割合で按分して、各人が納付すべき相続税総額を算出します。

【各人が納付すべき相続税額=相続税総額×課税価格割合(各人課税価格÷課税価格総額)】
→母〈妻〉 112万円=200万円×(3,800万円÷6,800万円)
→子ども 各44万円=200万円×(1,500万円÷6,800万円)




5 実際に納付する相続税額(特例の活用)

 実際の納付にあたっては、特例措置の適用が受けられるか検討します。このケースの場合は次のようになります(適用を 受けるためには相続税の申告書等の提出が必要です)。

・ 母〈妻〉…配偶者控除が受けられれば、相続税を納付する必要がなくなります。
・ 子どもたち…居住用宅地として特例が適用されれば、土地の課税価格が80%も減額されるので、実際に納付する相続税額は大幅に減少します。



結婚・子育て資金の一括贈与

2015.07 

Q 平成27年度税制改正で創設された、贈与税が非課税となる「結婚・子育て資金の一括贈与」とは、どのような仕組みなのですか?

A 両親や祖父母の資産を、早期に子や孫へと移すことで、子や孫たちの結婚や出産、育児を後押しする狙いから設けられました。

結婚~子育て資金を一括拠出なら1,000万円まで非課税

 仕組みは、親または祖父母等(贈与者)が、金融機関に子や孫等(受贈者)名義の口座などを開設し、結婚・出産・子育て資金を一括拠出(贈与)します。この資金を、子や孫ごとに1,000万円まで(結婚費用は300万円が限度)、贈与税を非課税とするものです。ここで言う金融機関とは、信託銀行、銀行、証券会社で、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの贈与に係る措置です。
 受贈者となる子や孫は、20歳以上50歳未満であることが条件となります。したがって、受贈者が50歳に達する日に口座は終了し、未使用残額がある場合は贈与税が課税されます。
 また、贈与者である親または祖父母が死亡した場合、相続税回避防止の観点から、その時点の残額(管理残額)が相続財産に加算されます。ただし、孫などへの遺贈に係る相続税額の“2割加算”の対象とはなりません。一方、受贈者が死亡した場合は、残額に贈与税は課税されず、受贈者の相続財産と見なされ相続税の対象となります。

必要資金として認められる結婚~子育て費用

 結婚・出産・子育て資金として認められるのは、結婚関連で挙式費用から新居の住居費、引っ越し費用まで、出産関連で不妊治療費、出産費用、産後ケア費用、また子育て関連で子や孫の医療費、保育費(ベビーシッター費を含む)となっています。
 これらの必要な資金に限って払い出されるよう、金融機関が領収書などから該当することをチェックします。

贈与税の考え方と最近の動き

 扶養義務者(三親等内の親族で生計を一にする者)の間で行われる生活費や教育費、結婚費用、出産費用の贈与については、「通常必要と認められる金額」を「その都度」に充てる限り、贈与税の対象とはなりません。しかし例えば、将来必要となる数年分の生活費を一括して贈与し、受贈された子や孫がそれを預貯金にしたり、株式や不動産などを購入した場合には「生活費に充てられなかった」として贈与税の対象になります。
 国は両親や祖父母の資産を早期に子や孫へと移す狙いから、被相続人の死亡にともなう相続税を増税する一方で、生前贈与の緩和を図っています。平成27年度税制改正では「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を創設したほか、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を延長・拡充しました。
 具体的には、①適用期限を平成31年3月31日まで延長する、②支払金額が1万円以下で年中合計額が24万円までなら、金融機関への提出を領収書から明細書に代えることができる、③対象となる教育資金に通学定期券代、留学渡航費などを追加する、といった緩和措置が図られました。この非課税措置は贈与者が直系尊属、受贈者が30歳未満の直系卑属となっており、受贈者が30歳に達した場合、残額は贈与税の対象となります。
 贈与税に関してはほか、消費税再引き上げ(平成29年4月)を見据えた非課税限度額の拡大、適用期間の延長も図られましたが、贈与日、契約日(請負・売買)、引取日、居住日、消費税率によって、非課税適用の可否と非課税限度額が違ってきますので、詳しくは税理士などの専門家に確認するようお勧めします。


平成27年度税制改正

2015.04 

Q 賃貸住宅のオーナーにかかわる税制改正が続いています。
平成27年度税制改正ではどのような見直しがありましたか?

A 我が国の税制は、「社会保障と税の一体改革」「成長と富の創出の好循環化」「震災復興」といった狙いから、改正が相次いでいます。高齢者が保有する資産の若年世代への移行、景気の本格浮揚と復興の後押しに向け、見直しが進められているのです。

<平成25年度> 相続税は対象拡大、贈与税は緩和

 まず、このところの主な動きを振り返っておきましょう。  平成25年度税制改正では、相続税の基礎控除と税率、それに贈与税が見直されました。この中で相続税は、基礎控除がそれまでの「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から「3,000万円+600万円×法定相続人数」へと初めて引き下げられ、納税対象が大きく拡大されました。税率構造も現行の「5段階」から「8段階」へと見直され、2億円超~3億円以下はこれまでの「40%」が「45%」に、6億円超は「50%」が「55%」へと引き上げられました。
 また、贈与税の税率構造(暦年課税)が相続税に合わせて1,000万円超~1,500万円以下は「45%」に、3,000万円超は「55%」にそれぞれ引き下げ・引き上げが行われ、また子や孫などの直系卑属(贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上)に対する贈与については、税率全体が大きく緩和されました。ほか、相続時精算課税制度については、贈与者の年齢を「60歳以上」へと引き下げるとともに、受贈者(20歳以上)に推定相続人のほか「孫」が追加されました。
 高齢者の資産を若年世代に移行させ、経済を活性化させようというわけです。これらの相続税・贈与税の改正・見直しは、いずれも平成27年1月1日以後の相続や贈与から適用されています。また、「教育資金の一括贈与に対する非課税措置」が創設され、子・孫ごとに1,500万円までは相続税が非課税になっています(平成25年4月1日〜平成27年12月31日までの3年間)。

「小規模宅地の相続課税」見直し、二世帯住宅の要件緩和

 平成25年度税制改正ではこのほか、「所得税の最高税率の見直し」(4,000万円超は「45%」に)、「住宅ローン減税の改正」(減税期間の延長、最大控除額の拡充)、「小規模宅地の相続課税計算特例の見直し」(居住用宅地の適用対象面積の上限拡大、居住用・事業用併用時の限度面積の拡大)が行われています。
 居住用宅地については、「二世帯住宅の要件緩和」(建物の構造上内部で行き来できなくても二世帯同居と見なす)や、「被相続人が老人ホームに入所したときの特例適用の緩和」(家屋の敷地は、被相続人が一定の老人ホームに入居し、かつ相続開始の直前に要介護認定を取得する等の要件を満たす場合、被相続人の居住の用に供されていたとする)なども行われているので、税理士など専門家にも相談しつつ節税に努めたいものです。

<平成27年度>贈与税の非課税措置を拡充

 さて、平成27年度税制改正ですが、平成25年度と同様に、高齢者が保有する資産を若年世代に移行する狙いから、さらに贈与を促す改正がありました。この改正は、良質な住宅ストックの形成、消費税増税(平成29年4月から「10%」に引き上げ予定)にともなう駆け込み・反動減に対応するため、贈与日や請負・売買契約日、物件引渡日、居住日などによって適用の可否や非課税限度額が変わるので注意を要します。
 「住宅取得等資金」に対する贈与税の非課税の適用期限を延長したうえで、非課税枠を平成27年分は「1,000万円」、さらに平成28年10月〜平成29年9月には「最大3,000万円」(消費税が10%に増税され、良質住宅の場合)に拡充。また「結婚・子育て資金の一括贈与」に対する非課税措置が創設され、平成27年4月以降、直系尊属が子や孫等の直系卑属(20歳以上50歳未満)の子育て資金として金融機関等に信託したときは受贈者1人につき1,000万円、結婚費用として贈ったときは300万円が非課税となります。

空き家敷地への固定資産税等の特例措置を除外

 こうした一方で、空家等対策推進特措法で市町村長が改善を勧告した空き家(特定空家等)は、その敷地が固定資産税等の特例措置の適用対象から除外されました。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)はこれまで課税標準額を1/6、一般住宅用地(200㎡を超える部分)は1/3に減額できましたが、特定空き家等に該当した場合、減額前の課税標準額に税率1.4%(標準税率)が適用されることになります。


*この記事は、平成27年1月14日に閣議決定された「平成27年度税制改正大綱」をもとに作成してあります。



相続税の納付期限

2015.01 

Q 父が亡くなった後、相続について兄妹で もめてしまい、期限までに相続税を納め られそうにありません。どうすればいいでしょうか?
平成27年度税制改正ではどのような見直しがありましたか?

A 相続税の申告と納税の期限は、相続開始を知った日、つまりお父様が亡くなった日の翌日から10カ月以内となっています。

 申告期限を過ぎてから申告書を提出した場合には、無申告加算税として、納付すべき税額に15%(5%)の割合を乗じて計算した金額が課せられます。さらに、法定納期限の翌日からその税金を完納する日までの期間の日数に応じ、延滞税もかかります。ほか、相続に際してのさまざまな控除を受けられなくなるなどのペナルティーもあります。
 ですから、ここはいったん休戦して、相続する財産が未確定(財産未分割)であっても、未分割として期限内に申告するようにし、納税が困難な場合には延納申請等も同時に行っておきます。そして、できるだけ早い時期に財産分けの話し合い(分割協議)を決着させ、修正申告等を行うようにします。
 もめることで損をする金額を税理士などの専門家に算出してもらい、それを当事者に示せば、決着は案外早いかもしれません。

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出典:平成26年版「図解相続税・贈与税」(一般社団法人大蔵財務協会、中村淳一編)をもとに、一部略記。


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