ポケット倶楽部
最新号 2025.01.25発行
特集
Z世代に部屋を貸すには
新入居者に寄り添う空室対策のヒント
いつの時代も、単身者は賃貸住宅の大きなターゲットです。進学や就職、転勤など、若い世代のライフイベントで、新居として選ばれるためには、彼らの考え方や志向を理解しておかなければなりません。今回は「Z 世代」と呼ばれる新入居者のライフスタイルと賃貸住宅市場における新サービスのトレンドについて見ていきましょう。

※掲載のグラフはハウスコムのプレスリリースより作成
POINT 新入居者のライフスタイルを読み解き、空室対策のヒントにする
- SNSを駆使するZ世代。部屋選びは動画を参考に する傾向
- 賃貸住宅市場にもサブスクサービス導入
SNSを駆使し、リアルな情報を求める「Z世代」
デジタルネイティブ世代による動画を活用した部屋選び
「Z世代」とは1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指すことが多いようです。つまり、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブとしては最初の世代です。テレビを見ない若者が増えたとはよく言われますが、ネット上で必要な情報は入手でき、YouTubeやInstagramなどのSNSが最も中心的な情報源となっている彼らにとってはテレビや新聞などのメディアは必要ないのです。スマートフォンを日常的に使いこなす「スマホ世代」であり、パソコンさえ必要ないのかもしれません。
そんなZ世代はどんな部屋選びをしているのでしょうか? 賃貸仲介会社のハウスコムは、Z世代の男女のうち1年以内(2022年4月以降)に賃貸物件に引っ越しをした、または今後1年以内(2024年4月まで)に引っ越し予定の人 587人にネットアンケート『2023年度“部屋選び”に関する調査』を実施。SNSを駆使し、自分のライフスタイルに合う部屋を探す彼らの様子が見えてきました。
One Point Interview
猫可ではなく猫付きマンション
ペット可賃貸は社会貢献
「猫可」ではなく、猫がいるマンションに人が入居する「猫付きマンション」をご存知でしょうか。賃 貸入居者の多くが契約に反してこっそり猫を飼い、転居やその他の事情で猫を捨てる人もいます。捨て 猫、野良猫の保護を行っている山本氏は、こうした状況を改善する一助として「猫付きマンション」「猫 付きシェアハウス」を展開しています。
NPO法人東京キャットガーディアン
代表 山本 葉子 氏

保護猫活動を維持する
さまざまな事業の中から生まれる
―― 「猫付きマンション」はどのようなことから始まったので
すか。
山本 私たち東京キャットガーディアンは、猫の保護と譲渡、
過剰繁殖を防ぐ手術を行っている病院を運営しています。猫を保護しケアをして、譲渡するという活動には多くのお金がかかり、行政からは補助が出ませんので、事業体の形態をとって運営をしています。NPO法人は、ミッションや目的のために事業活動してよいということになっているので、猫の保護に近い事業をいろいろ立ち上げています。
メインは猫の譲渡事業で、保護猫の里親になっていただく方には、審査を行い適正な飼育者のみに譲渡します。譲渡にあたり、それまでその猫の世話にかかった費用の実費以下の金額を申し受けるかたちで有償譲渡します。この収入だけでは運営できないので、里親になった方たちが必要とするものを販売したり、リサイクルショップやペット保険の代理店を運営したりさまざまな事業を展開。事業の一つに、「しっぽ不動産」があります。最初は、不動産会社として立ち上げたのですが、保護団体が不動産事業を行っていくのは難しく、現状はペット可の賃貸住宅の情報を集めたポータルサイトとして運営しています。その中にあるのが、「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」です。
保護団体にとって一番怖いのは、保護した猫が里親に引き取られず、たくさん施設に溜まってしまうことです。そうなると次の猫たちを助けられなくなります。とはいっても、適正でない方にお渡しすることはできません。譲渡できる猫をどう増やすか、引き取り手が少ない成猫(大人の猫)の居場所を、費用がかからず家庭での飼育に近い環境で用意できないかと、スタッフや支援者たちと試行錯誤していました。そのような活動の中で、あるマンションのオーナーに相談したところ、ご理解をいただき、東京・文京区の20戸ほどのマンションで始まったのが「猫付きマンション」でした。
街と賃貸住宅
山の恵みと四季の彩りに包まれた街 山形市(山形県)
「山形」の由来は、今の山形市の南側を「山方郷」と呼んでいたからだといわれています。その名のとおり、四方を山で囲まれ、一年中美しい景色を堪能できるスポットがたくさんある山形市。樹氷と温泉で名高い「蔵王温泉」、松尾芭蕉ゆかりの「山寺」など多くの観光地を有するほか、「芋煮」をはじめとする山の恵みを存分に味わえる郷土料理が多く伝わっています。

どんな街?
山形市のある地域は、平安時代の末ごろにはすでに出羽路の主要な宿駅の一つでした。1356年、斯波兼頼がこの地に城を築き、神社仏閣を修復整備して城下町を整えたことで、政治文化の中心として発展していきました。
江戸時代には商業が発達し、なかでも染料や口紅の原料である紅花は全国随一の生産を誇り、関東・関西にも移出されていました。
また、衣服の原料となる青苧(あおそ)の生産や鋳物の製造なども盛んで、これらの物産の交流によって最上川舟運が発達し、上方文化の導入にもつながっていきます。さらには東の蔵王、西の出羽三山の参拝のための拠点としてもにぎわいを見せていました。
明治の世となり、1889年の市制施行に伴い、南村山郡山形城下31町の区域をもって山形市が発足。その後、近隣町村の編入や境界変更を繰り返し、2001年に特例市、2019年に中核市へと移行。現在の山形市の姿となっていきます。
不動産のプロが教える賃貸住宅オーナー講座
目的からそれた契約に注意!
前回、サブリース契約の仕組みと落とし穴についてご説明しました。落とし穴に落ちないためには、ご自身がどんな目的でアパート・マンションを経営しているのか、そこからそれないことです。今回は、サブリース契約でどんな問題が起きているのか、その事例をご紹介しましょう。
どんな目的で経営している?
サブリース契約で発生しがちな問題の1つ目は、オーナーさんの目的にそった提案がされていないということです。アパート・マンションを経営する目的は、収益、相続対策、遊休地活用といったことがありますよね。しかし空室リスクがありますから、リスクヘッジのためにサブリース契約を結ぼうと考えるオーナーさんもいらっしゃるでしょう。
そこでサブリース契約を結んだ管理会社やハウスメーカー等からよく提案されるのは「一括借り上げだから安心ですよ」「相続税対策・税金対策になりますよ」といったこと。でも、これらは本当なのでしょうか? 結果として、賃料減額や高額な修繕費があり、まったく収益が上がらない状態になってしまったということがあります。
また相続対策のためだったはずなのに、実際の相続時にはメンテナンスや維持にお金がかかる物件になってしまっていたり、借り上げ賃料がガクッと下がってしまっていたりといったことも………本文の続きを読む
アパート・マンションオーナーのための防災対策
賃貸住宅と雪害
雪による災害というとまず思い浮かぶのが雪崩ですが、その多くは山間部で発生します。都市部での災害は、積雪による交通マヒでの緊急車両走行困難、架線落下などでの停電が挙げられます。さらに重大なのは除雪中の事故です。また、ふだん積雪がほとんどない地域は、雪に不慣れなため、別の注意が必要です。
所有物件 積雪情報に注意して雪害対策を
雪害対策はオーナー側の責任
積雪による除雪や凍結などの対策はオーナー側の責任と考えましょう。除雪などを自身の責任範囲と考える入居者はまれです。降雪・積雪情報に注意し、管理会社とも連携し物件の雪害が生じないように対応策をとっておきましょう。豪雪地帯では除雪の計画化と実施状況の把握、雪庇対策や積雪時の通路の安全確保など物件と周囲の安全確認を行います。
また、点検や改善は記録に残し、万一入居者が雪が原因の事故に遭った場合も、オーナーとしての維持管理責任が問われないようにしておきましょう。
雪害対策は事故防止だけでなく、物件の耐久性を保つ面からも大切です。さらに、降雪・積雪時の注意事項や雪害事故防止策のポスターを掲示するなど、………本文の続きを読む
賃貸経営と法律
請求額の上限がない支払督促
書類審査のみ、60万円以上の家賃回収に利用できる
裁判の半分の手数料
前号で、少額の請求を簡単な手続きで解決できる少額訴訟について解説しました。メリットが多い少額訴訟ですが、請求額は60万円が限度です。5万円の家賃を1年間滞納されるとこの上限金額に達してしまいます。60万円以上の回収を目的とする、通常の裁判(訴訟)以外の手段としては、支払督促という手続きがあります。
この手続きは、金銭の支払いや有価証券などの引き渡しを求める場合に限られ、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てを行います。書類審査のみなので、………本文の続きを読む
賃貸経営と税金
アパートを引き継ぐときの税金(1)
相続で発生する税金
親が経営していた賃貸物件を引き継ぐ場合、親が死亡した場合の相続と生前贈与の2つがあります。相 続では相続税、生前贈与では贈与税が発生します。今回はまず、相続で発生する税金について整理しました。
アパートを含めた「正味の遺産総額」から「基礎控除額」を差し引く
アパートを相続で引き継いだ場合の「相続税」は、アパートを含めた「正味の遺産総額」から「基礎控除額」を差し引いた後の価額が課税対象です。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で計算しますので、正味の遺産総額が基礎控除額よりも少なければ相続税はかかりません。………本文の続きを読む
データで探る賃貸住宅トレンド
注目トレンド「ふたり暮らし」を探る
ライフスタイルの変化で、賃貸住宅のトレンドも変わってきています。近年ニーズが高まっているのが「ふたり暮らし」の物件。賃貸情報サイトでも特集ページが常設されるなど、「単身者」「ファミリー層」に並ぶ、見逃せないターゲットに。ふたり暮らしのパターンは様々ですが、今回は増加する「同棲カップル」の住まい探しに注目し、賃貸経営のヒントを探ります。
引用/アットホーム「同棲カップルの住まい探しに関する調査」
同棲→結婚が新常識?! 理想は2LDK、現実は1LDK
同棲する若いカップルが増えています。結婚情報誌ゼクシィの2022年の調査によると、結婚前の同棲は62.3%、期間は半年以上が約6割を占め、住まいは58.3%が新居でした。同棲期間をしっかり取りお互いのことを知ってから結婚したいという意向が強く、どちらかの家に移り住むのではなく、新居を探して新生活を始めるカップルが多いことが分かりました。………本文の続きを読む
新米大家さんとベテラン大家さん
一戸建て持ち家がゴールだった時代の住宅双六(すごろく)
「生涯賃貸」派が増えている!?
- 新米
- 同窓会で会った友人は、家を買う気はないと言っていました。一生賃貸でいいと。それならうちのアパートに入ってくれ。一生住む入居者は歓迎だと言ったら、同じところに住みたくないから賃貸なんだと言われてしまいました。
- 大屋
- ライフスタイルに合わせた住み替えをしたいという人は増えている。だが、そのために毎回家を買い替えるというのは、今の日本では住宅ローンの縛りもあってハードルが高い。
- 新米
- 一生賃貸暮らしという人は、これから増えるんですかね。
- 大屋
- 持ち家率6割、 借家率4割という比率は、ここ40年間変わっていない。以前から一定数は賃貸ということなのだが、………本文の続きを読む
お江戸の賃貸住宅事情
江戸の雪
東京は少し雪が積もっただけでも交通網がマヒし、生活に支障を来たします。江戸の町も同様で、雪で庶民の商売ができなくなったり、大名の行列が混乱したりしました。
文化・文政の大雪
19世紀の初頭、文化・文政期(1804年~1830年)の江戸は大雪の日が多かったようです。文政5年(1822年)は元旦に大雪が降り、江戸城の将軍を訪問する大名や旗本で城外、城内が大混乱したとか、翌文政6年12月には、積雪一尺(約30㎝)を越す大雪があったという記録があります。滝沢馬琴の文政10年(1827年)1月の日記にも、「風の吹まはしによりて深さ二三尺に至る」と、………本文の続きを読む
ポケにゃんの暮らしのエボリューション!
靴下の進化
寒さや衝撃から足を守ってくれる靴下は、私たちの日常に当たり前に溶け込んだアイテムです。普段何気なく履いていますが、どのように生まれ、進化してきたのでしょうか?
認められなかった靴下編み機
にゃ。靴下の原型は、古代の人々が布や皮、藁などを使って足への衝撃を和らげてきたことにあります。そして靴下自体も、そのシンプルな構造から、はるか昔より存在していたと推測され、紀元前にはつくられていたとされています。エジプトでは4~5世紀のものとされる編み物の靴下が発見されています。寒さや衝撃から足を守るといった機能以外にも、不浄な地に直接足をつけないようにという宗教的な意味合いもあったといわれています。………本文の続きを読む