ポケット倶楽部
最新号 2025.07.25発行
特集
どうする? いずれ空き家になる我が家
今知っておきたい 不動産相続の現状と対策
年々深刻さを増す日本の空き家問題。ウチは子どもが相続するから関係ないと思っているオーナーも、しっかり家族で話し合う機会を持っておられるのでしょうか? 大切な我が家を将来空き家にしないために、今しっかりと不動産相続の現状と対策について知っておきましょう。

POINT 自分の死後、不動産をどうするか 不動産の「終活」を行う
- 不動産の現状や相続について家族で情報を共有、合意を得る
- あらゆる利活用の可能性を考え、不動産が将来家族の負担にならないよう対策を取る
現状
全国で900万戸、7軒に1軒が空き家!
20年後は4軒に1軒が空き家になる?
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は2003年からの20年間で約659万戸から約900万戸に増加し、2023年の時点で住宅全体の13.8%を占めています。特に2003年~2013年は増加ペースが速く、その後はやや緩やかになっていますが、空き家率は依然として高い数値になっています。これはほぼ7軒に1軒が空き家であることを意味しており、地方の過疎地域ではその割合が20%を超える自治体も珍しくありません。
一方、2024年度の新築住宅着工数は81.6万戸(国交省「新築着工統計調査報告」より)となっており、人口減少で住宅需要は縮小しているにもかかわらず、住宅は供給され続けています。このまま空き家率等が増加していくと、20年後には総住宅数の25%、つまり4軒に1軒は空き家になってしまうという予測も出てきています(令和6年6月13日付野村総合研究所ニュースリリースより)。

One Point Interview
日本の住宅寿命はイギリスの半分以下の30年
経年劣化と空室の対策を
日本の住宅寿命は、アメリカの55年、イギリスの77年と比べて著しく短い30年といわれています。所有する賃貸住宅をより長持ちさせ、資産価値を維持し続けるためにどのような方策を取ったらいいのでしょうか。住宅性能検査の専門家・赤澤泰三氏に、賃貸住宅の経年劣化対策と空室対策について伺いました。
NPO法人 日本住宅性能検査協会
常任理事 赤澤 泰三 氏

物理的・機能的・社会的3つの劣化
―― アパートなど賃貸物件が古くなることでの問題として、具体的にはどのようなことを想定すべきですか。
赤澤 賃貸物件が古くなると、大きく3つの経年劣化というデメリットが生じます。
まず1つ目は「物理的劣化」です。外壁のひび割れ、塗装の劣化、外壁タイルの剥落、手すりのサビ、雨漏りなどが発生します。例えば、外壁のヒビを放置すると雨水が入り込み、最終的には建物の躯体に被害を及ぼします。特に0.3mm以上のヒビは危険です。サイディングの継ぎ目のコーキングが劣化して落ちると、雨水が染み込む原因になります。
2つ目は「機能的劣化」です。建物や設備の機能・性能が技術的に古くなったり、使い勝手が悪くなったりで居住性が低下します。キッチン、バス、トイレ、洗面などの住宅設備は約15年で部分的に機能が低下しますし、エアコンも10年ほどでコンプレッサーが傷み、冷房能力が弱くなります。水回りの配管も劣化します。特に1995年以前に建てられた戸建て住宅には、サビが出やすい亜鉛メッキの鋼管が多く残っています。
3つ目は「社会的劣化」です。これは個人住宅より賃貸住宅において特に顕著です。インターネット環境、セキュリティ、バリアフリー、センサーなどの設備が整っていないと、入居率が悪くなります。全国賃貸住宅新聞社の調査では、1人暮らし・ファミリー層ともに必要な設備の第1位が「インターネット無料」でした。
このような経年劣化を放置したままでは、競争力が低下し、家賃の下落や入居率の低下が進んでしまいます。
街と賃貸住宅
お茶の香りに包まれた、過去と未来が交わるまち
静岡市(静岡県)
江戸時代には「駿府」と呼ばれ、徳川家康が長く過ごした地として知られる静岡市。現在は静岡県の県庁所在地であり、南に駿河湾、北に南アルプスを望む自然豊かな都市です。市内には家康ゆかりの駿府城公園や静岡浅間神社があり、歴史と現代の暮らしが共存する地域でもあります。お茶や桜えび、わさびなど特産品も多く、全国的に名を知られる農水産物の産地です。

どんな街?
静岡市の中核は、戦国時代に駿府城が築かれ、今川氏の城下町として整備されていました。1560年、桶狭間の戦いで今川義元が討死したことで一時は衰退した駿府でしたが、この地で人質として幼少期を過ごした徳川家康が本拠地に定め、晩年には家康による“大御所政権”が江戸幕府の補助的機関として大きな影響力を持ち、幕府を支える副都として栄えました。
明治時代になると、版籍奉還にあたり「静岡」と命名され、鉄道の開通や近代的な都市整備によって東海地方の中核都市として発展を遂げます。このころには、名産のお茶の輸出拠点が横浜港から清水港に移り、加速度的に拡大していきました。
そして2003年に清水市と合併し、新しい静岡市が誕生、現在の姿となりました。また1990年からアニメ放送が始まった『ちびまる子ちゃん』の舞台としても全国的に親しまれています。
戸建賃貸住宅経営の研究
戸建賃貸への関心の高まり
近年、関心が高まっている戸建賃貸住宅経営について、今号から連載で人気の理由や経営のメリットなどを考えてみます。まずは、戸建賃貸への関心が高まっている理由をまとめましょう。
空き家はあるが良質な賃貸用がない
日本の集合住宅は現在すでに供給過剰です。立地条件が悪かったり、家賃設定を誤ったりすると、新築時ですら満室にできなくなります。
一方、戸建賃貸はニーズに対して供給量が少ない状況にあります。賃貸であっても一戸建てを望む人は多いのですが、空き家はあっても、良質な賃貸用物件は………本文の続きを読む

アパート・マンションオーナーのための防災対策
賃貸住宅と地震対策
地震大国である日本において、オーナーは賃貸物件と自宅の両方を守る責任があります。建物は「建築基準法」や「建築基準法施行令」などによって耐震基準が定められていますが、オーナーは自身の所有物件がその基準を満たしているかを把握し、改善が必要な場合は適切な措置を取らなければなりません。
所有物件 耐震診断は所有者の責任範囲
建物の安全性を高める耐震・防災設備
賃貸集合住宅の耐震対策において、まず重要なのは建物の構造的安全性を確保することです。特に1981年以前に建築された旧耐震基準の建物は耐震診断を行い、必要に応じて壁や柱、基礎の補強工事を実施しましょう。また、落下や転倒の恐れがある外壁材やバルコニーの点検、ガスや給排水管などのライフラインも、地震時の被害を最小限に抑えるために、柔軟継手や自動遮断機能のある設備の導入が望まれます。
賃貸オーナーは、入居者が賃貸物件を使用するために必要な修繕をする義務を………本文の続きを読む
※「地震!! に備えて避難所の確認を」の画像をクリックすると、ポスターをダウンロードできます。ぜひご活用ください。
賃貸経営と法律
原状回復と敷金返還①
民法で明文化されたオーナーと入居者の義務
民法に定められた義務
国民生活センターに寄せられる賃貸住宅に関する相談内容を見ると「原状回復と敷金返還」が6割を占めています。原状回復は、賃貸物件の退去時に、入居者に課せられる義務です。トラブルは、入居者に義務を果たしてもらい物件価値を下げたくないオーナーとできるだけ負担を減らしたい退去者との間で生じます。
2020年4月に施行された改正民法では「賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合、その損傷を原状に復する義務を負う」と、入居者=賃借人の「原状回復義務」が明文化………本文の続きを読む
賃貸経営と税金
アパートを生前贈与する(1)
生前贈与のメリット
親が経営していた賃貸物件を引き継ぐ場合、親が死亡した場合の相続と生前贈与の2 つがあります。では、相続と生前贈与、どちらを選べばいいのかを考えてみましょう。
アパートの相続はトラブルが生じやすい
税金の負担を抑えたいということであれば、生前贈与はせずに相続を選択するのがおすすめです。ただし、相続では遺産分割での遺留分(法定相続人に最低限保障される遺産取得分)が決められています。きょうだいで1棟のアパートを分割して相続するということも生じ、誰か1人が相続する場合は他の相続人は分割に見合う分を………本文の続きを読む
データで探る賃貸住宅トレンド
「室内干し」解決で住み心地アップ
共働き世帯の急増で洗濯スタイルが大きく変化し、「室内干し」が常態化しています。集合住宅では干し場所の確保が深刻な課題となる中、賃貸経営者にとってはその解決策の提供が入居者獲得の差別化戦略になるかもしれません。
49.5%が「常時」室内干し、共働き世帯の洗濯スタイルに変化
ベルメゾンの調査(注1)によると、共働き世帯の72.1%が室内干しを実施し、そのうち49.5%が「常時」室内干し、47.3%が「一時的」に室内干しをしているという結果になりました。従来の「晴れた日は外干し、雨の日だけ室内干し」というスタイルが根本的に変化し、日常的に室内干しをしている家庭が約半数を………本文の続きを読む
新米大家さんとベテラン大家さん
「みんなで使う」から「一人で使う」に
家電(いえでん)の今・昔
個人宅の固定電話がなくなる
- 新米
- 知り合いが所有する単身向けのアパートでは、部屋ごとの固定電話、つまり家電(いえでん)がなくなってずいぶん経つようです。うちのファミリー向けも、最近入った若夫婦は家電がありません。
- 大屋
- 家電を持つ世帯は50%を切ったようだからね。うちも外そうかと言っている。家族や友人とは携帯で連絡を取っているし、固定にかかってくるのはセールスばかり。
- 新米
- 老人は詐欺電話のリスクがありますしね。
- 大屋
- 誰が老人だ。
- 新米
- 家電が減るのはいつ頃からですか。
- 大屋
- 携帯が普及するのは………本文の続きを読む
お江戸の賃貸住宅事情
江戸の鍵
弥生時代や古墳時代の遺跡からは「鍵」は見つかっていませんが、奈良・正倉院の蔵に和錠がかけられているので、奈良時代くらいからは寺院や貴族の館には、鍵が使われるようになったようです。それでも、鍵が広く使われるようになるのは、江戸時代も後期になってからのことです。
鍵の技術者たち
江戸時代に入り、箱型のケースの中に鍵の機能を内蔵した錠前、和式の「箱鍵」が登場します。富を蓄えた武家や商家では、金品を守るために蔵を建て、そこに鍵をかけるようになります。初期の箱鍵は鉄、または木のシンプルな作りで、構造もまだ粗雑でした。すると泥棒の中には、その鍵を開けて侵入する「錠前破り」が現れ、………本文の続きを読む
ポケにゃんの暮らしのエボリューション!
歯ブラシの進化
私たちの毎日の習慣である「歯を磨く」という行為。いまや当たり前のように使っている歯ブラシにも、長い歴史とさまざまな変遷があったようです。
お釈迦さまもすすめたオーラルケア
にゃ。歯ブラシのルーツは古代バビロニアやエジプトで、木の枝の先端を噛むことでほぐして歯を磨く「歯木」が使われていたとされています。インドでは、なんと仏教の祖であるブッダ、つまりお釈迦さまも歯木を使ったオーラルケアの重要さを弟子に説いていました。歯磨き習慣の広まりは、こうした宗教の普及が要因になっているという説も………本文の続きを読む