ポケット倶楽部
最新号 2024.7.25発行

特集
もしも認知症になったら

後悔しないためのオーナーのリスク対策

もしも認知症になったら  2040年には584万人が認知症になるという推計が厚生労働省から発表になりました。オーナーが認知症になると、賃貸住宅経営がストップするだけでなく、家族や入居者に甚大な影響が及んでしまいます。避けて通れない認知症発症というリスク。自分に限っては大丈夫ということはありません。その対策についてしっかり知っておきましょう。

POINT 認知症対策を取ることは円滑な相続や事業承継につながる

  • 成年後見制度や家族信託の仕組みについて知り、万が一に備える
  • “争族”になる前に、家族でしっかりと話し合う機会を持つこと

避けて通れない認知症発症というリスク

 今年5月、2040年には65歳以上の高齢者のうち584万人(14.9 %)、60年には645万人(17.7 %)が認知症になるという推計が厚生労働省から公表されました。その前段階の「軽度認知障害」は40 年に612万人(15.6%)、60年では632万人(17.4%)と推計され、認知症の人と合わせるとおよそ3人に1人が認知機能に関わる症状があることになります。賃貸住宅のオーナーにとっても、認知症はとても身近な病気であり、もはや避けては通れないリスクなのです。
 認知症と診断されると「意志能力」がないと判断され、社会行為、法律行為ができなくなります。「意思能力」とは、法律上の判断において、自己の行為の法的結果を認識・判断できる能力のこと。つまり、認知症になるとあらゆる契約行為ができなくなってしまうのです。2017年の改正民法で「重度の認知症など、意志能力がない状態で行った契約は無効である」と明記されたからです。

One Point Interview
相続家族会議を旅先で!
非日常空間で資産承継について
家族と想いを共有する

 相続について親子間で話をするのは、日常生活ではなかなか難しいのではないでしょうか。「親世帯・子世帯と、資産承継について非日常空間の旅先で、話すきっかけを設けてはどうか」と提案をしているコンサルタント堀口知宏氏に伺いました。

みなと相続コンサルタンツ
代表
堀口 知宏

堀口知宏氏

日常から離れ非日常の機会に
家族間のコミュニケーションを深める

―― 堀口さんが提案している「家族旅行で、相続について話す機会を設ける」というのは、どんな旅行なのでしょうか。

堀口 旅行先は日本人に人気のハワイもよいのですが、近郊の温泉地でちょっと高級な旅館で家族でゆっくり過ごすのもよいですね。旅行中のワンシーンの「家族会議」で、相続をテーマに主人公である親御さんから資産を承継する子どもたちに「現状と未来の相続をどのように考えているか」をお伝えするきっかけづくりを組み込んだ旅行です。
 相続について関係者が話し合う機会を持つというのは、日常生活ではなかなか難しいものです。必要性はわかるけれど、そのために改まって集まるというのも何だし……という方も少なくないようです。それならば、スペシャルイベントを企画して、そのついでに話し合うというプランです。
 親御さんと子ども、(できればきょうだい全員とその配偶者)が一堂に会する機会というのはなかなかありません。お子さんもお孫さんも一緒にとなると、かなりの人数です。実家に集まる日常とは異なる空間へ、みんなで旅行に行きましょう、ということですね。

街と賃貸住宅
古代出雲文化発祥の地 情緒あふれる水の都 松江市(島根県)

 島根県の出雲地方に位置し、山陰最大の人口を擁する松江市は、松江城を囲む堀川、斐伊川水系の宍道湖、大橋川、中海、そして日本海と、豊かな水辺の景観に恵まれていることから“水の都”と呼ばれています。名産であるシジミの漁獲量は島根県が日本一で、宍道湖で行われるシジミ漁は松江の代表的な風景です。

夕暮れに染まる岐阜市街地
▲ 松江城の天守閣から見た松江市。

どんな街?

 松江市は古代出雲の中心地として栄え、奈良時代には国庁や国分寺が置かれた重要な地域でした。1611年に堀尾吉晴が亀田山に城を築き、この地を白潟・末次の二郷をあわせて松江と称するようになります。江戸時代には堀尾氏3代、京極氏1代、松平氏10代の城下町として発展していきます。
 1871年の廃藩置県によって県庁が置かれ、1889年に全国の30市とともに市制を施行。その後9回にわたり周辺の村を合併し、2005年には八束郡7町村、2011年には八束郡東出雲町と合併し、現在の松江市の姿となります。1951年には国際文化観光都市に、1995年には地方拠点都市地域に指定されました。
 文豪・小泉八雲が愛した地としても有名で、名前の由来は出雲国にかかる枕詞「八雲立つ」にちなんでいます。また“不昧(ふまい)”の号で知られる松江藩松平家7代藩主・松平治郷が茶道「不昧流」を大成させたことで、茶の湯文化が浸透しています。

不動産のプロが教える賃貸住宅オーナー講座
うちの物件、何で勝負する?
実効賃料を踏まえた判断を

 「実効賃料」とは、空室による損失やフリーレント分などを差し引いて、実際に回収した家賃収入のことをいいます。今回は、この実効賃料の考え方をもとに、さまざまなパターンで、皆さんの物件が何で勝負すべきかのヒントを考えてみましょう。

実効賃料を3つのパターンで考えてみよう

 家賃60,000円、平均入居月数28カ月と想定して、3つのパターンから実効賃料を考えてみましょう。

基本パターン

 28カ月は家賃が入る期間です。しかし6カ月の空室があり、実際には34カ月。そうなると、実効家賃は以下の計算になります。

28カ月÷34カ月×60,000円=49,200円

 同じ計算で、空室が3カ月だったら54,000円、空室が1カ月だったら58,200円の実効賃料になります。こうして数字で見てみると、「空室をなくすことが何よりも大事」ということがよくわかりますね。………本文の続きを読む

アパート・マンションオーナーのための防災対策
賃貸住宅と保険

 火災も賃貸経営のリスクの一つ。失火責任法という法律で、重大な過失がない火災においては損害賠償請求ができないことになっています。ですから、「もらい火」で火災になっても大丈夫なように火災保険に加入する必要があります。

※ここでの「所有物件」は主に木造等の低層集合住宅、「オーナー自宅」は戸建住宅を想定しています。

所有物件 災害等に備えて加入しておく火災保険+地震保険

火災保険は加入必須

火災保険に入りましょう

※ 画像をクリックすると、
「火災保険に入りましょう」ポスターを
ダウンロードできます。

 アパートの建築にあたってローンを利用した場合は、住宅用火災保険への加入が必須条件となります。賃貸住宅向けの保険は「火災保険」と、それとのセットで入る「地震保険」を基本に、「施設賠償責任保険/賃貸建物所有者賠償特約」、「家賃補償利益保険/家賃収入補償特約」など、想定されるリスクに対応する「特約」をどう組み合わせるかが、損害保険を選ぶ大きなポイントになります。
 また、保険は現在の物件価値ではなく、復旧・再築に必要な金額「再調達価額」を基準に保険金額が決められ、保険料は地域や建物構造などによっても異なります。………本文の続きを読む

賃貸経営と法律
法律相談などで任せられる弁護士を見つける

弁護士に頼むことと頼み方

弁護士以外はできないことがある

 賃貸経営と法律について、読者から「難しいことは弁護士に相談するので、弁護士への相談の仕方を教えて」とのご要望がありました。そこで今回は、弁護士にはどんなことを、どんなふうに頼めばいいのかを整理してみました。
 まず、弁護士にどんなことを頼むのか。もちろん困ったことを相談するわけですが、相談する相手として「弁護士でなければならないこと」があります。一つは、裁判をするとき。裁判の代理人は弁護士であることが原則です。裁判ではなく調停でも、代理人は原則として弁護士が務めます。………本文の続きを読む

賃貸経営と税金
不動産を売るときの税金対策(1)

事業用資産の買換特例

課税の繰り延べ制度

 不動産を売却して譲渡益が生じると譲渡所得税や住民税を納めなければならないことは前号で解説しました。この解説の中で、税理士から「土地建物等の不動産譲渡所得には多くの特例制度が規定されており、適用できれば売却による税金負担を抑えることができます」というアドバイスがありました。今回はその特例の一つ「事業用資産の買換特例」を紹介しましょう。………本文の続きを読む

データで探る賃貸住宅トレンド
新制度もスタート 関心高まるZEH賃貸

 2024年4月から新築住宅の「省エネ性能表示制度」がスタート! 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、今後も住宅の省エネ対策の義務付け・段階的な基準引き上げが予定されています。賃貸市場でも「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」や「省エネ住宅」の普及が進む中、賃貸入居者の関心やニーズはどのように変化しているのでしょうか?

引用/リクルート2023年9月26日付プレスリリース「2024年4月より新築住宅の省エネ性能表示を開始」

今後の省エネ住宅の主流となる「ZEH」とは

 ZEH(ゼッチ)は「高断熱・省エネ・創エネ」により、年間の消費エネルギーを実質的にゼロ以下にする住宅です。
 現行の省エネ基準より消費エネルギーを2割削減可能で、政府は2030年度以降の新築住宅のZEH基準を目指し、取り組みを強化しています。
 高断熱・高気密のZEHは「快適性向上」や「光熱費削減」など、………本文の続きを読む

新米大家さんとベテラン大家さん
洗面・トイレ・バス一体3点ユニットは
昔は大人気だった

バブル期の狭い投資用マンションで増える

新米
洗面・トイレ・バス一体の3点ユニットの物件の空室がぜんぜんうまりません。
大屋
バス・トイレ別は必須という人は多い。もともと古い物件に多い3点ユニットは、若者の不人気第1位だ。
新米
うちのも築30年超。親父はなんで3点ユニットにしたんだろう。
大屋
バス・トイレ別よりも水回りスペースがコンパクトになるし、タイルを1枚ずつ貼って造る在来工法の浴室と比べて短時間施工が可能で、その分工賃も安い。それに階下への水漏れのリスクも少ない。………本文の続きを読む

お江戸の賃貸住宅事情
江戸の神様

 江戸の長屋を持つ地主は、その土地ごとに稲荷神社を建て、地域に災いが起きないように祈念しました。だから江戸の町は、そこら中に稲荷神社があったのです。

江戸庶民の信仰

 疫病や火災などを防ぐ手立てがほとんどなかった江戸の庶民は、こうした災いが起らぬよう、起きてしまったら早く収まるよう、ひたすら神様仏様を拝みました。拝む神様はさまざまで、一時的に信仰を集め、そして急速に衰退する「流行神(はやりがみ)」も少なくありませんでした。………本文の続きを読む

ポケにゃんの暮らしのエボリューション!
帽子の進化

 日差しを避けたり、寒さや暑さをしのいだり、頭部を守ったりする実用的な使い方だけでなく、ファッションとしても重要な役割を果たす帽子。どのような進化を遂げて、現代の姿になったのでしょうか?

鎌倉時代は帽子がないと恥!?

 にゃ。帽子といってもその定義はさまざまで、歴史をたどっても、ターバンや兜は帽子に含まれるのか……等々、実に悩ましいところです。「頭に載せるもの」としての歴史は紀元前3000年の古代エジプトまで遡ります。いままでこのコーナーでは、さまざまなものの進化と歴史をお伝えしてきましたが、大体のものの起源は古代エジプト。すごい、古代エジプト。………本文の続きを読む