ポケット倶楽部
最新号 2025.04.25発行

特集
空き巣や強盗に狙われないために

賃貸住宅の防犯最新事情

 昨今、凶悪化した侵入犯罪が相次いで発生しています。一般住宅も多く被害に遭っており、金品のみならず人命が奪われる事態にまで発展しています。物騒な世の中、賃貸住宅のオーナーはどのような対策を取ったらいいのでしょうか。侵入犯罪の手口について知り、防犯に効果的な建物部品を設置するハード面、入居者の意識を高めていくソフト面、両面から考えていきましょう。

空き巣や強盗に狙われないために

POINT 建物部品の設置(ハード面)と入居者対策(ソフト面)、両面から対策スタート

  • S効果的な建物部品の設置で防犯力をアップ。物件の付加価値を向上させる
  • 入居者の防犯意識を高め、犯罪を寄せ付けないコミュニティをつくる

事情1 侵入強盗など手口が巧妙化・凶悪化する犯罪が増えている

 ニュースなどでたびたび報じられていますが、一般住宅を狙った「侵入犯罪」は、近年手口が巧妙になり、凶悪化しています。周囲に気付かれないようひっそりと侵入するのではなく、複数人で窓などを破壊。住人の在宅の有無にかかわらず住宅に押し入る、宅配業者や点検業者を装って住宅に侵入し、金品を奪い取るといった悪質なものが増えています。
 警察庁「住まいる防犯110番」によると、空き巣など「住宅を対象とした侵入窃盗」は2004年以降連続して減少していましたが、2023年は1万7,469件で前年比+11.3%と増加。また、凶器などで住人を脅し金品を強奪する「住宅を対象とした侵入強盗」に関しては、2005年から概ね減少傾向にありましたが、2023年は152件と2年連読で増加(前年比+17.8%)しています。手口の巧妙化・凶悪化がさらに進んでいることから、これまでの防犯対策をより一層強化していくことが必要となっています。

One Point Interview
インバウンド需要で稼働も安定
民泊で空き家の再活用を

 2024年4月に公開された総務省の調査では、全国の住宅総戸数6,502万戸のうち900万戸、つまり13.8%が空き家となっているという結果でした。これは1年以上誰も住んでいない家の数で、家主が介護施設に入ってしまい実際には誰も住んでいない家や別荘などは含んでいません。こうした隠れた空き家を入れると相当数になります。増え続ける空き家を再活用するために、民泊経営を提案している川久保氏にお話を伺いました。

一般社団法人空家空室対策推進協会
代表理事
川久保 文佳

川久保文佳氏

そのままの状態で稼いでもらう

―― 空き家対策として民泊に着眼した理由から教えてください。

川久保 私が北海道出身だったことが大きいと思います。北海道の実家に帰るたびに商店が閉まっていたり、交通の便が悪くなっていたりすることを実感していたからです。そんななか、仕事で海外に行くことも多く、そこで民泊と出合い、民泊が空き家問題解決の一つの手段になるんじゃないかと思ったからです。
 その後、日本でも2018年民泊新法が制定されました。しかし、導入直後は、外国人旅行者はゴミの分別ができない、家を散らかす、騒音問題など、民泊のイメージは悪いものでした。そこでこの悪いイメージを払拭しようと、民泊のムック本の出版をしたりしました。
 なぜ民泊が有効なのかというと、民泊はとにかく空き家を現状維持のまま始めることができ、いつでもやめることができるからということ。さらにやめたあとは他にも転用できるということがあります。
 つまり、使っていない家をいったん、民泊として使用し、民泊をやめて賃貸住宅として貸すこともできますし、家付きの不動産として売却することもできます。空き家のまま放置しているのであれば、その間は「家を民泊として活用してお金を稼いでもらってはどうか」ということです。

街と賃貸住宅
肥沃な川の恵みが生み出す “阿波藍” の地  徳島市(徳島県)

 400年超の歴史を持つ阿波おどりの名のとおり、古くは“阿波”と呼ばれていた徳島。県の東部に位置する徳島市は、吉野川河口の三角州上に発達してきた都市です。中央にはシンボル的存在として親しまれている風光明媚な眉山がそびえます。また阿波おどり、人形浄瑠璃、阿波藍、すだちなど、徳島の風土と歴史が育んだ個性的な文化を有します。

眉山から見た徳島市街地
▲ 眉山から見た徳島市街地

どんな街?

 1585年、豊臣秀吉から現在の徳島市である阿波国の統治を任された蜂須賀正勝に代わり、子の家政が徳島藩祖となりました。現在の徳島中央公園の地に城を築いたのが徳島のはじまりです。縁起のよい「徳」の字と、川に囲まれた土地の形状から「島」で、徳島と名づけられました。
 それより以前、戦国時代末期まで守護細川氏、守護代三好氏の城館があった勝瑞(現・藍住町)が政治・経済の中心でしたが、江戸時代には徳島の城下町に移っていきます。
 室町時代から阿波国の特産品であった藍は、江戸時代に入ってからも徳島藩によって生産・保護がなされ、日本最大の藍作地帯として知られるようになります。それにより、1889年の市制施行で徳島市が成立するころには、全国10位の人口を擁していたほど。明治時代後半には、合成染料の発達等により急速に衰えた藍産業ですが、現在も伝統産業や観光産業として息づいています。

不動産のプロが教える賃貸住宅オーナー講座
数値を把握して、所有物件の経営力を見る

 皆さんは、ご自身の物件の経営力を毎年評価していますか? そのためには、賃貸物件を経営するにあたって欠かせない数値をしっかりと捉えておくことが重要です。最終回となる今回は、物件の評価方法についてご説明します。大切なのは、NOI率をきちんと把握することです。ぜひご自身の物件で計算してみてください。

NOI利回りを把握しよう

 さっそくですが、右表のキャッシュフローツリーをご覧ください。一番上の総潜在収入(GPI)は物件が1日も、1部屋も空くことなく100%稼働した場合の賃料です。そこから、それぞれの項目に数字を入れてプラス、マイナスしていきます。これによって導き出される営業純利益(NOI)が、商売でいうところの粗利となります。
 次に、保有している不動産の利回りを確認しましょう。表面利回りはGPI、つまり100%稼働している場合で計算したものですから、実際の利回り(NOI利回り)をきちんと計算します。そして、この数値の限界値を決め、目標を持っておくこと………本文の続きを読む

アパート・マンションオーナーのための防災対策
賃貸住宅と防火対策

 住宅火災の原因は①コンロの消し忘れや天ぷら油の着火 ②たばこの不始末や寝たばこ ③電気機器の故障や過熱 ④配線系の老朽化やたこ足配線 ⑤暖房器具の不適切な使用や近くに可燃物があること ⑥意図的な放火やいたずら などで、住んでいる人の責によるものとそうでないものがあります。賃貸住宅の場合、それに加えて「建物所有者」=オーナーの責になりかねないものもあるので注意しましょう。

所有物件 入居者への防火意識啓発と保険加入の徹底

入居者の防火意識を高めよう

 火災などの災害によって家電や家具など入居者の所有物に損害があった場合に入居者自身が補償を受けることができる家財保険は、本人の失火による損害の賠償も補償することも含めて理解を得て、加入を徹底しましょう。
 また共用部に防火意識啓発のポスターを貼るなどして、日常的に防火の意識を持ってもらいましょう。共用部や居住部以外にモノを置くことは避難の妨げになり、また放火を誘発しかねません。管理を徹底しモノの放置を防ぎましょう。………本文の続きを読む

「気をつけて! そのうっかりが火事のもと」ポスター

※ 画像をクリックすると、
「気をつけて! そのうっかりが火事のもと」ポスターをダウンロードできます。

賃貸経営と法律
根保証契約は「極度額」の定めが必須

賃貸の保証人と保証範囲、支払い責任はいくらまで?

根保証と極度額

 よく「借金の保証人にはなるな」と言われますが、賃貸契約でも「保証人」になることがあります。保証とは、主債務者が債務の支払いをしない場合に、これに代わって支払いをすべき義務のことです。ですから、借金の保証人は、借りた人が返せなければ代わりに返す人、家賃の保証人は、入居者が家賃を払えなければ代わりに払う人、ということになります。ただし、借金の保証人と家賃の保証人では、その責任範囲が少し違います。
 そもそも保証には、通常の保証のほかに根保証というものがあります。通常は契約時に特定している債務の………本文の続きを読む

賃貸経営と税金
アパートを引き継ぐときの税金(2)

生前贈与で発生する税金

 親が経営していた賃貸物件を引き継ぐ場合、親が死亡した場合の相続と生前贈与の2 つがあります。相続では相続税、生前贈与では贈与税が発生します。今回は生前贈与についてまとめてみました。

「贈与財産の価額」から「基礎控除額(110万円)」を差し引く

 アパートを相続以外で所有者から引き継いだ場合は「贈与税」がかかります。アパートの評価額=「贈与財産の価額」から「基礎控除額(110万円)」を差し引いて計算しますが、税率は「一般税率」と「特例税率」があり、贈与者と受贈者の関係性によってどちらを適用するのかが決まります。………本文の続きを読む

データで探る賃貸住宅トレンド
「一人あたりの老後資金」理想と現実

 誰にでも多かれ少なかれ「老後の不安」はあるものです。また、年齢を重ねると、若い頃には思いつかなかった「先々への不安」も出てきます。ところで、住まいが持ち家か賃貸かで「老後の不安」は異なるものなのでしょうか。そんな調査の結果をご紹介します。

引用/And Do ホールディングス 第3回老後の住まいとお金に関する調査 ※ 2つのグラフはAnd Do ホールディングス2025年1月 20日付プレスリリースより作成

賃貸層の85.8%が老後に不安を感じている

 「あなたの老後について、不安に感じる(感じた)ことはありますか?」の問いに対して、持ち家層で「不安を感じる」「少し不安を感じる」の回答の合計は79.2%。一方、賃貸層の回答では同合計が85.8%でした。
 持ち家層も賃貸層も老後への不安を感じているものの、賃貸層の55.0%が「不安を感じる」と回答………本文の続きを読む

新米大家さんとベテラン大家さん
「一人暮らし」=「下宿する」!? 賄い付きへの期待、今・昔

下宿と賃貸は違う

新米
地方の親戚の子どもが大学に入り、どこかいい下宿先はないかと探しています。うちのアパートでもいいのだけど、大学から少し遠いし。
大屋
下宿先とアパートは違う。下宿屋に入るのか、アパートに住むのか。
新米
もちろんアパートですよ。「一人暮らし」をすることを「下宿する」って言うじゃありませんか。
大屋
昔はほとんど一緒だったからそう言ったが、今は違う。というか、下宿屋も下宿する学生も少なくなったから、ここは厳密に分けねばならない。
新米
誰が厳密にしろと言っているんですか。
大屋
私だ。………本文の続きを読む

お江戸の賃貸住宅事情
江戸の泥棒

 江戸時代は「天下泰平」と言われますが、もちろん犯罪はありました。地方では盗賊が横行し、地方から人口が流入した江戸は、犯罪も多数入り込みました。今回は、江戸の泥棒についてのお話です。

泥棒だけどヒーロー

 江戸時代の泥棒として有名なのは日本左衛門(1719年〜1747年)。尾張藩の飛脚のような仕事をする七里役の子として生まれ放蕩して浪人。やがて200名ほどの盗賊団の頭目となって東海道沿いの諸国を荒らしまわりました。「悪事はすれども非道はせず」、長身色白の美男子で顔に5cmほどもある切り傷があったということで、歌舞伎の「白波五人男」の一人・日本駄右衛門のモデル………本文の続きを読む

ポケにゃんの暮らしのエボリューション!
ぬいぐるみの進化

 思わずぎゅっと抱きしめたくなる、かわいくて柔らかなぬいぐるみ。ぬいぐるみは、字のごとく布やフェルトなど柔らかい素材を縫い合わせ、中に綿などを詰めて包んだ玩具をいいます。

世界初のぬいぐるみはゾウ

 にゃ。多くは人型で、硬い素材でつくられた人形ははるか昔より存在していましたが、動物などを模した柔らかな愛玩用のぬいぐるみの歴史は意外と浅く、世界で初めて発売されたのは1880年のドイツでのことです。子どものころから手芸の才能があったマルガレーテ・シュタイフは、姉妹と営む洋裁店で、フェルト製の小さなゾウ………本文の続きを読む