ポケット倶楽部
最新号 2024.4.25発行

特集
賃貸住宅の防災対策

オーナーが今すぐ備えたいこと

 2024年元日、能登半島地震の発生は災害への備えが喫緊の課題であることを私たちに突きつけました。自然災害が多発する昨今、賃貸住宅のオーナーは具体的にどのような対策を取ったらいいのでしょうか。建物の耐震チェックなどに関するハード面、入居者に対しての意識啓発や情報伝達ほかのソフト面、両面から考えてみましょう。

賃貸住宅の防災対策

POINT 建物の耐震チェック(ハード面)と
入居者対策(ソフト面)、両面から今すぐアプローチ

  • ハザードマップの確認と建物の耐震チェック、火災など二次災害に備える
  • 入居者の防災意識を高め、コミュニティを強化。入居促進策につなげる

入居者は安全な住宅を求めている

 年明け早々から大きな災害が発生してしまった2024年。能登半島地震では激しい揺れで木造住宅が相次いで倒壊。その多くは1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物とみられ、新基準の建物の被害は比較的小さかったといわれています。ショッキングな報道を見るにつけ、災害への備えの大切さを改めて認識させられました。
 当然のことながら、賃貸住宅の入居者も安全な住宅を求めています。SUUMO リサーチセンター「2022年度賃貸住宅契約者動向調査(首都圏)」によると、入居者が魅力を感じるコンセプト住宅の1位は「防災賃貸住宅」。前年の調査でも「防災賃貸住宅」が1位に入っており、入居者の意識や関心が防災に向いているということを物語っています。
 では、地域社会の一員として、また同時に人々に住戸を提供している賃貸住宅のオーナーとして、どのように災害に備えていけばいいのか、具体的に見ていきましょう。

One Point Interview
リノベのトレンドは性能向上
持ち家感覚の部屋探しに対応を

 最近よく耳にする「リノベーション」というワード。「リフォーム」と一体どう違うのか。そして、賃貸物件におけるリフォーム・リノベーションのポイントについて、リフォーム業界のコンサルタント・梶田氏に伺いました。

カジタプランニングオフィス
代表
梶田 恵臣

梶田恵臣氏

入居者ニーズに合わせて先取りし
持ち家感覚での部屋探しに応える

―― まず、リフォームとリノベーションとの違いから伺います。

梶田 大きく分ければ、古くなった建築物を新しくすることをリフォーム。既存の建物に手を加えて新しくし、さらに新しい価値を加えていくことをリノベーションとしています。リフォームも、部分的な修繕もあれば大規模な改修もありますが、リノベーションは規模が大きい改修ということだけでなく、既存の建物や設備をゼロから考え直し、新しい機能や価値のある建物にするということ。壊れて古くなったから新しくする、という考えではなく、住む人の価値観やライフスタイルに合わせて作り変えていくということですね。そのような考えの違いをより明確にするために、リフォームとリノベーションを使い分けるようになってきています。
 私がお手伝いしているリフォーム会社やガス会社のリフォーム部門では、以前からの単なる修繕や改修ではなく、住む方の思いに寄り添ったリフォーム、変化したライフスタイルに対応したリフォームを行ってきました。それらの会社は、単なる修繕・改修ではないということをお客様にご理解いただくために、「リノベ」という言い方をするようになっています。

街と賃貸住宅
不世出の英傑が重んじた、天下統一足がかりの地 岐阜市(岐阜県)

 日本の中部地方に位置し、およそ8割が山地である岐阜県。その県庁所在地・岐阜市は、県内人口最多の市であり、中核市です。名古屋都心部へのアクセスがよく、衛星都市としての役割を果たしているとともに、金華山や清流長良川など自然にも恵まれています。いわずと知れた戦国の英雄・織田信長ゆかりの地でもあります。

夕暮れに染まる岐阜市街地
▲ 夕暮れに染まる岐阜市街地。

どんな街?

 北部に山林、南部に市街地が広がり、市内を横切るように清流長良川が流れる岐阜市は、自然と街が融合し、歴史と文化が溶け込んだ街です。名古屋駅まで約20分というアクセスのよさに加え、名古屋市と比べて家賃や物価が安いため、住みやすく人気の高い地域でもあります。
 1567年、斎藤龍興から稲葉山城(岐阜城)を奪った織田信長が、この地を“岐阜”と命名。「美濃を制する者は天下を制す」といわれ、拡大していく信長の勢力とともに城下町として大きく成長していきました。
 そして明治維新期の廃藩置県によって美濃一円の諸県が岐阜県として統一され、1889年の市政施行によって岐阜市が誕生。同じころ東海道線も開通し、政治、経済、学術、文化等の主要都市として発展します。
 岐阜市の伝統漁法である長良川鵜飼は、信長や徳川家康も見物したとされています。また、かの喜劇王チャールズ・チャップリンも、来日した際に鵜飼観賞を楽しみ、称賛したといわれています。

不動産のプロが教える賃貸住宅オーナー講座
正しい空室率を把握しておきましょう

 アパート・マンションのオーナーさんは、所有物件の空室が埋まったら、当然「ラッキー」と思いますよね。しかし、空室が埋まるだけで、その物件の収益構造は本当によくなっているのでしょうか? そこをしっかりと検証して計画を立てることが、安定した賃貸住宅経営につながっていきます。

年間の空室率は“ムービー”で見よう

 皆さんは空室率の計算、どうしていますか? たとえば16戸あるマンションの空室が4戸だったとします。4分の1ですから、空室率は25%。でも、それは本当に正しい数字でしょうか?
 確かに、いまこの時点では4戸、25%が空いています。でも、「この時点」だけで白黒の判断をしてよいわけではありませんよね。年間を通して、どういう収益構造になっていたのかを見る必要があります。
 「この時点」だけ見ることを、我々は“スナップショット”と呼んでいます。しかし、空室率は“スナップショット”=一瞬を切り取った部分だけではなく、“ムービー”=全体の流れから見ることも重要です。そうすることで、この物件の本当の空室率がわかってきます。
 例に出した16戸の物件をもう少し細かく見てみましょう。2月は全部埋まっているため空室率は0%、5月に1戸空室となり空室率は6%、………本文の続きを読む

アパート・マンションオーナーのための防災対策
防災用品

所有物件 もしもに備えオーナーが入居者向けに準備しておきたいこと

入居者の防災意識を高めることから

災害対策の心得

※ 画像をクリックすると、
「災害対策の心得」ポスターを
ダウンロードできます。

 耐震など建物の防災対策は建物オーナーの責任ですが、防災用品や災害時の万一の避難用品の準備は入居者自身がやるものという考えは当然です。しかし、入居者はさまざまでまったく防災意識がない人も少なくありません。オーナーが入居者の避難用品を準備してあげるということは現実的ではありませんが、日頃から入居者の防災意識を高める取り組みは必要です。
 入居者の防災意識を高めるためには、共用部の掲示板での案内、投函チラシ等で災害時の避難用品リストや避難場所を周知することなどが効果的です。大地震等の安否確認用に玄関に「無事です」と書かれたマグネットシートを貼ることを推奨するマンションもありますが、そのようなマグネットシートを配布することも方法の一つです。………本文の続きを読む

賃貸経営と法律
「定期借家契約」で貸主・借主ともにメリットを享受

期限付きが大きな特徴

定期借家契約は「期限付きの契約」

 オーナーならご存じの方も多いと思いますが、賃貸住宅の契約方法には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2つの方法があります。その大きな違いは「契約の期限」にあります。
 一般的な「普通借家契約」の場合は1年以上の賃貸借期間が定められ、通常は2年とされます。2年とされるのは、1年未満とした場合、期間の定めのない契約となってしまうからです。期間の定めのない契約になってしまうと契約更新の区切りをつけることが難しくなってきます。………本文の続きを読む

賃貸経営と税金
不動産を売ったときにかかる税金

不動産の譲渡所得と税率

不動産売却にかかる税金

 不動産を売ったときには、手続きにかかる税金として「印紙税」「登録免許税」「消費税」があります。そして、利益が出たときには「譲渡所得」となり、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が税金としてかかってきます。
 「印紙税」は、不動産の売買契約書に印紙を貼付して納めるものです。「登録免許税」は、登記をする者が納める税金です。これは法律上、買主と売主が連帯して納める義務を負うことになっていますが、登記により対抗力を得るのは買主なので、………本文の続きを読む

データで探る賃貸住宅トレンド
UNDER30(30歳未満)の“住活”最新事情

 若者の住まい探しを、就活、婚活のように今風にいうと、“住活(すみかつ)”。ニーズが多様化しているという若い世代は、住活にどのようなこだわりがあるのでしょうか? 不動産情報サービス会社のアンケート調査から、最新結果をご紹介します。

引用調査/アットホーム「ユーザー動向調査 UNDER30 2023 賃貸編」
調査の概要/全国で一人暮らし中の18歳~29歳の学生・社会人、計2,013人を対象に、現在住んでいる部屋の設備・条件や探し方、重視したことなどを調査

最後まで譲れない条件は、ダントツで「バス・トイレ別」

現在の住まいの基本情報

 学生・社会人ともに、間取りは「1K」がトップ、築年数は「10年以内」が約半数、最寄り駅への徒歩所要時間は「10分以内」が半数以上でした。平均家賃は社会人が学生に比べ6~7,000円程度高くなっています。………本文の続きを読む

新米大家さんとベテラン大家さん
風呂付き賃貸が
憧れだった時代の文化遺産

銭湯を前提とした風呂なしアパート

新米
私の町で唯一の銭湯が廃業しました。これでウチから行ける銭湯は、クルマで10分のスーパー銭湯だけです。ふつうの町の銭湯というのは、もうないですね。
大屋
昔は町中に住んでいれば、歩ける範囲に1軒や2軒の銭湯があったものだが。私も学生時代は銭湯に通ったもんだ。
新米
『神田川』の世界ですね。横丁の風呂屋♪
大屋
私はいつも一人で行ったけどね。憧れたな、彼女と銭湯に行くこと。『同棲時代』という映画もあって、私も…。………本文の続きを読む

お江戸の賃貸住宅事情
江戸の長屋と下水

 江戸の裏長屋の設備と暮らしを見てみましょう。共同住宅である裏長屋は、井戸やトイレ、ゴミ捨て場は共同で、ゴミや排泄物は専門業者が引き取っていました。掃除は共同で行い、衛生面に配慮され清潔が保たれていました。

江戸の下水はキレイ

 汲み取り式の長屋のトイレは、臭いや衛生面から長屋の外にありました。以前も紹介したように排泄物は肥料として売れたので、大家(=管理人)さんの貴重な収入源。ゴミも売れました。江戸の長屋の井戸は、正確には水道(上水)の取水口。自分の家で水を使ったら、各戸の下水溝に流します。下水溝の水はそのまま堀や川に流れますが、当時の下水はきれいでした。路地から出る下水はほとんど雨水。排泄物もゴミもお金になるのですから、………本文の続きを読む

ポケにゃんの暮らしのエボリューション!
ハンカチの進化

 エチケットとして、手を洗ったあとや汗をふくときにさっと取り出したいハンカチ。おしゃれのアクセントや、ちょっとしたプレゼントにもぴったりです。どんな進化を遂げてきたのでしょうか。

悲劇を招いたイチゴ柄のハンカチ

 にゃ。「ハンカチ」は和製英語で、英語では“handkerchief”(ハンカチーフ)といいます。日本ではもともと「手巾」と呼ばれており、芥川龍之介が1916年に発表した短編小説は、『手巾』と書いて「ハンケチ」と読みます。
 人がいつから布をハンカチとして使用していたのかはわかっていませんが、紀元前3000年ごろのエジプトで、すでに飾りのついた麻製の布が使われていたといわれています。また紀元前1000年ごろの中国の周時代には、フリンジで縁取られた布切れを………本文の続きを読む